[聴く]を仕事にする女性達との三者座談会。前回語られた“聴くためのマインド”に続き,聴ける力がどのようなもので構成されているか,という話にテーマが移っていきました。
- 座談会参加者:
- ●通訳者 奥山ちとせさん(以下,奥山)
- ●メディエーター 田中圭子さん(以下,田中)
- ●グラフィックファシリテーター やまざきゆにこ(以下,ゆに)
- 〇読者代表&記録係り ワタナベアキコさん(以下,ワタ)
- 〇オブザーバー 本連載担当 タカハシさん(以下,タカ)
※それぞれのプロフィールは,第23回をご覧ください。
ワタ:「あの人が発言すると何かが違う」という人には,どうすればなれるのか。具体的には,その人が発言することで議論がより深まったり,場の雰囲気がよくなったり,そういう発言には何が必要なのか,どうしたらそのスキルが得られるのか。そういうことが知りたいんですよね。
ゆに:なるほどね。そこで,会議をうまく進める力量の1つとして,これからは[聴ける力量]が問われてくると思うんですが,どうでしょう? [聴ける力量]をスキル分解してみます。
①「本当に言いたいことは何なのか」に戻れる力
ゆに:田中さんのおっしゃった「解決に急ぐのではなく」「じっくりゆっくり」「解決の糸口を探す」という言葉が分かるなあと思って聴いてました。会議を絵にしていると「みんな何をそんなに急いでるの?」と思うことが本当にたくさんある。
奥山:うんうん。
ゆに:先日ミヒャエル・エンデの『モモ』を読んだら,急いでいるときほど実はゆっくり歩かないと進めないという小路で,「もうちょっとはやく歩けない?」というモモに,亀が甲羅でメッセージを送るんです。「オソイホド ハヤイ(遅いほど早い)」って。これを読んだとき,そう!そう!と思って。
田中:メディエーターは,当事者同士のお話し合いを助けていくとき,"解決案"を提示することは目的としていないんです。「本当に双方が言いたいことは何なのか」ということに「もう1回戻ってみる」ことが大事ですね。もしからしたらお二人の糸口が違ったのかもしれない。AさんとBさんの糸口が違っているように,メディエーターである自分もAさんやBさんと糸口が違っていたかもしれない。こういうところを,いかに早く見つけられるか。
ゆに:私が絵を見直して(前の絵に戻って)分析しているときがまさに「もう一回戻る」です。でも「戻ることが大事」であることは,なかなか知られていないと思います。よく「ゆにさんが絵でまとめてくれるんですか」と言われるんですが,私は,最初は拾うので精一杯。まとめながら描くなんてことはできない。けれど,支離滅裂なときほど,後で一気にすごい速さでまとまることがあるから,「慌てないで」とも思います。「まとめる」と言った瞬間に,先を急ぎすぎて,何か大事なものをいっぱい落っことしていっちゃう気がしてならない。結局,会議が増えて,遅くなるかもしれないと思えてならないときがある。
田中:一生懸命何かを言わんとしているところから,その人の「本当に話したいことは何か」を探ってます。その中で,メディエーションでは,「ポジションにあるイシュー」ではなく,「ニーズにあるイシュー」は何か,を拾っていくようにしています。
ゆに:「ニーズにあるイシュー」?
田中:例えば,「2階の洗濯機の音がうるさい」と言ってる1階の人と,「自分は音を出していない」という2階の人がいると,それはポジション(立場)からの発言なので,そこでいくら話をしても,矢印がまったく別の方向を向いたまま。でもお互いの子供同士は仲良くさせたいというのが,二人のニーズかもしれない。2人の共通部分やお互いのニーズがあるとしたら,いかにそのニーズ(要求)に寄ったイシュー(論点)を拾えるかで,メディエーターの技量が試される。ポジションは矢印がバラバラに向いているから,そこのイシューをいくら拾っても進まない。

ワタ:会議も一緒ですね。「うちの立場ではこれはできません」と言い合うのではなく,「お互いどうしたいか」という観点で話がきれば,普段とは違った会議になるのかもしれない。「ポジションではなく,ニーズにあるイシューを拾う」という意識を持って,人の発言を聴いたら,面白い分析ができそう。
ゆに:「ポジションか,ニーズか」を意識するだけでも,ゆっくり聴けるかもね。
②「つまり,こういうことが言いたいんですね」と伝え直す力
田中:最初の受付の段階で相談者に,「こういうことがおっしゃりたいんですね」と言葉を返したときに「そう!それそれ!」とうれしそうに言われると,私もすごく嬉しい。「そうそう,それが言いたかった。よくぞ聴いてくれた」「いままで話を聴いてくれる人がいなくて,やっとここで会えました」と言われる。
奥山:私は,「この人が言いたいのは,(訳出する方の言語で言うと)このフレーズだ!」と,パシッとパズルのピースがはまるときの,「ビンゴ!」という感覚がうれしい(笑)
田中:分かります。その「ビンゴ!」の感覚。相手から「それビンゴ,ビンゴ!」「あなたが言ってくれたのは自分にとってビンゴ」と言われるときは,よかったと思う。
ゆに:3人とも共通して,仕事の中で「あなたは本当は,こういうことがおっしゃりたいんですね」をやっていますよね。聴いてもらっている人が本当に欲しいのは,その「ビンゴ!」なのかも。
奥山:そうですね。聴いてもらった次に「言ってもらいたい」というのはありますよね。
ゆに:グラフィックフィードバック(解説)すると必ずワーって拍手が出るんですね。いつも「ナンダナンダ?この拍手は?」と。愚痴や不満のようなネガティブな絵ほど参加者にウケたりする。きっとそれも,「ビンゴ!ビンゴ!」の拍手だったのかも。
田中:それが,「本当は言いたかった」こと,
ゆに:かもしれないですよね。
田中:あ!「言いたかったこと」というか,「聴いてほしかったこと」。
奥山:「聴いてほしかったこと」!うんうん。
ゆに:なるほどね!「本当に聴いてほしいこと」か。
③「本当に聴いてほしいこと」を探し続ける力
田中:あ-!自分で言ってびっくりしました。その人が「言いたいこと」と「本当に聴いてほしいこと」は違うのかもしれない。
奥山:子供が小学生の頃,帰って来るなり「あれも嫌だ,これも嫌だ」ってひどく当たり散らしたことがあって,よくよく聴いてみると,最初に口にしたこととは全然関係ないことだったんですね。学校で友達ともめたとか,飼ってた動物が死んじゃったとか。
ワタ:確かにいくら自分が話したいことを話してもスッキリしないことがある。逆に,「本当に聴いてほしいこと」を相手に指摘されて自覚するときがあります。
ゆに:「本当に聴いてほしいこと」って本人も自覚してないこと多いですよね。何かを言わんとしてるんだけど,ぐちゃぐちゃもつれていて,その人自身も,「本当に聴いてほしいこと」はわかっていない。

ワタ:研修で教えてくれる,相手の話を聞いて自分の言葉で言い換えるという聞く技術があるけど,自分が話している内容を相手の言葉で言い換えられても何かスッキリしないことがあります。
田中:興味本位でこっちが知りたいことを聞いてしまった時には,やはり話し手から反発的な感情が表されることがあると思います。例えば,洗濯機の音についてメディエーターが先走ってした質問で,「なんでその時間に洗濯するの?」と聞いたとして。その質問が,当事者がその時に「本当に聴いてほしい」または「応えたい」ことなら,その場は自然に和み前に進みます。
ワタ:相手が話しているときに,「言いたいことはなんだろう?」と思って聴いていても,その奥にある「相手も自覚できてない本当に聴いて欲しいこと」までは意識して耳を傾けたことはなかったな。でも,この「聴いてほしいことを引き出す」というのは,仕事だけに限らず,人が生きていく中で,結構,重要なことだと思うんです。
田中:恐らく「言いたいこと」の多くは「ポジション(立場)」で,「本当に聴いてほしいこと」が「ニーズ」。立場はすごい主張したい。でも,本当は「聴いてほしい」ニーズが隠れてる。
奥山:そうかそうか。そうですね!
田中:すごい整理ができました(笑)。


