12月8日にRed HatおよびCentOSプロジェクトが発表した事実上の"CentOSプロジェクト終了宣言"は、Linux/オープンソース関係者に大きな衝撃をもたらし、現在もプロジェクトの内外では動揺が続いている。
CentOSの現時点での最新バージョンは「Red Hat Enterprise Linux 8.2」をリビルドした「CentOS 8.2 2004」、RHEL 7系では「CentOS 7.9 2009」だが、Red Hatのアナウンスによれば2021年末までにCentOS 8の開発およびメンテナンスを終了、CentOS 7に関してはRHEL 7のライフサイクルポリシーにしたがって2024年までサポートを継続する見込みだ(RHEL 7系はRHEL 7.9が最後のバージョンであるためCentOSにも適用される)。
- CentOS Stream: Building an innovative future for enterprise Linux -RED HAT BLOG
- CentOS Project shifts focus to CentOS Stream -Blog.centos.org
CentOS Linuxは今後、Red HatがFedoraとRHELの中間プロダクト(midstream)として位置づけている「CentOS Stream」に統合されることになっているが、RHELのフリー互換ディストリビューションがなくなってしまうことへのユーザ/開発者からの抵抗は強く、Red Hat側が「CentOS Streamは現在の(CentOS Linuxの)ワークロードの95%をカバーするので問題ない」と説明しているものの、納得できていないユーザは少なくない。
こうしたプロジェクト内外からの反発に対し、CentOSプロジェクト創設時からのボードメンバーで、Fedoraプロジェクトの初期メンバーでもあるRed HatのKarsten Wadeが「CentOSプラットフォームをめぐるニーズのバランス(Balancing the needs around the CentOS platform)」と題したブログを投稿、今回の決定についての理解を求めている。
- Balancing the needs around the CentOS platform -Blog.centos.org
WadeはRed Hatが商用製品のRHELとコミュニティベースのFedoraにRed Hat Linuxを分離した2003年にさかのぼり、同社が長い間に渡ってビジネスとオープンソースのバランスを取る努力をしてきたことを強調、今回のCentOSのCentOS Streamへの統合に関しても、現在FedoraとRHELの間で拡大しつつあるギャップを埋め、「CentOSをただのRHELのダウンストリームとしての地位からRHELのアップストリームへとシフトする」ための施策だとしている。
しかしCentOSユーザの間からは「我々はCentOS Streamを否定しているわけではない。今回の決定(CentOSの事実上のEOL)とCentOS Streamはまったく別問題だ」「今回の決定は急すぎる。RHEL 8の全ライフサイクルをカバーするはずだったのでは」など、Red Hat側の説明に一貫性がないと批判する声も上がっている。オープンソース企業として創立されて以来、ビジネスとオープンソースの両立こそがRed Hatの競争優位性として評価されてきたが、CentOSに関する方針変更はその優位性に少なからぬ影響を与えることになるのかもしれない。