無関心な現場で始める業務改善

第10回 「giveの精神」だけでは,業務改善は進まない~タスク分解とKPIの設定~

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やってあげる「give」の精神は根本的解決にはならない

「give and take」という言葉がありますが,業務改善においては,相手のことを考え過ぎて「giveだけの精神」に陥ることがあります。特に,現場に負担をかけさせたくないというもっともらしい理由をかざして,⁠我々はここまでやってあげているんだ」的な恩着せがましい解決策が見られることもあります。

これは絶対にNGで,根本的な解決になりません。

たとえば,ある期日までにデータを揃えておかなければならない業務があったとしましょう。元のデータは現場にあります。そのデータをあなたは現場から送ってもらい,データを加工して上司に報告をする業務をイメージしてみましょう。

元データは,ある部門は手書きでFAXしてくる。それも汚い字で,細かい部分はつぶれていて毎回,読み間違いが何ヵ所かある。別の部門は表計算ソフトで,メールに添付して送ってくる。その隣の部門は,メールに添付はせずに,メール本文にひたすら数字を打ち込んでくる。このようなバラバラな書式で送られてくることに業を煮やしたあなたは,書式を統一し,伝達手段も一本化しようと試みる。しかし,現場からは「めんどくさい」との声が出て,結局,元のバラバラ書式に戻ってしまう。

時間の概念も加えてみましょう。あなたはデータを加工する時間が必要なので,毎回,締切日に余裕をもって現場に依頼をしているものの,いつもギリギリになってからデータが揃い始めて,前日は深夜残業になってしまう。現場が忙しいことをわかっているものの,督促メールや電話を入れることになり,⁠こっちはそれどころじゃないんだ!」と一蹴されてしまう。

このような場合,解決策に「書式を統一する」⁠締切期日の1週間前と3日前と前日にリマインダーメールを出す」というものが出されがちです。現場はリマインダーメールが届いてから初めて動き出すので,結局何も変わらない結果となります。

「giveの精神」だけでは,業務改善は進まないことを頭の片隅に入れておきましょう!

“困るプロセス”を解決策検討時にどこまで考えられるか?

要は,⁠現場の負担にならないように」という発想だと,全てあなたが背負込む解決策しか出てこなくなります。前述の言い回しを変えてみます。⁠書式を揃えてあげる」⁠ご丁寧に3回も期日を知らせてくれる」⁠何でもかんでも「やってあげる」「giveの精神」では,現場もつけあがるだけなので,改善にならないばかりか,あなた自身の仕事がまったく減りません。増えるのは現場に対する不満とストレスだけです。

ここで考えなければならないことは,第2回でお話した⁠困るプロセス⁠をいかに仕掛けるかです。

考えるポイントは至ってシンプルです。期日どおりに,決まった書式で出さないと現場も痛い目を見るぞと。別に脅すわけではないですが,現場が不利益を被るとわかったり,いい加減に出していたデータの使い道が,実は上司から経営者にレポートされるものであったりすることをきちんと現場に伝えてあげると,⁠やらざるを得なく」なります。

「giveの精神」はいったん横に置いておき,「やらざるを得なくするためにはどうすればよいか?」という視点で,今一度,解決策を考えるとまったく違った策が出てくるものです。

解決策からタスク分解

解決策が出てきたら,これを細かなタスクに分解をします。

簡単な解決策の例として,⁠漏れ・ダブりのない受注書を作成する」を考えましょう。おそらく,ここの会社の問題は,受注書に不備があり,そのまま発送をしてしまい,お客様に違う商品が届いたり,届け先がわからない,などかもしれません。

では,⁠漏れ・ダブりのない受注書を作成する」という解決策を,あなたはどのように作りますか?これが次に考える「タスク分解」になります。

完璧な受注書ができればいいはずですが,完璧な受注書とは何かを決めないといけないですね。でも,そんなものがわかっていたら,誰も苦労しないわけです。何から改善で着手をしようかとなった場合,最初から完璧な受注書など作れるわけがないので,解決策を実行する際に,具体的なタスクに分解することが必要となります。

図2 解決策とタスク分解

図2 解決策とタスク分解

タスクへバラす意味と意義

解決策をタスクにバラす意義は,「具体的に,何を行うか」と明確にすることです。

仮に,表1で解決策のレベルで止めてしまうと,⁠漏れ・ダブりのない受注書とは何か?」⁠どうやって作るのか?」がわからなくなります。

解決策の言い回しも重要です。⁠漏れ・ダブりのない受注書を作成する』ではなく,⁠漏れ・ダブりのない受注書を検討する』と書かれてしまうと,具体性が乏しくなり,検討した結果,何を行うことが改善になるのか不明確になります。特に「検討する」という単語は曲者なので,要注意です。

タスクをバラす意義は以下のとおりです。

  • (1)具体的な改善作業項目が第三者が見てもわかる
  • (2)個別の工数の見積が可能となり,リソース配分がやりやすい
  • (3)他の人に改善作業そのものを依頼することができる

などです。

改善指標(KPI)の物差しはシンプルに!

タスクのバラしが済んだら,改善指標であるKPIを定めます。このKPIは改善の効果測定に欠かせない物差しです。

物差しとして,何を用いるかはケースバイケースです。確実に言えることは,物差しはシンプルにすることです。元々,無関心であった現場にも,このころになると徐々に当事者意識が芽生え始めていますが,まだまだ被害者意識もあり,余計なことに巻き込まれたと感じている人もいます。そこに,改善効果を測るために難解な指標を設定してしまうと,その測定やデータの二次加工に時間ばかりかかってしまいます。

「KPIの物差しはシンプルに!」が鉄則です。

次回は,KPI設定の続きと,優先順位の付け方,リソースの配分,メンバーアサイン,改善テーマとチーム編成についてお話します。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/

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