Ubuntu Weekly Recipe

第69回 GW特別企画・電源プラグ型コンピューターSheevaPlugの使い方(1):基礎編

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Ubuntu Weekly Recipeゴールデンウィーク特別編のラストとして,Topicsでの予告の通り,Ubuntuを搭載する,$99の『電源プラグ型』コンピューターMarvell SheevaPlugの使い方をお届けします。

なお,最後に「次回へ続く」などと書いてあります。

……えー,その……。本来この原稿はゴールデンウィークのラストにお送りする予定だったはずなのですが,あまりにも分量が増えてしまったため,ゴールデンウィーク後にも続きます……。

はじめに

通常,Ubuntu Weekly Recipeでお届けするレシピは,「デスクトップユーザーの方が,容易に試してみることができること」というテーマのもとに,ある程度「わかりやすい」ものを中心にしています。

ですが,今回お届けする内容は,初心者の方がいきなり手を出した場合,かなりの確率で持て余すと思われます。もし興味を持ってSheevaPlugを注文される場合,「簡単なものではない」ということを念頭に,充分な検討を行ってください。今回(と次回)でお届けする内容で,基本的な利用が可能な状態になりますが,そこまで辿り着くために,第47回で紹介したネットワークインストール第40回で紹介したNFSサーバの設定などの概念を理解することが必須です。tftpブートやNFSの扱い方をはじめ,「自分でどうするか決める」要素が非常に強く,とりあえずインストール,といった扱い方はできないものと考えてください。

一方,「変わったものに触ってみたい」「24時間稼働できる,消費電力の少ないマシンが欲しい」「ベータ版大好き」「PCに飽きた」GUIなんてリソースの無駄使いでしょといった方には,SheevaPlugは全力でお勧めできるマシンです。

SheevaPlugの位置づけ

SheevaPlug注1は,Marvell社が推進する,「電源プラグに,ACアダプタのように差し込んで使う」という想定で開発された新しいフォームファクタPlugComputingのひとつしてリリースされたハードウェアです。その想定の通り,大きめのACアダプタ程度(おおむね,「小振りの豆腐」程度)のサイズで,ACコンセントに差し込んだままでもそれほど邪魔にならなりません注2)。また,特徴の一つは価格が安いことで,1台につき$99しかしません。24時間動作可能な組み込み機器としては破格の値段と言えます。

“PlugComputingの核にあたる考え方は,「常時電源をOnにしたままで」「邪魔にならない」「家電的ホームサーバー」です。現在のSheevaPlugは電源が内蔵されているため,前述の通りの大きめのACアダプタサイズなので,邪魔にならないとまでは言えません。サイズを把握するために,以下の図1を見てください。図1は,SheevaPlugとCD-Rを並べて撮影したものです。長辺がCD-Rの直径ほど,短辺はその1/2程度の直方体です。このユニットの厚みの半分は,AC-DC電源回路(AC100V=>DC5V)のようです注3)。

図1 SheevaPlugのサイズ

図1 SheevaPlugのサイズ

注1
厳密には,ここで「SheevaPlug」と呼んでいるものは,「SheevaPlug Development Kit」です。「SheevaPlug」という製品シリーズの中の,開発者向けキットが「SheevaPlug Development Kit」で,通常の製品にあたる「SheevaPlug(無印)」とでもいうべきものはまだ量産されていません。
注2
とはいえ,そのままではACコンセントを埋めてしまいますし,米国/日本/台湾で利用されている口のACコンセントばかりではありませんから,コネクタを外し,ケーブルを接続する形でも利用できるようになっています。電源コネクタ部分を外すと,いわゆる「2pinメガネプラグ」が準備されており,ここに任意の電源ケーブルを差し込むことで,各国の電源で利用できるようになっています。対応電圧は100V~240Vです。
注3
つまり,コア基板だけ取り出して5Vを適切に入力してやれば,半分の薄さになります。

SheevaPlugの正体は,MarvellのSoCKirkwood(88F6281)に512MBのDDR2メモリと,512MBのNANDフラッシュを追加し,I/Oを追加してコンピューターとして機能するように仕上げたものです。外部接続用のインターフェースとして,Gigabit Ethernetを1系統,USB2.0を1系統,そしてSDIOスロットを1系統と,USB-JTAG(JTAG-UART)を持っています注4)。いわゆるEVB(Evaluation Board)にあたりますが,Kirkwoodの動作クロックが1.2GHzであることに加え,I/O周りもこの種の組み込み機器としては非常に贅沢なスペックを備えています注5)。なお,Kirkwoodを含む88F6000番台SoCのシリーズ名が「Shiva」ですので,なんとなくこのあたりから命名されたように思われます注6)。

“SheevaPlug Development Kit「アプライアンスを作って販売するための開発者キット」という位置づけの製品です。このため本体側面にUSB miniB形状のJTAG-UARTが備えられており,ここから各種初期設定やuBoot(後述)の設定などを行うことができます。SheevaPlugを利用したアプライアンスとして,すでにPogoPlugという製品がリリースされています。これは「自宅でこれにUSB HDDをつないで置くと,外出先その他から自由に利用できる」というものです。

そして,このSheevaPlugの初期OSとして用意されているOSイメージは,Ubuntu 9.04をベースにしたLinuxです。最小構成にSamba・OpenSSHなどのサーバーを追加したもので,100MBほどしかありませんが,高性能なCPUと512MBのメインメモリにより,「SSHでログインして利用するサーバー」としては充分な性能を持っています注7)。

注4
88F6281はPCI-e x1にSATA,さらにオーディオ入出力に加えてGigabit EthernetのMACを2系統持っているようなのですが,有効になっている(=PHYに接続されている)GbEは1系統だけです。そもそもPHYにあたる88E1116Rが1個しか搭載されていませんし,基板上には搭載できるだけのパターンも用意されていません。残りのI/O系は,なんとなくピンだけは用意されているように見えなくもありませんが,(表面に出ている配線を含む)公開情報を追いかけた範囲では確定に至っていません。
注5
中身が気になる方は,SheevaPlug Software & Design Information - Revision 1.2からDocumentation Packageをダウンロードし,「SheevaPlug DevKit Reference Design-Rev1.2.pdf」を眺めてみてください。知的好奇心を満たす程度には詳細が書いてあります。ただし,ソフトウェア技術者にとっては役に立つレベル(PCB上のピン配置一覧)で,実装部品のリストはありません。どうしてもピン配置が気になる方は,実機を入手して表面実装から追いかけてください;)。ただ,待っていればいずれ「表に出ているピン配置」は公開されるかもしれませんし,別のPlugが公開され,そちらにはSATA他が搭載されているかもしれません(というか,KirkwoodはBGA実装なので,筆者はどうやって剥がさずに線を辿るのか悩んでいます。剥がせばパッドから追いかけることも不可能ではなさそうですが,あまりやりたくはありません)。
注6
確定情報はおろか,確証すらありません。
注7
ただし,CPUはARMベースですのでx86プロセッサに比べるとクロックあたりの性能は低い上,メモリのバス幅が非常に狭いので,PCに慣れた人が「1.2GHzのCPUと512MBのメモリ」という表現から想像するほど速くはありません(ただし,組み込み機器としては非常識な高性能です)。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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