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「ITがダメ?もうあきらめているよ」という方にこそ読んでもらいたい1冊

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「憧れのIT業界」なんて時代がありました

「新卒がとれない……」。あるソフトウェアハウス経営者のボヤキです。就職戦線でのIT人気にかげりが見えるようになり,それが中小のソフトウェア会社に影を落とし始めています。

就職情報誌に「憧れの職業プログラマー!」などと踊っていたのは今は昔で,学生たちはIT業界を敬遠するようになっています。その理由の1つが,労働条件が劣悪なこと。「きつい・キリがない・帰れない」のITの「新3K」は,彼らに言わせると「キライ! キライ! キライ!」「新・新3K」になるのだそうです。

ITバブルもライブドアも一過性の問題に過ぎない

人材の採用難に直面する前に,ソフトウェア産業は2000年に入って以降2つの大きな波に洗われました。1つはITバブルの崩壊。「IT」「.com」を看板に掲げる若い会社が,新産業の担い手ともてはやされましたが,期待値が大きすぎた分の反動で多くの会社が市場からの退場を余儀なくされました。

もう1つは2006年のライブドア・ショックです。この事件を境に,新興IT企業に向けられる目が一転してシビアになり,似通った業態の会社の株価は2年を過ぎた今も低迷を続けています。

たしかに,こういった大波は世間の耳目を集めました。しかし,本書『日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由』が,ソフトウェア産業をダメと言い切ってしまう理由は別のところにあります。

ITバブルの崩壊やライブドア・ショックは,業界が成長を続ける過程で起きた,いってみれば過渡的な問題で,それはソフトウェア産業が抱える本質的な問題ではありません。

いつまでも放置され続ける「ダメ」の数々

では,本質的な問題とはいったい何でしょうか? それが,本書で取り上げているソフトウェア産業の「ダメ」の数々です。いくつか列挙してみましょう。

  • ソフトウェア会社は,熱心で有能な人間ばかりがババを引く仕組みになっている
  • ソフトウェア会社自身がプロジェクト失敗の片棒を担いでいる
  • エンジニアが思い描く理想像はビジネス感覚に乏しく,会社が求める人材像と一致しない
  • 車,ゲームと多くの日本製品が海外に進出しているのに,ソフトウェア製品は海外市場に売り込むことができていない
  • もの作り屋さんのはずのソフトウェア会社が,「人貸し屋さん」の人材斡旋業と化している
  • ソフトウェアを発注するユーザー企業が,「大手なら安心。失敗しても怒られない」と有名IT企業を妄信している
  • 国産の軽自動車で十分なユーザーまで外国の高級車並のソフトウェアを欲しがる傾向がある

IT企業の経営者や管理職などこの業界に長い方であれば「何を今さら」と思われるかもしれません。たしかに目を見張るような新奇性はありません。しかし逆に言えば,昔からソフトウェア産業に巣食っている問題が解決策を示されないまま放置され,「今さら」のひと言に象徴されるように,いつの間にかそのダメっぷりがあきらめの対象となってしまっていることも事実でしょう。

今までスルーしていた問題を解決するための第一歩

本書は,日本のソフトウェア産業を取り巻く問題を論じるために,業界の酸いも甘いも知っている経験者たちの知恵と経験を借りるアプローチをとりました。ある夏の日,某所で行われた座談会に出席した面々のバックグラウンドは実に多彩です。

業務システム開発の草分け的存在のプログラマー,一介のコンピュータ好きから最大手ソフトウェア会社で技術顧問にまでのぼり詰めたエンジニア,化学メーカーの情報システム部門から2つの外資系ファームに転じたコンサルタント,大手外資系ITベンダーの管理職の座を蹴ってフリーの立場で働くITコーディネータ,国内有数のインフラ会社,ITコンサルティング会社を経て自ら会社を立ち上げた経営者,開発現場,シンクタンクと一貫して流通業向けのシステム開発にこだわってきたスペシャリスト,米国連邦政府の国内オフィスを経てMBAを取得したコンサルタント兼プロジェクトマネジャー……。

彼ら7人の男たちが,ソフトウェア産業が引きずり続ける問題をえぐり出し,それを解決するための糸口を探ります。

IT企業の経営者・マネージャ職にある方,ITエンジニアの方,ユーザー企業でITエンジニアと接触するポジションにある方,本書を材料にして,今まで見て見ぬふりをしがちだった問題にメスを入れる第一歩を踏み出してみませんか。

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