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第184回 アナログシンセサイザー・ソフトウェアamSynthで音作り

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音色の変更

amSynthはプリセットを切り替えることで,いろいろな音を出すことができます。標準状態だとプリセット「Derren 1」という音色が選択されていると思います。試しに,操作画面の左上のプルダウンリストから,別な音色に切り替えてみてください。

図6 標準のプリセット一覧

図6 標準のプリセット一覧

音色を切り替えると,操作画面にあるノブの示すパラメーターが変化し,出る音が変化したはずです。アナログシンセサイザーはこれらパラメーターを自由に調整することで,様々な音を作り出すことができるのが特徴です。

作りだした音色は,メニュー「Preset」からひとつひとつファイルにエクスポートできます。メニュー「File」からは,複数の音色をまとめてバンクとしてファイルに保存することも可能です。自分の好みの音色をバンクにしておくと,MIDIのプログラムチェンジ信号で切り替えることができ,MIDIコントローラーやMIDIシーケンサーと併用する際に便利です。

音作り

アナログシンセサイザーによる音作りは一見すると難しい操作ですが,各モジュールの役割を把握してしまえば,それほど難しくはありません。amSynthの操作画面を例にして概説してみます。

図7 操作画面上のメインプロセス部分と味付け部分の位置

図7 操作画面上のメインプロセス部分と味付け部分の位置

amSynthが音を合成するプロセスは,画面上部にあります。オシレーター(Oscillator)で音を発生し,ローパスフィルター(Low Pass Filter)で高い周波数成分をカット,アンプリファイアー(Amplifier)で音量に時間変化を付けます。出てくる音のどんな性質に,それぞれのモジュールがどう寄与しているかということを簡単に説明すると,以下のようになります。これらモジュールの役割は他のアナログシンセサイザーもほぼ同じであるため,覚えておくと応用が効くようになるでしょう。

オシレーター
音色を決める
ローパスフィルター
音色を調整する
アンプリファイアー
音の継続時間やアタック感を調整する

オシレーターはVCO(Voltage Controlled Oscillator)とも呼ばれます。amSynthは2つのオシレーターを持ちますが,その出力をどう合わせるかを,⁠Mix mode」で示される2つのモードから選択できます。⁠normal」モードは2つの出力を「Oscillator Mixer」で指定した混合率で加算します。また,オシレーターシンクを有効にするための「Sync. to Osc. 1」チェックボックスも備えています。⁠ring mod」モードは2つの出力を積算するリングモジュレーションを行い,単独のオシレーターでは作り出せない倍音成分を作り出すことができます。

ローパスフィルターはVCF(Voltage Controlled Filter)とも呼ばれ,特定の周波数成分以上をまるまるカットします。不要な倍音成分を削除することで音色を柔らかくする効果などがあります。amSynthのローパスフィルターはAttack,Decay,Sustain,Releaseからなるエンベロープをかぶせることで,ひとつの音に対するフィルターの掛け具合を,時間軸で微調整することができます。

アンプリファイアーはVCA(Voltage Controlled Amplifier)とも呼ばれ,エンベロープを持つ要素です。こちらは,例えば鍵盤を叩いてから音量を最大になるまでの時間を長くしたり,ひとつの音が長く鳴り続けるように調整することができます。

amSynthはさらに,このメインプロセスに対して画面下部にあるリバーブ(Reverb)やモジュレーション(Modulation)⁠ディストージョン(Distortion Crunch)で味付けをすることができます。

リバーブは残響音を作り出します。

モジュレーションはLFO(Low Frequency Oscillator)とも呼ばれるオシレーターの一種です。音を出さない代わり,周期的なパラメーターの変化を作り出します。amSynthの場合はモジュレーションが発生した周期的な変化を,メインプロセスのオシレーターやフィルター,アンプリファイアーにかけ合わせることができます。例えばオシレーターに掛け合わせると音程を周期的に上下させますし,アンプリファイアーに掛け合わせると音量を周期的に上下させます。

ディストージョンはギターサウンドでお馴染みの「歪み」の効果を加えます。

はじめのうちはどこをどうしたらいいのかわからないと思いますので,一つづつ効果を確認していくとよいでしょう。JACKサウンドサーバーが提供する環境に慣れている人であれば,パッケージ名「jamin」でインストールできる周波数スペクトル解析ソフトウェアのJAMinを併用すると,それぞれのパラメーターの効果が視覚的に確認できて便利かと思います。

図8 JAMinを使うと倍音成分の可視化が可能となり,ローパスフィルターの効果などが一目瞭然となる

図8 JAMinを使うと倍音成分の可視化が可能となり,ローパスフィルターの効果などが一目瞭然となる

MIDIアサイン

パラメーターをいちいちマウス操作で調整するのが億劫な人のために,amSynthには各パラメーターへのMIDIアサイン機能が備わっています。筆者はこの機能を使い,USB接続のハードウェアMIDIコントローラーRoland/Edirol PCR-M30を使って操作しています。

さて,MIDIアサインをするには,メニュー「Config」から「MIDI Controllers」を選択します。MIDIコントローラー上でアサインしたいパーツを動かすと,その信号が自動的に認識されて表示されます。プルダウンリスト「amSynth control」から,割り振りたいパラメーターを選択してください。なお,必ずしも操作画面の表示名とリストの表示名が一致しているわけではありませんので,注意してください。

図9 MIDIアサイン。図ではハードウェアMIDIコントローラーの17番のコントロールチェンジでオシレーター2のパルス幅を調整できるようにしている

図9 MIDIアサイン。図ではハードウェアMIDIコントローラーの17番のコントロールチェンジでオシレーター2のパルス幅を調整できるようにしている

ハードウェアMIDIコントローラーを使うに当たりその対応状況が心配なところですが,USBにはMIDIに関するドライバー規格も盛り込まれていて,ALSAカーネルモジュールはその規格に対応していることから,たいていの製品はUbuntuでも使用可能なはずです。

また,MIDIシーケンサーでこういったパラメーターを変更するパターンを組んでおくと,動的に音色を変えていくという使い方も可能となります。


amSynthはアナログシンセサイザーの基本要素をまんべんなく含んでいるため,慣れれば本物のアナログシンセサイザーも扱えるようになるでしょう。筆者の次回の担当回では,MinimoogやProphet5といった,ビンテージもののアナログシンセサイザーを再現したソフトウェア・シンセサイザーを紹介しようと思います。

著者プロフィール

坂本貴史(さかもとたかし)

Ubuntuのマルチメディア編集環境であるUbuntu Studioのユーザ。主にUbuntu日本コミュニティとUbuntu Studioコミュニティで活動。いつかユーザ同士で合作するのが夢。

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