Ubuntu Weekly Topics

2012年6月1日号UDS-Q(4)・genericカーネルの統合・Dellの“Copper”・FCM#61・UWT#267

UDS-Q(4)

前回に引き続き、今回もUDS-Qで話し合われたアイデアについて見ていきましょう。今回は「Desktop」カテゴリ(の一部)と、⁠UDS後の動き」を中心にお届けします。

  • desktop-q-deprecate-language-selector:Language Selectorを作り直し、もっと分かりやすく言語の設定が行えるようにしよう。GNOMEのものの流用でなく、Ubuntu独自のものを作成しよう。
  • desktop-q-awareness-of-userconfigs-in-upgrade:xorg.confのような、⁠アップグレード時にうかつに残っていると、思わぬ副作用を引き起こす設定ファイル」をきちんと処置できるようにしよう。アップグレード時に新しい設定ファイルを投下する必要があるのなら、既存の設定ファイルと適切にマージできるようにしなくてはならない。こうした問題の起きうる設定ファイルのリストを作成し、適切なアプローチを整理しよう。
  • desktop-q-tv-control:Ubuntu TVはローカルネットワークから制御できるべきだ。どのような方法論が適切か検討してみよう。
  • desktop-q-gnome-plans-review:Desktop環境において、GNOMEのコンポーネントをどのように扱うのが適切か検討してみよう。

migration-assistantの除去

migration-assistantは、Ubuntuの「Windowsの代替」としての側面を色濃く表すユーティリティです。これは、Ubuntuのインストール時にWindows環境からブックマークや壁紙等の設定をインポートします。

しかし、12.04世代ではいくつかの存在意義を脅かすバグに悩まされており、12.10での継続が疑問視されている状態でした。⁠誰か」がこれを引き受けるのであれば継続できる、という状況ではあったものの、残念ながら引き受け手はなく、次の決定が行われました

  • 12.10世代では、migration-assitantはuniverseに落とす。また、Desktop CDには含めない。
  • migration-assistantは、12.04.1以降、12.04系のDesktop CDからも削除する。

12.10でもmigraiton-assistantを個別にインストールして利用することは可能になるはずですが、壁紙程度であれば手作業の方が手軽な可能性もあり、Ubuntuのインストーラーは「Windowsのかわり」としてのあり方を捨てて、これまでと少しだけ違う位置に立つことになります。

12.10のkernel flavour

UDS後の議論を経て、12.10のカーネルフレーバーの方向性がほぼ決定しました。主な内容は次の通りです。

  • i386環境の「generic」カーネル(PAE非対応)は12.10ではサポートされない。
  • i386環境の「generic-pae」カーネルは、⁠generic」⁠PAE対応)カーネルにリネームする。
  • 「virtual」フレーバーは「generic」フレーバーに統合する。

12.04時点でアナウンス済みの事項ではありますが、今後は「generic」カーネル一本になる、ということが最大の特徴でしょう。PAE非対応の環境は12.04を5年間使い(ただし12.04のクリーンインストールはできないので11.10を入れてアップグレードして12.04にする⁠⁠、その後はUbuntu以外のディストリビューション(おそらくはDebian)を使うことになるはずです。

なお、これに伴ってメタパッケージも整理される予定です。

Dell “Copper”

Dellから「ARMを搭載したMicroServer」ソリューションが発表されました。⁠MicroServer」はIntelが中心になって提唱しているキーワードで、⁠小型かつ低消費電力のサーバーを大量に並べられるようにし、ブレードサーバー以上の密度を実現するサーバーハードウェア」を意味します[1]⁠。

DellがリリースしたのはPowerEdge C5000のARM搭載モデル、コードネーム⁠Copper⁠です。搭載SoCはMarvell ARMADA XPの4コアモデルで、1SoCにつき1スロットのDIMM・1本のGbEと1チャネルのSATA HDDが利用可能です。HDDは3.5inchモデルが利用できるようになっています。

ARMADA XPはUbuntu 12.04・12.10がサポートするARM SoCのひとつで、すでにカーネルパッケージはリポジトリに準備されており、そう遠くない将来に「Ubuntuが動くARMサーバー」としてリリースされることはほぼ確実と言える状況です。

なお、PowerEdge C5000そのものはすでにIntelアーキテクチャのCPUを搭載したモデル(Intel XeonモデルとAMD Phenom/Athlon搭載モデルの両系統)が提供されています。ARM版は「1サーバーブレードにつき4つのSoC」⁠=4つのシステム)という構成になっており、システム密度で考えると単純に4倍となります。ただし、1SoCあたりの性能は「いまどきのタブレットに毛が生えたもの」程度で、CPU性能を要求するタスクには不向きです。とはいえ、⁠CPUを要求しないが大量のシステム密度(あるいはHDDやGbEの本数・メモリ帯域)を要求する分野⁠⁠、たとえばHTTPキャッシュサーバーや簡易なエッジノード・特定分野の科学技術計算などには非常に向いており、なんらかの形で実用が開始されるはずです[2]⁠。

ちなみに、ライバルのはずのCalxedaの準公式blogが全力投球で取り上げており、⁠ARMサーバー分野はまだ走りだしたばかりである」ということがありありと分かる状態になっています。

構成上どうしてもラックマウントが前提となるため、家庭内サーバー等とは若干異なる方向性のデバイスではありますが、こうしたハードウェアがコモディティになることで、廉価かつ低消費電力で、しかし家族単位で利用するには十分な性能のサーバー、というものが提供されるようになるかもしれません。

なお、ARMサーバーで利用できるソフトウェアについては、Calxedaの準公式blogに掲載された「うちのSoCではこうしたソフトウェアをサポートします」という一覧が掲載されているので、これを確認するのが良さそうです(ユーザランドは基本的にARMv7 or ARMv8で統一されています⁠⁠。ApacheやTomcat・MySQLやPostgresにPerl・Python・RubyなどのLAMPスタック的なソフトウェアやHadoop方面などの「わかりやすい」ものに加えて、CondorやMPI・FortranなどのHPC分野で要求されるソフトウェアが準備されています。

Full Circle Magazine #61

Ubuntuを中心にしたWebマガジン、61号がリリースされています。

UWN#267

Ubuntu Weekly Newsletter #267がリリースされています。

その他のニュース

  • AWS/EC2を用いてArchive Rebuildサーバー群を作った話。
  • AWSを扱うためのツールを、Ubuntuパッケージを用いてセットアップする方法
  • AWS/EC2上にLXCを用いてOpen vSwitch環境を構築する話。
  • AWS/EC2上に準備された、ARMの擬似ネイティブ環境(qemu-armを用いた仮想環境)が準備された話。補足はこちら
  • KVMサーバーを構築する話。
  • 「Jupiter」ユーティリティの。Jupiterは画面の解像度や回転・省電力モードなどを簡単に切り替えられるユーティリティです。
  • ecryptfsの暗号化パスワードを「安全に」保管できる「zEscrow」サービスの話。

今週のセキュリティアップデート

usn-1450-1:Net-SNMP のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-May/001691.html
  • Ubuntu 12.04 LTS・11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-2141を修正します。
  • SNMPdに対して外部からDoSが可能な問題がありました。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1451-1:OpenSSL のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-May/001692.html
  • Ubuntu 12.04 LTS・11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-0884, CVE-2012-2333を修正します。
  • CMS(Cryptographic Message Syntax)とPKCS#7の実装上の問題により、一部の秘匿されるべき情報が露出する問題と、TLS1.1・1.2・DTLS(CBC暗号化)を利用している際に生じるDoSへの対応です。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1452-1:Linux kernel のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-May/001693.html
  • Ubuntu 11.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-1601, CVE-2012-2123を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1453-1:Linux kernel (EC2) のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-May/001694.html
  • Ubuntu 10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-4086, CVE-2012-1601, CVE-2012-2123を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1454-1:Linux kernel のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-May/001695.html
  • Ubuntu 8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-4086を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
usn-1455-1:Linux kernel (Oneiric backport) のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-May/001696.html
  • Ubuntu 10.04 LTS用の3.0カーネルのアップデータがリリースされています。CVE-2012-1601, CVE-2012-2123を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

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