Ubuntu Weekly Topics

Ubuntu 24.10(oracular)開発 / 仕様変更とQAの下ごしらえ⁠NativeEdgeへのUbuntuの採用

oracular(Ubuntu 24.10)の開発 / 仕様変更とQAの下ごしらえ

oracularの開発が開始された一方、現状としては大きな変更や新機能の投入はなく、全体的に「下地の整備」とでもいうべき作業が続けられています。

比較的特筆するべきものとしては、Quicktestという新ツールが登場している点です。これはQEMU仮想マシンをQuickemuを用いて生成し、さらにTesseract OCRによって画面を認識し、自動的なキー入力を行う(つまり、GUIアプリケーションのテストを自動化できる)というものです。行っていることそのものは比較的典型的なRPAに近いものですが、画面にあるアイテムをOCR的に認識し、あらかじめ指定されたキー入力を対話的に実施するという実装になっているため、テストそのものをメンテナンスしやすい(テキスト等で管理できる)という特徴があります。現状ではプロトタイプ的なものが示されただけで実際のリリースへの投入はまだ行われていないものの、Ubuntuのテストを効率化する意味で強力なツールに育つ可能性があります。

これとはまた別に、これまでKubuntuだけが利用していたQAツールであるKubuQAの更新が行われ、Ubuntuなどの他のフレーバーでも利用できるようになったことです。KubuQAは、⁠ISOイメージを元にVirtualPC仮想マシンを生成してテスト環境を生成してテスト可能にする」bashスクリプトで、⁠テストのためにデスクトップ環境をインストールする」という、繰り返し実施するべき作業を簡略化してくれるものです。Ubuntuのテストに参加したい、あるいは「古典的なシェルスクリプトによる自動化」を学習したい、といった場合には中身を見てみる価値があるでしょう。

また、Debianが利用するCI環境であるSalsaにおけるUbuntuへの対応(を、実現するための投票)への協力要請が行われたり、ubuntu-dev-toolsに含まれるubuntu-buildのnobleフェーズでの改良と、今後行う仕様変更についての意見招請が行われるといった、⁠足下を固める」ための作業が進められています。

Dell Technologies World 2024 / NativeEdgeへのUbuntuの採用

Dell Technologies World 2024へのCanonicalの出展が開示されています。DellとUbuntu/CanonicalというとSptnikに始まる「開発者向けノートPC」ラインを思い浮かべてしまいますが、Technologies Worldで登場するのはいわゆる「エンタープライズ」ライン、PowerFlex(LXDのストレージとして利用することもできます)NativeEdgeなどのDell製ハードウェアと、microCloudなどのUbuntu/Canonicalのソフトウェア製品を組み合わせた利用方法の紹介となっています。

注目するべきポイントとしては、⁠Uncover why Dell selected Ubuntu as the foundational OS for the NativeEdge platform」⁠DellがNativeEdgeプラットフォームの基盤OSとしてUbuntuを選んだ理由の公開)といった記述があることです。これは従来から存在するNativeEdge系プロダクト(Ubuntuが利用可能)がプロダクトラインとして継続されていることを示唆するものであり、DellのIoT関連製品でUbuntuが相応に存在感を持っているであろうことを示唆します。また、プレースホルダーとなる新たなページを見つけることもでき、着実にUbuntuが生息圏を広げていることが言えそうです。

その他のニュース

  • GitHub-hosted runnersの24.04 LTSベータ版がリリースされています。各種ツールチェインやコンパイラ、ランタイムの変更についてはReadmeを参照してください。
  • 24.04 LTSのリリースを記念した、オフラインミーティング24.06の開催が予定されています。いつもとはいくつかの点が異なるため(最大のポイント:会場は六本木ヒルズゲートタワー⁠⁠、事前申し込みの上で、イベントページをよく確認してお越しください。なお、ご時世的な問題から飲食物の提供はありません(⁠⁠会場への持ち込みは可能なので、適宜お持ち込みください」というスタイルです⁠⁠。

今週のセキュリティアップデート

usn-6763-1:libvirtのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008277.html
  • Ubuntu 24.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-4418を修正します。
  • ローカルユーザーがvirtproxydに認証なく接続することが可能でした。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。

usn-6765-1:Linux kernel (OEM)のセキュリティアップデート

usn-6754-2:nghttp2のセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008279.html
  • Ubuntu 24.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-28182を修正します。
  • usn-6754-1の24.04 LTS向けパッケージです。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-6764-1:libde265のセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008280.html
  • Ubuntu 23.10・22.04 LTS・20.04 LTS・18.04 LTS・16.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-51792を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-6766-1:Linux kernelのセキュリティアップデート

usn-6767-1:Linux kernelのセキュリティアップデート

usn-6768-1:GLibのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008283.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・23.10・22.04 LTS・20.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-34397を修正します。
  • 悪意ある操作を行うことで、権限昇格を含む複数の攻撃が可能でした。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。

usn-6769-1:Spreadsheet::ParseXLSXのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008284.html
  • Ubuntu 23.10・22.04 LTS・20.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-22368, CVE-2024-23525を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoSとXMLへの外部エンティティの挿入が可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-6770-1:Fossilの再アップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008285.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・23.10・22.04 LTS・20.04 LTS・18.04 LTS・16.04 LTS用のアップデータがリリースされています。
  • usn-6729-1において生じていた、Content-Lengthフィールドが空のPOSTを処理できない問題を解決します。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-6771-1:SQL parseのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008286.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・23.10・22.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-4340を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-6772-1:strongSwanのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008287.html
  • Ubuntu 22.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2022-4967を修正します。
  • 悪意ある操作を行うことで、アクセス制御を迂回することが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

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