2005年の12月はここ数年続いた暖冬傾向とは打って変わって、全国の月平均気温としては1985年以来20年ぶりの低温となりました。特に平年と比べると、東日本では2.7℃、西日本では2.8℃低く、1946年に地域の平均気温の統計を取り始めて以来、最も低い年となりました。
このため各地で大雪となり、青森県酸ヶ湯で296cm、群馬県藤原で280cm、新潟県津南で324cmなど、全国の気象庁の積雪観測点のうち、108地点で12月の積雪としては最深を記録しました。
基本的に、大陸から強い寒気がやってくると、日本海側では大雪になります。図1は日本海側の高層気象観測点である、札幌、秋田、輪島、松江の上空500hPa面(高度約5000~5500m)の12月の気温の推移を表したものです。この高さでは、-36℃が大雪の目安といわれていますが、期間を通して札幌、秋田の気温は低く、時おり-40℃以下の超一級の寒気がやってきていることがわかります。
さらには、17日から18日にかけては輪島、22日には松江でも-40℃以下を記録し、札幌や秋田よりも低くなっています。このように寒気の中心が北日本ではなく西日本に南下したのが今シーズンの特徴で、22日にはこの寒気のために阿蘇山で38cm、鹿児島でも11cmの記録的な積雪を観測しました。
大雪は暖かい海のせい?
ここまで大雪となったのは、もちろん、例年にない寒気がやってきたことが一番の原因ですが、これが12月であったことに大きな意味があります。同程度の寒気でも、2月や3月に来るのと12月では大雪の降り方が違います。大陸から吹き出した乾いた寒気は、日本海で水蒸気と熱を補給し、これにより大気の状態が不安定になって雪雲が発達します。12月中旬の日本海中部の海面水温は、平年よりやや高く、10~18℃もありましたが、3月になると平年では5~12℃くらいまで下がってきます。気温と海面水温の差が大きいほど、熱と水蒸気は多く補給されるため、暖かい海が大雪の原因という、ちょっと考えると不思議な現象が起きているわけです。
図2は、日本海側でも雪の多い、北海道赤井川、青森県酸ヶ湯、山形県肘折、新潟県津南、岐阜県白川、広島県八幡、鳥取県大山の日最深積雪の前日との差を示したものです。積雪の差ですから、ごく大雑把に言うと、降った雪の量(降雪量)ということになります。図1と比較してみると、札幌に強い寒気の入った10日~12日にかけては、赤井川、酸ヶ湯、津南で大雪となっています。また、松江に強い寒気が入った21日~22日は、白川、八幡、大山で大雪となっています。
しかし、同程度の寒気が入っても、それほど大雪になっていない日もあります。これは、雪雲は気象衛星から見るとわかるように筋状の雲で、その雲が通らない場所では雪が降らないことや、地形により雪雲がブロックされたり、逆に収束して強化されたりするためです。
例えば、19日には名古屋で23センチの積雪を観測する大雪となりましたが、この日は強い寒気が東へ抜けていった日で、前日のほうがかえって上空の寒気は強いくらいです。しかし、この日の上空では、ちょうど若狭湾に入った雪雲が関が原を通り名古屋に達する流れになっていました。このように、大雪の予想を行うためには寒気だけでなく、上空の風向の変化を読むことが必要です。
1月6日現在、内閣府の調べでは、この大雪により53名の方が亡くなり、293名の方が重症の被害を受けています。亡くなった方は60代以上の方がほとんどで、その原因は除雪作業中の事故が最も多くなっています。除雪をしないと家が潰れてしまうような古い家に住んでいるお年寄りが、無理をして事故に遭うという構図が見えます。これから、少子高齢化がさらに進む日本ですから、町内会などの近隣の人達の助け合いだけでなく、公的な対策が必要でしょう。