9月1日は「防災の日」。1923年の関東大震災があった日が9月1日だったためとする文献も多いですが、立春から数えて210日目にあたり、昔から、この日に台風による災害が発生することが多いと言われていることも起因しています。実際に、防災の日が制定されたのは1960年ですが、その前年の1959年9月には、日本の近代史上最悪の被害を出した伊勢湾台風や当時の気象官署の最低気圧を記録した宮古島台風が日本を襲っています。
また、気象警報の伝達や災害対策本部の設置の取り決めなど、災害対策の基本な事項については、現在は災害対策基本法により定められていますが、この法律の制定は1961年で、やはり伊勢湾台風による災害がきっかけとなって制定されました。それまでは、色々な法律がばらばらに災害対策を決めていましたが、それが伊勢湾台風の時には役に立たなかったのです。
昨年も北海道で強風により大きな災害をもたらした台風18号や(北大のポプラ並木が根こそぎ倒れたのが有名です)、三重県で土砂崩れにより多くの人命を奪った台風21号は9月に来襲しており、9月は気象災害、特に台風による災害が数多く発生していると言えます。これは、台風そのものの発生数は、平年で8月が5.5個、9月が5.1個となっていますが、太平洋高気圧の勢力が弱まってくる9月に台風が日本に上陸することが多いことが原因の一つです。また、台風の周りを回る暖かく湿った空気が日本付近にやって来て、その際に南下していた秋雨前線上で大量の雨を降らすことがあるのも、9月に気象災害が発生する原因です。
気象情報に注意
伊勢湾台風のころは、高潮や堤防の決壊により、1000名を超える人命が失われるような大災害が発生しましたが、近年は堤防や防潮堤などのインフラが整備されるとともに、気象情報が的確に発表されるようになったために、そのような大きな災害は発生しなくなってきています。
しかしながら、インフラはある基準の雨量や波高、風速を想定して設計しているため、気象現象の規模がその想定を超えると破壊される可能性があります。昨年の台風23号の際には高波によりコンクリート製の巨大な堤防が破壊されましたし、新潟・福島豪雨では堤防が決壊し、尊い命が失われました。インフラが破壊されると、それに守られている地域は全て被災することになります。インフラだけに頼らず、気象情報を活用することが大事です。
また、近年の災害では、被害者にお年寄りの占める割合が高いことが問題となっています。この原因の一つは、農業従事者にお年寄りが多いために、大雨が降ると御自分の畑や田を見に行って、側溝などに落ちるなどの被害が発生することにあります。大雨や暴風の際には、安全な場所で待機することが大事です。もう一つは、お年寄りのために、避難が遅れてしまうことに原因があります。
このため、内閣府は市町村に対し、避難勧告を出す前に「避難準備情報」を発表し、避難に時間のかかるお年寄りや身体に障害のある方が早めに避難できるようガイドラインを示しました。今後、これに沿って気象情報などを活用して避難準備情報を発表する基準が定められますが、災害に際しては、このような避難のための情報を聞いたら、直ちに避難行動を開始することが大事です。