6月は梅雨の季節です。関東甲信地方の梅雨入りの平年は6月8日。梅雨入りの最も遅い東北地方北部でも6月12日です。
梅雨前線は、従来は単純に、太平洋気団とオホーツク海気団の境目に発生すると説明されていましたが、研究が進んだ結果、日本の約4000キロも東にあるチベット高原に吹き付けるモンスーン(季節風)の影響を強く受けることがわかってきました。モンスーンが高原に吹き付けると、高原上空に東西に大きく広がるチベット高気圧が発生します。その高気圧によりジェット気流は南北に分離して東に向かい、再び合流するのがオホーツク海のあたりで、そこで下降流が発生してオホーツク高気圧を発生させるというものです。
梅雨時の地上の天気図を見ると、高気圧のマークそのものは現れていないこともありますが、基本的には地上気圧配置としては、日本の南には太平洋高気圧があり、オホーツク海付近も気圧の高い状態であることが多いと言えます。
高気圧なのに雨?
通常天気が悪くなる場合、温帯低気圧や熱帯低気圧の一種である台風が主役で、高気圧が悪天の原因とされることはあまりありません。学校でも、「低気圧は雨、高気圧は晴れ」と習ったのではないでしょうか。梅雨前線の上に小さな低気圧が発生し豪雨をもたらすこともありますが、梅雨の気圧配置の主役は高気圧と言えると思います。
太平洋高気圧は南から暖かく湿った空気を西日本に送り込みます。太平洋高気圧の中心付近では下降気流で、周りに空気を吹き出す「発散」の場となっていて晴れていますが、高気圧の縁辺では外側に向かって湿った空気を運ぶ働きをし、梅雨前線付近では空気が「収束」して雨を降らせます。このため西日本の梅雨はザーザーと強い雨の降る「陽性の梅雨」と呼ばれることがあります。
一方のオホーツク海高気圧は冷たく湿った空気を運びます。北海道東部の海上ではその湿った空気が冷たい海の上を通ることにより冷やされ、水蒸気が凝結し霧や低い層雲を発生します。東北地方や関東地方では薄い冷たい空気の上に暖かい空気が乗り上げてやはり低い層雲が発生します。しとしとと雨が降り「陰性の梅雨」と呼ばれることがあります。
梅雨がないはずなのに…
北海道では、梅雨のようにザーザーと雨は降りませんが曇天の日が続き、観光客は「梅雨のない北海道のはずなのに」と嘆くことになります。梅雨はなくてもオホーツク海高気圧の勢力範囲内で海から風は吹くと天気は悪いというのがこの期間の北海道の常識です。
低い霧や層雲が山でさえぎられる札幌などの北海道西部の内陸では晴れますが、気温が低いために「晴冷型」などと呼ばれることもあります。この冷え込みにつけられた名前が「リラ冷え」。北海道出身の作家、渡辺淳一氏の小説「リラ冷えの街」がきっかけで一躍全国区の有名な言葉になりました。6月はリラ(ライラック)が咲き、オホーツク高気圧が現れる季節です。