「いい写真」はどうすれば撮れるのか?
~プロが機材やテクニック以前に考えること

[表紙]「いい写真」はどうすれば撮れるのか? ~プロが機材やテクニック以前に考えること

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B5変形判/176ページ

定価2,178円(本体1,980円+税10%)

ISBN 978-4-7741-8031-1

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書籍の概要

この本の概要

「いいカメラを使っても,画質はきれいだけど,いまいちピンとこない写真しか撮れない……」

そんな悩みはどうすれば解決するのか。プロカメラマンとして活躍する著者が,「きれい」「かっこいい」「おいしそう」「かわいい」「うれしい」といったキーワードをふまえて,イメージ以上のよさを引き出すために何に注目し,どう考え,どんな準備をして,どう撮るか,という機材やテクニック以前の「考え方」を教えます。

こんな方におすすめ

  • より上手に写真を撮りたいと思っている方
  • そこそこ良いカメラやレンズを持っているのに,いまいち自分の写真に満足できていない方

著者の一言

高いカメラを使っても「いい写真」は撮れない

「プロカメラマンは値段の高いカメラやレンズを使っているから“いい写真”が撮れるのではないでしょうか?」
「どんな特別なカメラを使っているのですか?」

そんな質問をいただくことがあります。この質問に対して,私はこうお答えしています。

「みなさんと同じように,量販店で手に入れられるカメラを使っていますし,高級なカメラを使っているからといって必ずしも目的の写真が撮れるとは限りません」

たしかに数十年前は,特に報道関係のカメラマンのために特別にチューニングされたカメラが存在していたようですが,現在ではそのようなことはありません。写真を作るためにはカメラとレンズが必要ですが,「写真を撮る」という行為と「写真が写る」という事実は,つながっているようで異なることなのです。

「写真はカメラの細かい操作や技術で撮るもの」

そう思われている方も多いのではないでしょうか。

たしかに,カメラやレンズの性能の進歩のおかげで,これまで撮れなかったものが写せるようになったことは事実です。しかし,被写体に向き合い,フレーミングをして,最後にシャッターを押すのは人間です。ピントはカメラが合わせてくれますが,「何に向き合い,何を感じて,どのタイミングで撮るのか?」は,どんなに高性能のカメラも教えてくれません。撮影者の意思がカメラとレンズというフィルターを通して,写真に結実されるのです。

写真を撮るうえで一番大事なことは,「シャッターを押す前にどれくらいの準備ができているか?」だと思います。道具の準備はもちろんですが,特に重要なのは心の準備です。もちろん,偶然の出会いによって素晴らしい作品を残せることも多くありますが,

「“偶然を受け入れる準備”が,奇跡の瞬間を呼び寄せる」

と私は考えています。人物を撮るなら被写体からよりよい表情を引き出すためにもシャッターを押す前のコミュニケーションが必要ですし,風景を撮るなら地図上から場所を探し出し,その場所の歴史や気候の変化を観察していきながらベストタイミングを見つけていきます。

「カメラを構え,シャッターを押す」という行為は,撮影という過程の中の最後の1割にすぎないと私は考えます。つまり,それまでの9割が写真の出来栄えを左右するのです。本書では,その部分にスポットを当てます。少しでも多くの方が写真を楽しんでいただけるきっかけとなることができれば幸いです。

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写真の出来栄えは「カメラを構え,シャッターを押す」前の準備で決まる
「人間がバーを飛び越えて行くときに,空と一体になり,まるで鳥のように羽ばたいていく瞬間」そんなイメージを体現したのが,この棒高跳びの写真です。

本書のサンプル

本書の紙面イメージは次のとおりです。画像をクリックすることで拡大して確認することができます。

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目次

はじめに 高いカメラを使っても「いい写真」は撮れない

第1章 「いい写真」ってどんなもの?

撮影に入る前に

  • 万人に「いい」と思ってもらう必要はない
  • いい写真=売れる写真とは限らない
  • 「“いい写真”お願いします!」はなかなかクセモノ
  • 連写をしても決定的瞬間を撮ることはできない
  • 「なぜ,こう撮るか」を言葉にしよう
  • ルールを知れば魅力が見える
  • 自分とのコミュニケーションが写真に反映される

「白い背景に白い卵が1個」をどう撮るか

  • 正解は自分自身の中にある
  • いい写真に不可欠な基本動作とは
  • コラム 同じ「写真家」という職業でも,報道と広告ではまったく違う職業である

第2章 きれい

驚きと発見

  • 晴れた日は空を見上げ,雨の日は水溜りを眺める
  • 「こうあるべき」という先入観を持たない
  • カメラはいつも首から提げておく
  • 遠目から撮るとボリューム感が
  • レンズ交換は気分転換
  • 雨の日でなければ見えてこない景色が必ずある
  • ピントを外すことで幻想的な世界が
  • 全景から細部へ

光と色

  • 光を知る
  • 光が作り出す演出を操る
  • 影の印象が強調されるように,少しアンダー気味に露出を取る
  • 被写界深度を深くして存在感を出す
  • 楽しい雰囲気を出したい時は,露出を明るめに
  • 被写体に色の存在感があるときは,背景を工夫して

形と透明感を見る

  • シンプルな被写体ほど奥が深く,写真家の力が試される
  • 多くの魅力を見つける
  • 「透明感」を出す
  • 透きとおるような透明感を作り出す
  • 透明な瓶の中に水を入れたものをどう撮るか
  • コラム 1枚で見せる写真は一瞬のドラマ,30枚で見せる写真は30回連続ドラマ

第3章 かっこいい

ダイナミック

  • スポーツの魅力やルールを知る
  • かっこいい瞬間をイメージしておく
  • 見るのではなく,感じてシャッターを切る
  • 障害馬術 ~遠隔操作で理想の1枚にたどり着く
  • バスケットボール ~影を主役に,超広角レンズで目一杯遠近感を
  • サッカー ~フォームがドラマチックに写る瞬間を狙って
  • ボクシング ~カメラを構えず肉眼で動きを追って見えたもの
  • 棒高跳び ~写真は肉眼を超えていく

気品のある美しさ

  • 被写体のバックグランドや歴史を知る
  • 被写体との「対話」を大事にする
  • 受け身の状態でカメラを持つ
  • 歴史ある建物をどう撮るか

奥深さ

  • 特別なものと思わずに楽しむ
  • カラーとモノクロを比べる
  • 撮る時間よりも見る時間を大事に
  • 夏の海辺
  • 夕暮れ時の海
  • 寒い冬の夜,キャンドルの光
  • モノクロ写真は「画像処理も含めて完成させる」という気持ちで
  • モノクロ写真作成のポイント
  • モノクロ変換の3つのステップ
  • 作例1 夏の海辺
  • 作例2 夕暮れ時の海
  • 作例3 寒い冬の夜,キャンドルの光
  • 第4章 おいしそう

シズル感がある

  • おいしそうに感じた気持ちを整理する
  • 「肉眼に近い目線」で,一番おいしそうな角度,構図を考える
  • スタイリングでおいしさを際立たせる
  • 目玉焼きが乗ったハンバーグをどう撮るか

温度を感じる

  • 温度を感じるキーワードを主役にする
  • 主役を引き立てるタイミングを捕まえる
  • 温度が見える背景と明るさで
  • コーヒーをどう撮るか

味や匂いを感じさせる

  • 実際に食べた時の気持ちをまず言葉にしてみる
  • 背景を変えてみる
  • 目線の高さを変えてみる
  • 出来立てのパンケーキをどう撮るか
  • コラム なぜ,プロカメラマンのカメラはニコンかキヤノンなのか

第5章 かわいい

すき間がある

  • 写真の中に余白を作ってみる
  • 「力強く」よりも「ちょっと控えめに」
  • 丸い壁掛けの時計をどう撮るか
  • 4色の飴のお菓子をどう撮るか

豊かな表情,しぐさ

  • 同じ目線になって,魅力を最大限に捉える
  • 使用するレンズはシンプルに
  • 世界にそっと入り込む
  • 子どもをどう撮るか

柔らかい・フワフワ

  • 安心して過ごす空間を作る
  • 柔らかな光の中で撮る
  • 空気をつかむ
  • 猫をどう撮るか
  • コラム うまく撮れないのは青信号

第6章 うれしい

人とつながる魅力

  • 一方的な押しつけにならないようにする
  • その場の空気になる
  • 撮影した写真をプリントして渡す
  • 中学校の放課後 ~空気を壊さないよう入り込んでいく
  • 親子 ~「この人たちとつながっていく」という意識で
  • 自分自身の結婚式 ~二人だけしか見てない光景を永遠に

いつもの1日を生きる喜び

  • 自分のために撮る
  • 心をリセットする
  • 同じ日の空を撮る

被写体と心が通い合う瞬間

  • 被写体とたくさん会話をする
  • 短焦点レンズを活用する
  • いつもの場所で,普段どおりで
  • 両親をどのように撮るか
  • コラム 写真を撮るとは「残す」ということ

第7章 写真展で「いい写真」に見せる

写真展を開催するまでにやるべき5つのこと

  • 1. 写真作品のセレクトおよび作品テーマの確認
  • 2. 会場選び
  • 3. 宣伝
  • 4. 写真展用のプリントおよび額装
  • 5. 写真作品の会場設営

写真展「拳の行方」のケースから

  • 10年単位で被写体と向き合う
  • 自身の写真をよく知り,タイトルをつける
  • 描き出したいイメージを具体化させておく
  • 使用する写真をセレクトする
  • 構成を固める
  • 自分自身の「いい写真」と向き合うことが写真展の意味
  • 相手を尊重して距離感を測る
  • 写真展は終わりではなく「通過点」
  • コラム 写真は「撮る」より「選ぶ」ときが大変

あとがき

著者プロフィール

中西祐介(なかにしゆうすけ)

1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。講談社写真部勤務を経て,2005年よりアフロスポーツに所属。日本スポーツプレス協会会員。国際スポーツプレス協会会員。
学生時代より,ボクシングを撮り始め,現在はボクシング世界タイトルマッチ,オリンピック等,スポーツ全般の撮影に従事しながら多くのドキュメンタリー製作にも取り組んでいる。
これまでに,『Fight』(2006年,フジフォトサロン東京),『拳の行方』(2012年,キヤノンギャラリー)などの写真展を開催。各スポーツ雑誌,報道媒体に多くの写真を提供すると同時に,広告分野の仕事も多い。
日本カメラの連載「究極の瞬間」を2012年の1年間担当。その他のカメラ雑誌での執筆多数。
URL:http://www.aflo.com/artist/nakanishi_yusuke/