Ubuntu Weekly Recipe

第100回Ubuntuを中心とした情報環境の紹介

Ubuntu Japanese Team代表の小林です。2008年1月より開始した当連載「Ubuntu Weekly Recipe」は、今回でちょうど100回となります。読者の皆様、技術評論社で当連載をご担当いただいている高橋様、そして記事の執筆を続けてくれたUbuntu Japanese Teamのメンバーに感謝します。

私自身は2回しか記事を書いていないのですが、他のメンバーに「100回記念なんだから代表が書くのが良いのではないか」と言われ、担当することになりました。いつもは「特定のトピックを取り上げて設定方法などを詳しく解説する」というスタンスの連載ですが、今回はちょうど100回ということで趣向を変えて、私が普段利用している情報環境について紹介したいと思います。以前、特別企画としてUbuntu Japanese TeamのメンバーがUbuntuをどのように使っているかの紹介記事を執筆してくれましたが第67回第68回⁠、今回はUbuntuに限らず、使用頻度が高いものや特徴的だと思われるものについて、私見を交えつつ紹介したいと考えています。

基本的な考え方

Ubuntuを中心に情報環境を整えるにあたり、普段から気をつけているのは以下の3点です。

紙を極力使わない(書かない・参照しない)

私は整理整頓が苦手ですので、紙に書いてしまうと後で見つけるのが大変です。そのため、情報は電子データとして蓄積しておき、複数のPCや携帯電話からアクセスできるのが理想だと思っています。そうすれば、ズボラな私でも「必要な時に見つからない」とか「メモした紙を忘れてしまった」とかいったことが少なくなるでしょう。

とはいえ、私はどうもPCを見ながらの打ち合わせが苦手で、人と会うときは紙にペンで書くことがほとんどです。結局は、紙を見ながらPCに入力することになるので、今後は改善していきたいところです。

情報は一元管理する

同じ情報を複数の場所に置いたり、そのために2回入力したりということは避けたいと考えています。これは、多くの皆さんが考えていることではないかと思います。

良いサービスやソフトウェアにはお金を払う

Ubuntuは基本的にフリーソフトウェアで構成されており、無料で利用できます。しかしながら、有料のソフトウェアやサービスで良いものがあれば、積極的に利用することにしています。とくに優れたWebサービスには、応援する気持ちも込めてお金を出すのは意味のあることだと考えています。

メール

自宅サーバ(Ubuntu 8.04 LTS)にSMTPサーバとIMAPサーバを入れ、自宅および外出先から接続できるようにしています。メールソフトはThunderbirdを使っています。

複数のメールアカウントを併用していますが、個人宛のメールについては自動でコピーをGmailに転送しています。外出先でPCを借りてメールを確認したり、後で検索するのに便利だからです。

なお、自宅サーバは一般家庭用のインターネット接続を利用しているため、メールを直接送信しても受け取ってもらえなかったり、遅延することがあります。そこで、アメリカの業者が提供しているVPS(Virtual Private Server)を借りてUbuntuをセットアップし、そこにもSMTPサーバを入れて送信サーバにしています。なお、このVPSでは自分のホームページや仕事で使うメーリングリストも動いています。

チャット

Piginを使っています。Google TalkとMSNのアカウントを登録してあります。なお、外出時はiPhoneでfringを使っています。

RSSリーダ

Google Readerを使っています。ローカルのアプリケーションもありますが、RSSを登録しておけば複数のPCで参照できますし、iPhoneで見れるのも便利です。

最近は登録数が増えすぎて読みきれていないので、Yahoo Pipesを使って複数のRSSをまとめたりキーワードでフィルタするなどし、それをGoogle Readerに登録するということを近いうちにやりたいと思っています。

Web閲覧

Ubuntu上でFirefoxを利用しています。普通ですね。アドオンを多く入れるのはあまり好きではないのですが、タブを多く開くためTabs Open Relativeは真っ先に入れるようにしています。

辞書

英辞郎、ジーニアス英和・和英、WordNet 2.0 - Dictionary & ThesaurusEBViewで使っています。また、英語のWebページを読む時にFirefoxのアドオンであるFireDictionaryを使うこともあります。

国語辞典はgoo辞書を利用しており、ローカルデータとしては持っていません。

Remember the milk

GTD(Get Thnings Done)を実践するために、第78回で紹介したRemember The Milkを使っています。TasqueRemember The Milk for Gmail Firefox Extensionの両方から利用しています。

また、年25ドルのProアカウントを取得してiPhone用のアプリも利用しています。iPhone OS 3.0から追加されたPush Notification Serviceに対応しており、期限になると待ち受け画面にお知らせを出してくれるのが便利です。

マインドマップ作成

考えをまとめたり、原稿のアウトラインを決めるのにFreeMindを使ってマインドマップを作成することがあります。外出先ではiPhone用のマインドマップ作成ソフトiThoughtsを使っています。iThoughtsはFreeMind形式のファイルを読み書きできるので、Ubuntuで作成したマインドマップをiPhoneにメールで送り、外出先で参照したり修正したりといったことができます。

個人データの電子化

Webで支払いや振込みを行うときに、クレジットカードの番号や、ネット銀行のカードに書かれている認証番号表SBI銀行の解説ページが必要となることがあります。その度に、財布を取ってきてカードを出して確認するのは面倒です。とはいえ、テキストデータとして書き出して保存するのは手間がかかりますし、安全性にも問題があります。そこで私は、これらのカードをスキャナでスキャンし、そのイメージをGnuPGで暗号化し、さらにそれを~/Private(暗号化ファイルシステムがマウントされているディレクトリ)に置いています。暗号化ファイルシステムに置くならばGnuPGでさらに暗号化するのは無駄なようにも思いますが、そうしないとログイン後はパスフレーズ無しでアクセスできてしまうので、操作ミスで他のフォルダにコピーしたりメールで送信してしまう可能性も考えてこのようにしてあります。カード類以外にも、ネット銀行やネット証券のIDなどが記載されている書類は同じように画像化・暗号化してあります。

FAXの画像化

ほとんどの書類はネット経由で送受信していますが、とくにお金関係の書類などはFAXで届くものもあります。届いたFAXはBrotherのMFC-860CDNで受け、⁠PC-FAX」という機能を利用してWindows PCにtiffファイルとして保存しています。

書籍のPDF化

おそらく、多くの方にとって書籍が最大量の紙データでしょう。書籍には「どこでも気軽に読める」という利点はありますが、⁠場所をとる」⁠検索できない」⁠持ち歩く量に限界がある」といった欠点もあります。そこで、一度読んだ本は裁断してPDF化することにしています。

PDF化にはScanSnap S1500を利用しています。Ubuntuには対応していないため、Windows PCに接続してPDF化し、自宅サーバにコピーしてUbuntu PCからも参照しています。これで、⁠あの本どこに置いたかな」と言いつつ探すことが少なくなりました。ScanSnap添付のソフトウェアにOCR機能があり、そこそこの精度でテキスト化したデータをPDFに埋め込んでくれるので、テキスト検索ができるようになったのも大きなメリットです。

ただ、漫画については悩むところです。綺麗に保存することを考えると、もっと性能のいいドキュメントスキャナが安価で手に入るようになってからのほうが良いのでは…という思いもあり、まだPDF化はしていません。

なお、ScanSnapでスキャンするには本を裁断する必要があります。カッターでも不可能ではないと思いますが時間がかかりそうなので、大きめの裁断機を使っています。

モバイル

Ubuntu 8.04のプリインストールで昨年話題になった「Dell Inspiron mini 9」と、315gのATOMマシンとして話題になった「mbook M1」の英語キーボード版にUbuntu 9.10をインストールして使っています。mbook M1は、カーソルの移動に使えるデバイスとしてタッチパッドしか搭載されておらず不便なので、超小型のトラックボールを接続してあります。

自宅サーバに、第98回で紹介したFreeNXを入れてあり、外出先から接続して使うこともあります。前述のPDF化した複数の書籍の中から、目当ての書籍を検索して探し出す場合などに便利です。

なお、インターネットへの接続環境がない場所でPCを使う機会はあまりないので、モバイル接続にはEMチャージを利用しています。

宅内モバイル

PCの無い部屋や布団の中で利用しているのは、9月にリリースされて話題になったNetWalkerです。名前のとおり歩きながらでも使いやすいですが、私は寝転んで使うことが多いです。

以上、私の情報環境を紹介させて頂きました。少しでも参考になれば幸いです。101回以降も、ひきつづき多くの方に当連載をお読みいただき、読者の皆さんのUbuntu環境構築の役に立てば嬉しく思います。

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