Ubuntu Weekly Topics

2013年12月13日号Ubuntu Touchの製品化パートナー・12.10 => 13.10へのアップデート・unity-control-center・Recipe&Topics300回記念イベント・UWN#346

Ubuntu Touchの製品化パートナー

Ubuntu Touchの製品化に向けて、ひとつの動きがありました。⁠Ubuntu Touch(Ubuntu Phone)を搭載したマートフォンの提供に向け、初めての契約を締結した」CNETが報じています。これはCNETがMark Shuttleworthへの取材によって明らかにしたもので、⁠Ubuntu Touchを搭載したハイエンドスマートフォンが2014年に提供される予定」であることもあわせて報じられています。

これはUbuntu Touchにとっては非常に大きな一歩にあたります。これまでUbuntu Touchがアライアンスを結んでいるのはあくまで通信キャリアでしかなく、⁠うちのモバイルネットワークに接続できるようなデバイスを出すかもしれないし出さないかもしれないねー」と言っている通信キャリアに対して、具体的な端末を提案できるベンダーが現れることを意味します。同時に、一般ユーザーにとっては「キャリアと契約なく物が買える可能性がある」ということでもあります。もちろん、ベンダーの思惑次第ではあくまで通信キャリア向けの製品となってしまい、SIMカードとセットでなければ買えない、という展開になる可能性はあるので「買える」と断言するには時期尚早ですが、これまでの状態に比べるとかなり大きな変化となります。

現状ではCNETの取材に基づくものしか情報がなく、また、具体的な企業名も公表されていない状態で不透明さの残る状態ではありますが、これがもう一歩進み、Ubuntu Touch搭載デバイスのプレスリリースまでたどり着くと、個人輸入(と電波暗室や電波暗箱)を駆使することで日本でもUbuntu Phoneを無理やり使うことが可能になるかもしれません[1]⁠。

12.10 => 13.10へのアップデート

Ubuntu 13.04のリリース当時(つまり2013年4月)に、⁠LTSではない通常リリースについては、サポート期間を9ヶ月とする」という決定が下されました。このときから分かっていたことではあるのですが、この決定により、すこしだけ厄介な問題が生じています。

それは、⁠まだサポート期間が18ヶ月だった頃にリリースされた12.10よりも、13.04の方が先にサポートが終了する」という状態になっていることです。12.10(サポート期間18ヶ月)は2014年4月に、13.04(サポート期間9ヶ月)は2014年1月にサポートが終了するためです。これにより約2ヶ月のあいだ、⁠12.10をサポート期間ぎりぎりまで使っているユーザーは、わざわざサポート期限が切れている13.04に一度アップグレードしてから、あらためて13.10に更新しないといけない」という問題が発生します。Ubuntuのアップグレードは「待っているだけ」タイプの進み方はするものの時間がかかる処理ですし、相当量のアップデータのダウンロードが行われる・裏ではHDDがガリガリいっているため、あまり連続して何度も行いたいものではありません。

この問題を解決するため、12.10から13.10へアップグレードできるようにすべきというバグが起票され、かなりの高速で作業が進められています。12.10側・13.10側それぞれを弄る必要があるため作業はまだ完了していませんが、担当者がCanonicalのエンジニアであること、また、あらかじめある程度の準備が行われてから作業が進められていることから、早々に処置が完了すると見られます。12.10をまだ使っているユーザーにとっては嬉しい変更になりそうです。

unity-control-center

Unity 7ベースのデスクトップ環境のために、unity-control-centerと呼ばれるソフトウェアが準備されることになりました。Unity 7ベースのデスクトップ(≒14.04リリース時点までのUbuntu Desktop)「システム設定」インターフェースを提供するためのソフトウェアです。gnome-control-centerをフォークし、独自パッチを適用することでコードベースが整えられています。

unity-control-centerの意義を把握するためには、⁠システム設定」についていくらかの知識が必要です。

まず、UbuntuのUnity環境は「GNOMEのベース環境の上に、フロントエンドとしてUnityをかぶせる」という設計で構築されています。この関係で、これまでの「システム設定」ツールはgnome-control-centerを流用する形で実現されています。しかしながらUnity環境に合わせ込むためには大量のパッチを投入しており、メンテナンスコストが肥大する結果となっている状態にあります。とはいえ、これによりUbuntu GNOME(=GNOME3)と通常のUbuntu(=Unity)それぞれでgnome-control-centerを共有できるようになっています。

しかし、このパッチは、14.10世代においてMirベースのUnity 8に置き換わるタイミングでメンテナンスされなくなります。Unity 8は自前の設定インターフェースを持っており(そもそもQtベースなのでGNOMEやGTK依存の部分がほとんどなくなり⁠⁠、メンテナンスする必然性が失われるためです。gnome-control-centerはGNOMEの進化にあわせてコードベースが書き換えられていくものなので、⁠Unity 7で使うためにはgnome-control-centerの進化にあわせて適切にパッチを入れる必要があるのに、メンテナンスする人が誰もいない」という状態に陥る運命にあります。

このままでは「GNOME的にはgnome-control-centerを更新したいが、更新されるとUnity 7からは使えなくなる」という一種の二律背反に陥ってしまうため、⁠それならいっそのこと、gnome-control-centerをUnity専用にフォークしてしまおう」という発想で生まれたのがunity-control-centerです。

こうして避けられないネガティブそうな理由で開発されることになったunity-control-centerですが、現実的には負の要素だけではありません。大量のパッチを維持管理する都合上、なるべく少ない改造で済ましてきたこれまでに比べると、大ナタを振るうチャンスが増えたと考えることもできるからです。Unity 7がUnity 8に置き換えられることもあり、どこまでの変更が行われるかという意味ではやや不透明な部分はありますが、良い着地点であると言えそうです。

Ubuntu Weekly Recipe & Topics 300回記念イベント(兼13.10リリースパーティー)

2008年1月から続いている、本連載の姉妹連載Ubuntu Weekly Recipeが11月27日に300回を迎えました。本連載Ubuntu Weekly Topicsも今号で294回となり、もうすぐ300回を迎えます。

このことを記念し、かつ13.10リリースパーティーも兼ねたイベント「Ubuntu Weekly Recipe & Topics 300回記念イベント(兼13.10リリースパーティー⁠⁠」を12月21日に開催します。会場はグリー株式会社様に提供いただきました。

興味のある方はこちらから参加を申し込みください

イベント概要
名称Ubuntu Weekly Recipe & Topics 300回記念イベント(兼13.10リリースパーティー)
日時2013年12月21日(土)12:30~17:30
場所六本木ヒルズ森タワーグリー株式会社
(東京都東京都港区六本木6-10-1)
参加費無料
主催Ubuntu Japanese Team
協賛gihyo.jp(技術評論社)
公式サイトhttps://wiki.ubuntulinux.jp/Events/gihyojp-recipe-300
ハッシュタグ#ubuntujp

UWN#346

Ubuntu Weekly Newsletter #346がリリースされています。

その他のニュース

  • Kernelを「生きたまま」パッチする方法について検討したあげくに自分でrootkitを書いて、メモリ空間を書き換え可能にすることで実現したという話。
  • fwts(Firmware Test Suite⁠13.12.00がリリースされています。fwtsはUbuntuのサブプロジェクトの一つで、ACPIを始めとする「BIOSやUEFIに格納されているデータ」のたぐいが適切な状態にあるか、また、各種情報(たとえばUEFIのCSM(BIOS互換モジュール)や、ファンの回転情報・HDA Audioのjack情報・CPUのクロック周波数・PCIアドレスなどなど)が適切に取得できるかといった項目をテストできるツールです。
  • Geditをクラッシュさせる問題が修正されました。このバグはリリース前から発覚はしていたものの、いろいろな不運(同じような問題に遭遇した人があまりおらず、話題にならなかったこと&誰も「also affect me」を押さなかったのでNew Bug扱いのままだったこと&コアなユーザーはGeditをあまり使っていなかったこと)によって見落とされていたというものです。クラッシュ等、あきらかな問題を見つけた場合はなるべく他の人にも把握してもらうようにしましょう。

今週のセキュリティアップデート

usn-2048-1usn-2048-2:curlのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-December/002336.html
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-December/002337.html
  • Ubuntu 13.10・13.04・12.10・12.04 LTS・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-4545を修正します。
  • libcurlを通常とは異なる使い方をしている場合、CNやSAN nameの検証が正しく行われず、不正な証明書であっても正しいと解釈してしまう場合がありました。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
  • 備考:このアップデータの初回リリース時に、誤って--insecure(-k)オプションが機能しなくなっていました。
usn-2049-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-December/002338.html
  • Ubuntu 13.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-4270, CVE-2013-4299, CVE-2013-4343, CVE-2013-4350を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-2050-1:Linux kernel (OMAP4)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-December/002339.html
  • Ubuntu 13.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-0343, CVE-2013-2147, CVE-2013-2888, CVE-2013-2889, CVE-2013-2892, CVE-2013-2893, CVE-2013-2895, CVE-2013-2896, CVE-2013-2897, CVE-2013-2899, CVE-2013-4299, CVE-2013-4350, CVE-2013-4387, CVE-2013-4470を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-2051-1:GIMPのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2013-December/002340.html
  • Ubuntu 13.10・13.04・12.10・12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2013-1913, CVE-2013-1978を修正します。
  • GIMPがXWDファイルを開く際に、メモリ破壊を伴うクラッシュが発生することがありました。応用することにより任意のコードの実行が可能です。

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