Ubuntu Weekly Recipe

第439回 LibreOfficeとUbuntu Phone

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日本で十数人ぐらいのUbuntu Phoneユーザーの皆様こんにちは。今回のRecipeは,そんなちょっと外れた皆様のためだけにお届けするとてもニッチな特別編です。スマートフォン上でLibreOfficeをはじめとしたデスクトップLinux向けのアプリケーションを起動する方法を紹介します。

日本でUbuntu Phoneを使うには

「Ubuntu Phone」とは「Ubuntu Touch」がインストールされたスマートフォンです。「Ubuntu Touch」とはスマートフォンやタブレットなどのタッチパネルによる操作が主体のスマートデバイス向けに作られているUbuntuフレーバーです。タッチパネルによる操作が主体なので,マウスカーソルは表示されませんし,キー入力はソフトウェアキーボードで代用します。またスマートデバイスは物理的な画面サイズがPCに比べて小さいため,原則として1つのアプリが全画面を占有するようなUIになります。さらにGPSや電話といったスマートデバイスには欠かせない機能への対応やバッテリーの消費量を抑えるための施策などが実装されています。ここではOSとしての「Ubuntu Touch」がインストールされたデバイスであれば,スマートフォンかタブレットかを問わず「Ubuntu Phone」と表現することにします。

Ubuntu Phoneは2013年のMWC前後に具体的な話が登場し,同時期にあらわれたMozilla/Firefox OSやTizen,Jolla/Sailfish OSとともにAndroid/iOSに対抗する「第三のOS」の一角を成すことになりました。「第三って,xxxはなかったことにされたの?」とか「つまりはいずれ倒される運命にある『四天王』ということですね」とか,いろいろ言われること3年。Firefox OSは新天地に旅立ち,Tizenは新興市場やスマートウォッチという形で実績を残しつつあり,Sailfish OSは一時期不穏な噂が流れたもののその後は着実に端末数を増やしているという状況です。Ubuntu Phoneについても,2015年になってようやくBQからヨーロッパ市場向けに一般販売が開始したのを皮切りに,国際出荷の対応や中国のMeizuによるハイエンド版の販売10インチサイズのタブレットなど,Android/iOSに対抗しているとはとても言えないながらも海外では少しずつ認知度を高めていっています。

残念ながらこれらのUbuntuブランドのデバイスはいずれも今のところは技適を通っていません。そのため日本でこれらのデバイスを使おうとすると,いくつかのハードルを超えなくてはなりません。ただ,Ubuntu PhoneはNexusシリーズのいくつかのデバイスも公式のサポートデバイスとして扱っています※1)。2016年9月時点でのサポートデバイスは次のとおりです(カッコの中はコードネーム)。最後の「Emulator」はAndroid SDK同梱のエミュレーターをベースにした,Ubuntu Phoneのエミュレーターです。これを使えばデバイスを持っていなくても,Ubuntu Touchを体験できます。

※1
非公式なコミュニティベースのサポートデバイスもあります。カーネル・ドライバーのソースコードにアクセスできて,ブートローダーのロックを解除できるなら,Ubuntu Touchを移植できる可能性はあります。
  • Nexus 4 (mako)
  • Nexus 7 2013 WiFi (flo)
  • BQ Aquaris E4.5 (krillin)
  • BQ Aquaris E5 (vegetahd)
  • BQ Aquaris M10 (frieza)
  • BQ Aquaris M10 HD (cooler)
  • Meizu MX4 (arale)
  • Meizu PRO 5 (turbo)
  • Emulator (generic)

とはいえNexus 4はLTEに対応しておらず,Nexus 7 2013 WiFiはモバイルネットワークに対応していないため,正直な話をすると国内ではセカンドデバイスのような用途として考えても,使いやすいとは言えない状況です。ちなみにNexus 4はいわゆる「格安SIM」と呼ばれるMVNOのSIMを用いて通信・通話できます※2)。つまり不便ではあるものの,スマートフォンとして最低限のことは行えます。

※2
少なくともIIJmioのみおふぉんで3G通信や音声通話ができることを確認しています。

奇しくも「まもなくGoogleがNexus 7の後継機を発表するのでは?」という噂が流れています。またNexus 4については,もう現役で使われていることはそうそうないでしょう。もしご家庭でNexus 4やNexus 7 2013が余るようなことがあれば,お遊びついでにUbuntu Touchをインストールしてみてはいかがでしょうか。

NexusシリーズへのUbuntu Touchのインストール方法は次のとおりです。

  1. Android上でデバッグ機能を有効化する
  2. ブートローダーをアンロックする(サポート対象外になる)
  3. デバイスをUSBケーブルでUbuntu PCにつなぐ
  4. Ubuntu PCからインストールコマンドubuntu-device-flashを実行する

これだけでUbuntu PCがデバイスの種類を認識し,必要なイメージをダウンロードし,Nexusデバイスに書き込んでくれます。詳細は公式のインストールガイドを参照してください。ちなみにNexus上のデータはすべて削除されます。しかしながらAndroidデバイスにおける,Factory Resetと同じ手順でAndroidイメージの書き込みを行えば,Ubuntu Touchを削除してAndroidに戻すことは可能です。

Ubuntu Phoneでオフィスドキュメントを閲覧する

図1 Document Viewer

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前置きが長くなりましたが,ようやくLibreOfficeの話となります。LibreOfficeは言わずとしれたオフィススイートです。仕事にしろ私用にしろ普段LibreOfficeを愛用している人であれば,そのドキュメントをスマートデバイスでも閲覧できると何かと便利でしょう。実際,Android向けであればオフィスドキュメントの閲覧や簡単な編集を行えるLibreOffice Viewerが存在しますし,プレゼンテーションツールであるImpressをAndroidデバイスでリモートコントロールするためのImpress Remoteなるツールも存在します。残念ながらUbuntu PhoneはLibreOfficeの公式サポート対象にはなっていませんが,第437回でも紹介したようにLibreOffice Viewerと同じくLibreOfficeKitを利用したubuntu-doc-viewerが存在します。

インストール方法はUbuntuストアで「Document Viewer」で検索し,「インストール」ボタンを押すだけです。ちなみにUbuntuストアを使うためには,Ubuntu Oneのアカウントが必要です。Launchpadのアカウントをすでに持っているのであれば,それを使用できます。

図2 Calcを表示した例:日本語も大丈夫

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これはLibreOfficeKitを用いてタイル画像に描画しつつ,Qt5/QML用のLibreOffice描画プラグインを作ってその画像データを 画面に表示させているというものです。ピンチイン・アウトで拡大・縮小もできます。ただしLibreOffice Viewerと異なり,編集には未対応です。また動作も緩慢なので,「ちょっと確認する」程度にしか使えないと思っておいたほうが良いでしょう。ちなみにコントラストを変更する「ナイトモード」搭載です。

左:図3 Calcを表示した例:ナイトモード
右:図4 Impressを表示した例:スライドプレビューが表示される

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著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。

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