新春特別企画

LibreOffice/Apache OpenOffice ~2012年の出来事と2013年の新バージョンリリース~

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新年あけましておめでとうございます。

本年も新春特別企画をお届けすることができ,大変喜ばしく思っております。

昨年はLibreOffice(以下LibO),Apache OpenOffice(以下AOO)ともに一言でまとめると組織固めの年でした。一昨年と比較してダイナミックな動きは少なくなっているものの,両者が確実に進歩していることを実感することができました。

また,本年はMicrosof Office 2013のリリースが3月までに予定されているばかりか,LibO/AOOともに4.0というメジャーバージョンアップを迎えることになっており,とてもエキサイティングな1年になりそうです。

なお,事前に昨年の新春特別企画をお読みいただけると,より理解が深まるはずです。

ご注意
本稿で記述している日付はJSTであったりUTCであったり,はたまたほかのタイムゾーンであったりするため,最大で1日程度の差があることをご了承ください。また,多数リンクがありますが,中にはご覧になっている時点でリンク切れのものもあります。しかし,こちらもあらかじめご了承ください。そのほか,行き交うメールの量が膨大すぎて全部に目を通せないため,見落としているものもあるかもしれません。何かお気づきの点があればコメントいただけますと幸いです。

2012年のLibreOffice

リリース

昨年のLibOのリリースを表にまとめます。あくまでリリース版だけであり,ベータ版やRelease Candidate(リリース候補版)は除いています。

リリース日バージョン
1月16日3.4.5
2月14日3.5.0
3月15日3.5.1
3月22日3.4.6
4月5日3.5.2
5月2日3.5.3
5月30日3.5.4
7月11日3.5.5
8月8日3.6.0
8月15日3.5.6
8月29日3.6.1
10月4日3.6.2
10月18日3.5.7
11月1日3.6.3
12月5日3.6.4

今となっては3.4系列も3.5系列も新バージョンのリリース予定はなく,LibOの進歩の早さと安定したリリースに驚くばかりです。

The Document Foundationが財団に

LibreOfficeの母体であるThe Document Foundation(以下TDL)が2月17日に,名実ともにFoundation(財団法人)となりました。これがLibreOfficeの組織固めの意味するところです。

ライセンスの変更とAOOの機能の取り込み

5月末頃までに,LibOにパッチを提供した人全員にGNU Lesser General Public License 3.0(LGPLv3)とMozilla Public License(MPL)のデュアルライセンスを明言するよう徹底されました。その後6月6日から断続的にソースコードのヘッダーをApache License 2.0(AL2)に書き換える作業が行われています。もちろん行われたのは一部のソースコードに対してです。AOOと同じソースコードであれば書き換えて問題ありませんし,LibOのライセンスであるLGPLv3とAL2は矛盾もしないので,その意味でも問題ありません。ではLibO向けにパッチを提出した人はどうなるかというと,MPLの条項3.7「拡大開発」というのがあり,これはMPLで提出されたパッチはそれと矛盾しないライセンス(AL2も含まれる)に同梱して配布してもかまわない,と読み取れます※1)。

確かにAL2になるとAOOのソースコードが取り込めるようになるため,LibOにも多大なメリットがあります。そして11月6日,AOO 3.4の新機能が取り込まれました。AOOのブログでも紹介されています。

AOOの機能を取り込み,独自の機能を実装するのがLibOの魅力の一つになるのかもしれません。

※1
もちろん筆者は法律家ではないので,解釈が間違っている可能性があります。

公的機関の資金提供によるOOXMLのサポート強化

一昨年の12月のことですが,ドイツのOpen Source Business Allience(OSBA)という団体のOffice Interoperabilityワーキンググループが,フリーのオフィススイート(具体的にはLibOとAOO)にあるOOXMLの相互運用性に関する問題5点を仕様書(Specification)としてまとめました英語のPDF)。これにドイツのフライブルグやミュンヘンなどEUの自治体や公的機関などが14万ユーロの資金提供を行い,SUSEとLanedo※2が実装を行いました。9月末で作業が完了し,LibO 4.0には取り込まれています。

仕様書を読むとライセンスはAL2にすることが明言されているため,AOOでも取り込めるはずですが,確認した限りでは今のところ取り込まれた形跡はありませんでした。

これは「困っているところがお金を出して必要な機能を開発してもらい,それを公開する」という点でオープンソースソフトウェアの開発モデルとしては理想的といえます。The Hの紹介記事ApacheConで行われたプレゼンの資料を提示しておきますので,興味のある方はご覧ください。

※2
言うまでもありませんが,どちらもLibOの開発を行っている企業です。

LibreOfficeカンファレンス

「LibreOffice Conference 2012 Berlin」が2012年10月17日から10月19日まで行われました。参加レポートがありますので,ご一読ください。はがきサイズのサポートや翻訳など,日本のコミュニティに関する発表もあります。

2012年のApache OpenOffice

AOO 3.4.0/3.4.1

当初の予定からは遅れましたが※3),5月8日にAOO 3.4.0が,8月23日に3.4.1がリリースされました。その後古いOOoへのアップデート通知が行われるようになり,多数の人が乗り換えたと思われます。翻訳については3.4.1で行われユーザーインタフェース,ヘルプともに翻訳率100%となっています※4)。

※3
当初は第一四半期リリース予定でした。
※4
ただし改善は行われておらず,Windows版インストーラーの不思議な文言は残ったままです。

Incubator Projectを卒業し,Top Level Project(TLP)

プロジェクト自体もIncubator Projectを卒業し,Top Level Projectとなりました。ユーザーにとってはWebサイトのURLが変更し,メーリングリストのメールアドレスが変更になるくらいで大きな違いはないとのことですが,これでアプリケーションの名前もApache OpenOfficeになったのは大きな進歩でしょう※5)。

※5
筆者はApacheのプロジェクトに関して明るくないのでよくわかりませんが,どうもプロジェクトもプロダクトも正式名称は『Apache OpenOffice (Incubating)』だったようです。

インフラの移設

Oracleからのインフラの移設は一昨年中にはほぼ終わっていましたが,いよいよ3月にはOracleが運用していたサーバーがすべてシャットダウンされました。具体的には,これまでopenoffice.orgドメインのメール転送サービスがあったのですが※6),これが使えなくなりました。ほかには,プロダクト拡張機能テンプレートに関してはSourceForgeがホスティングすることになりました。これはApache Software Fondation(ASF)には大規模にバイナリを配布するサーバーがないこと,拡張機能とテンプレートに関してはライセンスがまちまちでASFでは配布できないことが理由だと思われます。

※6
ユーザー登録すると誰でも使えました。筆者もikuya@openoffice.orgを使っていたことがあります。

Lotus SymphonyとAOO

IBMは1月18日にLotus Symphony 3.0.1をリリースしました。ほぼ同じタイミングでSymphonyの「フォーク」をやめ,Apache OpenOfficeに注力すること※7),Apache OpenOffice 4.0をリリース後,いくつかの付加価値をつけたApache OpenOffice 4.0 the IBM Editionをリリースすることなどを発表しました。ほぼ1年前の出来事ですが,基本的には今もIBMはこの線で動いているように見えます。そして5月21日にLotus SymphonyのOOo関連のソースコードが公開されました。Ubuntu Weekly Recipeの第224回で紹介したので,ご存じの方も多いかもしれません。

もともとはAOO 3.5というLotus Symphonyの機能を取り入れつつもユーザーインタフェースの大幅な変更を伴わないバージョンをリリースしてからサイドバーを取り込んだ4.0をリリースするという話もありましたが,現在は4.0に向けて開発中です※8)。

※7
とはいえ,Fix Packという不具合を修正したアップデートをリリースしており,現在でもメンテナンスは継続しています。
※8
とはいえ,今のところSubversionでのバージョンは3.5のままです。

IVSサポート

5月4日に最初のIVS(Ideographic Variation Sequences)サポートが入りました。詳しくは鎌滝さんの日記をご覧ください。その後特に進歩はないようですが,偉大な一歩だと思います。

メンターのインタビュー

TLPになった今となっては旧聞に属する話ですが,Ross Gardlerさんへのインタビューは必読です。ASFは何をするのか(むしろ何をしないのか)かがよくわかります。

著者プロフィール

あわしろいくや

Ubuntu Japanese Teamメンバーで,主として日本語入力関連を担当する。特定非営利活動法人OpenOffice.org日本ユーザー会。LibreOffice日本語チーム。ほか,原稿執筆も少々。

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