モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第42回 [未来からの問い]を忘れずに!ネガティブ議論で当事者意識に火をつける安全設計(1)

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こんにちは。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこです。

チームが一気に未来志向に変身するには,とにかく「情報」よりも「感情」を共有することがどんな議論よりも近道です。しかも「感情」の中でも「ネガティブな気持ち」を共有することが大事なポイント。

ただ「ネガティブな気持ち」を共有するときには「事前の安全設計」だけは忘れずにという話を伝えたのが前回第41回でした。では実際,各社,各プロジェクトでは「感情」を共有する機会をどう「安全設計」して準備しているのでしょうか。

「事前の安全設計」とは次の2つでした。

  1. 参加者の目線は常に未来に向けさせること(見失いやすいので話し合いの最中,何度も)
  2. 参加者の抱えているネガティブな気持ちを吐き出し切らせてあげること

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今回は1.について紹介します。わたし自身がグラフィックファシリテーションの現場で,いつも事前に主催者の方に「これだけは」必ずお願いしていることです(2.は次回紹介します)⁠

1)[未来からの問い]を立てる,を忘れずに!

「参加者の目線を常に未来に向けさせる」ために,具体的にすることはただ1つ。⁠参加者の目線が常に未来に向けられる」よう,会議全体に[未来からの問い]を立てることです。

話し合いでは「ネガティブな気持ち」まで吐き出してもらいたい。けれどそれはあくまでも企画する側の「ウラ設計」の話。オモテ向きにはポジティブに「未来に目線を向けて」会議を組み立ていきます。

安全設計のために立てたい[問い]とは,グループワークや個人ワークの1つに立てる小さな[問い]とは違います。会議全体を包括し導くもの。会議の最初から最後まで,そして会議が終わった後もずっと参加者に「未来から問い続けたい」ほどの大きな問い。絵にするとこんなイメージです。

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つまり,話し合いの方向性の目印として,未来方向に[問い]を書いた「旗」を立てるイメージです。会議室の中ではなく,会議室の外。未来へ続く道の上に立てるという位置関係です。すぐに答えが出ないぐらい大きな[問い]がいい。その「旗」に書かれる内容は,たとえばこのような言葉です。

  • 「だれもが集いたくなる100年続く街づくりとは」
  • 「子どもたちの30年後のために『ほっとけない!』こと」
  • 「2020年 社員がワクワク働くグローバル企業を目指して」
  • 「5年後,10年後,年をとっても安心して暮らしたい日本とは」etc.

パッと見たところ,ピンとこないかもしれません。⁠どこが重要なの?」と思われるかもしれません。けれど,これら[未来からの問い]を掲げたその会社やプロジェクトのメンバーにとっては,とても意味のある言葉,一文となっています。

会議やプロジェクトの本来のテーマが「中長期経営計画」「営業戦略」⁠⁠システム開発」⁠管理職研修」⁠地域活性」⁠町興し」⁠新商品開発」であっても,必ず別に立ててほしいのがこの[未来からの問い]です。

2)ほとんどの会議には[未来からの問い]がない

[未来からの問い]は,大きく太い文字で,当日のスライド資料や配布資料の1枚目,または企画書やタイムテーブルの一番上にも必ず書いてもらっています。それぐらい,その日一日の議論の行方を握る,大事な言葉です。

しかし,ほとんどの会議で事前に,企画担当者から手渡される資料に[未来からの問い]はまず見つかりません。

たいてい書いてあるのは,⁠ビジョン策定プロジェクト」⁠中長期計画策定合宿」⁠イノベーション会議」⁠管理職研修」⁠組織横断オフサイトミーティング」のような文字です。しかし,これらは特に何も[問い]かけてきません。単なる会議の名前です。絵に描くなら「会議室の表札」といったところ。未来に目線は向きません。

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「本日のテーマ」⁠アジェンダ」⁠議題」⁠今日のゴール」⁠アウトプット」などの会議用語も書いてあります。でもそれもまた,そのゴールイメージはそんな先の「未来」ということはまずなく,⁠会議終了時点」の話し合いのありたい状態や結論であることがほとんどです。絵に描くなら,⁠会議室の出口」を目指しているという感じでしょうか。

このように,⁠未来からの問い]を立てないまま,会議を進めていくと,みんなの目線が会議室の外に向くことはなく,会議室の中ばかり見ている内向きな状態になります。

3)[未来からの問い]がないとどうなるか―1

身近な会議を例に,⁠未来からの問い]がない会議を考えてみましょう。次は,会議資料の表題の一例です。⁠未来からの問い]はありません。

  • 「議題:新生○○事業部 4組織の横連携について」(a)
  • 「本日のテーマ:ビッグデータ活用推進 全社プロジェクト」(b)

[未来からの問い]がないと,課題に居続ける

まず[未来からの問い]がないと,目の前の課題や方法論に議論が集中します。上記の例では,こんな会話から抜け出せなくなりました。

  • 「連携するってどうやって?」⁠週1回,とりあえず代表者が集まりますか」⁠何を話すの?」⁠webで情報共有する?」(a)
  • 「ビッグデータの活用が進まない理由は?」⁠他社はどうやってるの?」⁠うまく使えって…どうやって?」(b)

同時に「だれがやる」⁠お金もない」⁠時間もない」⁠無理だ」⁠難しい」…と「can'tの壁」⁠前回:第41回で紹介,下の絵参照)を乗り越えられない発言も聴こえてきました。新しいものを生み出すはずの議論も,その多くは「課題に居続けるのが大好き」の状態へ。そのまま,特にコレといったものも決まらない,モヤモヤしたまま会議は終了しました。

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[未来からの問い]があると,議論が未来最短距離を進める

強い決め手に欠けるのは明らかに「手段」「目的」になっているからでした。多くの話し合いの現場で,わたしたちは日々「何のために」話し合っているのかを見失っています。会議の最中によくこういった声も聴こえてきます。

  • 「ところで今,我々はどこに向かって議論しているんだっけ?」
  • 「どうしてこの話をしているんだっけ?」

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話し合いが迷走すること自体は,悪いとは思いません。よく見える「今」「過去」に目が向きやすいのも自然です。未来を描く難しさはどこも同じです。でも,だからこそ「何のために」我々は議論しているのかという原点を思い出すことが,とても大事になってきます。

  • 「何のために」連携したいのか(a)
  • 「何のために」ビッグデータを活用したいのか(b)

我々は「何のために」あえて時間を割いて,仲間と集まって話し合っているのか。それは大きな視点でとらえれば「未来のため」⁠それも明るい未来のためです。

それならば[未来]から何度も[問い]かけて,みんなの目線を常に[未来]に向けさることが,結果として近道になります。

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[未来]に目を向けるキッカケを何回もつくるうちに,議論が迷走しても自分たちで軌道修正できるようになる。その積み重ねが,⁠未来]に最短距離で進めるようにしていきます。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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