今回はLibreOffice Calcの便利な機能をざっくばらんに紹介します。
LibreOffice CalcとApache OpenOffice Calc
第455回に続き、LibreOffice Calcの便利な機能、もっといってしまえばApache OpenOfficeにはない機能を紹介していきます。もちろんたくさんあるため、ここで紹介できるのはごく一部だけです。
使用するLibreOfficeのバージョンは特に注記がない限り5.2.6です。現在は5.3.1もリリースされていますが、対象とはしません。ただし、5.3でも有用ではなかろうかと思います。
関数
関数に関しては第438回で取り上げましたので、そちらを参照してください。
破線
ご存じの方も多いと思うのですが、OpenOffice.orgもApache OpenOfficeも罫線に破線を選択することができません。しかし、LibreOfficeであれば破線を選択できます(図1)。特に日本では破線を多用するので、これだけでもLibreOfficeを選択する理由になるくらいのインパクトがあるといっていいでしょう。
均等割付
LibreOfficeは、セルの均等割付にも対応しています(図2)。これもやはりOpenOffice.orgでもApache OpenOfficeでも対応していません。
数式バーの複数行入力
数式バーの横にある三角アイコンをクリックすると、複数行で入力できるように広がります(図3)。これで長い数式を簡単に入力したり、確認できるようになります。
並び替えキーの制限撤廃
Apache OpenOfficeでは[データ]–[並び替え条件]の[並び替えキー]が3つまでしか設定できないという制限がありました。しかしLibreOfficeでは、これが撤廃されました。デフォルトでは3つしか表示されませんが、3つとも設定すると4つ目が追加され、4つ目を設定すると5つ目が追加され、と必要な分だけ増加できるようになりました。
コンテキストメニュー(右クリックメニュー)の変更
LibreOffice Calcのコンテキストメニューには[形式を選択して貼り付け]のほか、[形式を限定して貼り付け]が追加されています。さらに[テキスト]と[数値]と[数式]から選択できます。ようするに[形式を選択して貼り付け]の機能限定版ですが、使用頻度が高いものばかりなので希望の書式に簡単に貼り付けできるようになっています。
また、複数のセルを選択した状態でコンテキストメニューを表示すると、セルの結合ができるようにもなっています。
オートフィルターの強化
オートフィルターのUIは完全に書き直されました(図4)。指定する条件が細かくなったこと、複数の条件が選択できるようになったこと、元の状態(何も選択してない状態)に戻すことが簡単になったなどの違いがあります。
条件付き書式
条件付き書式については第262回で取り上げましたが、5.2ではさらに強化されています。カラースケール、データバー、アイコンに対応していますし、日付だけを簡単に強調できるようにもなりました。
連続データからセルのフィルへ
LibreOfficeの古いバージョン(4.4以前)やApache OpenOfficeでは[編集]–[連続データ]で連続データを生成していましたが、5.1以降は[シート]–[セルのフィル]–[連続データの作成]に移動しました。また、乱数も生成できるようになっています。サンプルデータを作る場合に便利でしょう。
数式エンジンの刷新
LibreOffice 4.2から数式エンジンが刷新されました。これにより処理速度とメモリの使用量を削減しています。そればかりか、OpenCLを使用してGPGPUでの計算も可能になりました。もちろんUbuntuでもこの恩恵にあずかることはできるのですが、詳しい解説はまた後日にしようと思っています。最も簡単な方法はNVIDIAあるいはAMDのビデオカードを増設し、プロプライエタリなドライバーをインストールすることです。IntelのCPUだとわりと新しめのものだといいのですが、古いものだと遅くなってしまうこともありました。その後[ツール]–[オプション]–[LibreOffice]–[OpenCL]の[OpenCLを使用する]にチェックを入れ(図5)、LibreOfficeを再起動すればOpenCLを使うようになります(図6)。
グラフを画像で保存
表計算ソフトで作成したグラフを画像で保存したいと思うことはよくありますが、LibreOfficeであればもちろんできます。作成したグラフを右クリックし、[イメージとしてエクスポート]をクリックすると保存ダイアログが表示されます。ファイル形式はPNGやJPEG形式はもちろん、EPSやSVG形式も選択できます。
統計
[データ]–[統計]に、統計で使われるデータ解析で使われるさまざまな機能が追加されています。具体的にはサンプリング、基本統計量、分散分析(ANOVA)、相関、共分散、指数平滑、移動平均、回帰、t検定、F検定、z検定、カイ二乗検定です(図7)。本格的に使用するには機能が足りないと思いますが、ぜひとも試していただきたい機能のひとつです。
数式を数値に
入力された数式を結果のみの数値にしたいということはままあります。具体的には、例えばセルに[=1+1]と入力されている場合、結果の[2]が表示されますが、これを[2]という数値に変換したいということです。その場合は変換したいセルを選択して[データ]–[計算]–[数式を数値に]を実行してください。
すべての行/すべての列の範囲指定
例えば、A1のセルを含むすべての行の範囲指定をする場合は[A1:AMJ1]、すべての列の範囲指定をする場合は[A1:A1048576]とする必要があります。しかしLibreOfficeではこの形式のほかに、それぞれ[1:1]と[A:A]と入力するだけでもよくなり、便利になりました。
数式でワイルドカードを使用できるように
Calcはこれまで数式でワイルドカードではなく正規表現が使用できましたが、5.2からはワイルドカードも使用できるようになりました。使用できるワイルドカードは"?"、"*"、"~"の3つです。Excelに慣れている場合は違和感なく使用できるでしょうが、Calcユーザーにはおせっかいかもしれません。設定は[ツール]–[オプション]–[LibreOffice Calc]–[計算式]の[数式でワイルドカードを使用する]と[数式で正規表現を使用する]と[数式ではワイルドカードも正規表現も使用しない]で変更できます(図8)。5.2では[数式で正規表現を使用する]がデフォルトですが、5.3では[数式でワイルドカードを使用する]がデフォルトに変更されているため注意してください。
CSVエディター機能
第363回でCalcをCSVエディターとして使用する方法を紹介しましたが、この機能もApache OpenOfficeとは若干違い、使い勝手が良くなっています。
ここでもう一度読みたい記事
ここで紹介した機能のうちのいくつかを手がけ、現在も継続してLibreOffice Calcを開発されている吉田浩平さんが昨年講演しています。ぜひ、このレポートを今一度読み返してみくてださい。
このような方によってLibreOfficeは開発され、便利に使用できていることを心の片隅に置いておきたいものです。