Ubuntu Weekly Topics

2012年4月6日号MAAS(Metal as a Service)プロジェクトの公開・日本語Remixのリリース予定・Ubuntu StudioのLTS化・FCM#59・UWN#259

12.04の開発

12.04はBeta2から最終版へのスパートにあります。大量のUIFe(User Interface Freeze Exception)等の風物詩を見せつつ、一方ではUbuntu StudioがLTS(ただし3年間)になるという快挙を成し遂げました。

また、⁠リリース後」に利用されるproposedリポジトリも作成されリリースまで間もなく、という雰囲気をまとい始めています。

『MAAS』の公表

1月頃から開発が始まっていた12.04の隠し球、⁠MAAS」⁠Metal as a Service)目を覚ましました。MaaSは、その名の通り「物理マシンをクラウドサービス的なインターフェースで使う」ためのソフトウェアです[1]⁠。コアにあたる部分はCobblerで、ここに追加のインターフェースが加わったものです。

基本的には、Amazon Web Services(のEC2)のような形で、数個のコマンドを実行するだけで「OSインストール済み」の環境を準備できるもの、というものです。基本的な原理はWeekly RecipeのUbuntuのネットワークインストール環境にPreseedingを組み合わせたようなもの、と理解しておけばよいでしょう。

開発そのものは現在も続けられており、12.04段階では不完全なものかもしれませんが、Jujuとあわせて今後が楽しみなプロダクトです。

Kernel Freeze

12.04のカーネルがフリーズされ、ほぼすべての部品要素が出揃いました。あとは本当に品質を高めるための作業だけです(Canonical関連の隠し玉の可能性は否定しきれません⁠⁠。これに伴い、以降の12.04のカーネルへの修正はリリース後に持ち越されます。

Rebuild test

Ubuntuの開発終盤の名物、Rebuild test(既存のすべてのパッケージを「今のUbuntu上でリビルドできるか」をテストする作業)も行われています[2]⁠。例によって相当数のFTBFSが生じていますので、修正して開発に貢献するチャンスです。

日本語Remixのリリース予定

12.04のBeta2リリース・カーネルフリーズが行われたため、そろそろ日本語Remixの季節です。12.04フェーズの日本語Remixは通例通り、以下の形式を予定しています。

  • Beta2をもとにしたテスト版(作業中)
  • リリース版(12.04リリース後に作業開始)

リリースアナウンス等はubuntu-jpメーリングリストで行う予定です。

Full Circle Magazine #59

Ubuntuに関する記事を集めた月刊のWebマガジン『Full Circle Magazine』59号がリリースされています。

主な内容は次の通りです。

  • コマンドライン操作:Androidへsshdを入れてsshfsでマウントしたり、bashのプロンプトの変更とvimの設定を行います。
  • How-To: Pythonによるプログラミング入門、第39回。一種のGUIファイラーを作っていきます。
  • How-To: LibreOffice入門、第13回。Calcの使い方、とくに複数タブや画面の分割方法を学びます。
  • How-To: USBメモリにLinuxを納めて持ち歩く方法。
  • How-To: Virtualbox付属のコマンドを使って、仮想マシンで利用する仮想ディスクのリサイズを行います。
  • How-To: LibreOffice Drawを用いてグリーティングカードを作成する方法。
  • Foremostを使って、⁠消してしまったファイル」を取りもどす方法。一種のファイルシステムフォレンジック手法を学びます。
  • 各種デスクトップ環境におけるタスクマネージャについて。
  • などなど。

UWN#259

Ubuntu Weekly Newsletter #259がリリースされています。

その他のニュース

  • Amazon EC2上にある仮想マシンからVNCでデスクトップ接続する方法。ここではkubuntu-desktopを導入していますが、ubuntu-desktop等でも同様に動作させることができるでしょう。ちょっとしたテストマシンとして数ドルで利用できます。
  • Ubuntu 12.04のブート速度を、いろいろなハードウェアで比較したベンチマーク⁠最近のマシン」では10.04よりも高速化されるものの、遅めの旧世代マシンではどうしても遅くなってしまう、といった傾向が見て取れます。
  • 12.04 + arm-HFを前提にした、カーネルのクロスコンパイル環境の簡単な構築方法
  • ローカルネットワークにリポジトリを構成して利用する方法。
  • VirtualBox 4.1.12がリリースされています。ただし、大変しょうもない問題があるので、少し気をつけた方がよいでしょう。
  • GNOME 3.4がリリースされテスト用ISOが利用できるようになっています。Unityが気に入らない場合の選択肢のひとつとして、触ってみてはいかがでしょうか。
  • ATmega1284P上でUbuntuを動かしているデモ。ATmega1284PはAtmelの超高性能RISCプロセッサ[3]で、この上にARMのエミュレータを書いて、その上でUbuntuを動かしています。動画で確認したい方はこちら。なお、フルに見るには3.5時間かかります。

今週のセキュリティアップデート

usn-1412-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-March/001647.html
  • Ubuntu 11.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-3347を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1413-1:Novaのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-March/001648.html
  • Ubuntu 11.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-1585を修正します。
  • Nova APIの実行結果をログに保存する機能を悪用して、ユーザーがストレージの枯渇を発生させることができます。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1197-8:ca-certificates-javaの再アップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-March/001649.html
  • Ubuntu 11.10用のアップデータがリリースされています。usn-1197-7で発生した、11.04から11.10へのアップグレードが失敗する問題を修正します。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1414-1:Aptdaemonのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001650.html
  • Ubuntu 11.10・11.04用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-0944を修正します。
  • aptdaemon経由でパッケージ操作を行う際、認証されていないパッケージに対する警告がシミュレーション時にしか表示されないため、警告を迂回することが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1415-1:Linux kernel (Marvell DOVE)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001651.html
  • Ubuntu 10.10のMarvell DOVE環境向けアップデータがリリースされています。CVE-2012-0879を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1400-4:Thunderbirdの再アップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001652.html
  • Ubuntu 11.10用の再アップデートです。usn-1400-3で発生したThunderbirdがフリーズする問題を解決します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、Thunderbirdを再起動してください。

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