今回はエンジニアイベントについて書いてみたいと思います。
カジュアル化するエンジニアイベント
そもそも10年以上前とかだと、エンジニアのイベントというのは企業が開催するようなものがほとんどでした。SunやCiscoやOracleといったメーカが開催したり、CTCやTISなどのSIerが開催したりするものです。あとは、イベント専業の会社が開催するInteropなどの大規模なものなどです。
それらはもちろん今でもあるのですが、ここ数年でより現場に近いというか、商業ベースでない、もしくは商業色が薄いイベントがかなり増えてきました。
たとえば言語系で大規模なものでいうと、PerlカンファレンスであるYAPCや、PythonカンファレンスであるPyconなどがあります。
- YAPC
- URL:http://yapcasia.org/2011/
- Pycon
- URL:http://2011.pycon.jp/
ここまで大規模なものでなくても、数十人くらいのイベントは、勉強会も入れると, いまやほとんど毎日のように開かれていると言ってもいいでしょう。
筆者もたまにこういったイベントのパネラーとして声をかけてもらうことがあります。
- エンジニアの未来サミット 0905
- URL:https://gihyo.jp/news/report/2009/05/2501?page=2
こういったイベントは、もちろんそのイベントのコンテンツ自体が参考になることもあるし、そこで他のエンジニアと交流することもできます。ケースバイケースではありますが、うまくマッチすれば実に有用なものになるので、機会を見つけて自分にプラスになりそうなものに参加すると良いと思います。
以前はこういった機会があまりなかったので、知らないエンジニア同士が交流する機会というのは、せいぜいWIDEやJANOGのミーティングあたりか、NetNewsのグループとかMLくらいだったと思います。今はイベントもそうですが、ソーシャルメディアで知り合うチャンスもかなり増えているので、隔世の感があります。
イベント開催の敷居が下がった2つの理由
なぜこういった変化が起きてきたかというと、まずそれは情報の伝達手段が増えたからではないかと思います。
以前はイベントの告知というと、リアルな人づてか紙媒体への出稿、またはNetNewsやMLなどを使うしかなかったので、そもそも情報の拡散が今よりもハードルが高く、そもそもイベントをやるには集客面その他で大規模でないと成立しずらかったのが、今は情報の拡散=集客のハードルがさがったので、小規模でも容易に開催できるようになったということがあげられると思います。
また、そうしてイベントが頻繁に開催されるようになると、イベントに参加するというのが日常的になり、心理的なハードルも下がってきたと思います。ATNDやMeity、Facebookなどイベント管理に便利なツールが増えてきたということも一因だと思います。
もうひとつ大きいのが、会場の手配のしやすさです。小規模とはいえイベントを開催するには少なくとも30人くらいは収容できる場所が必要です。ところが今は、このくらいもしくはもっと大きい規模の会場を、趣旨が合えば無償で提供してくださる企業や、有料の会場でも2時間であれば3万円くらいで手配できたりもします。これなら一人1,500円程度の参加費で帳尻が合います。
私もやってみました
ところで、筆者も自身でいくつかイベントを開催してみたことがあります。
エンジニアブレークスルーは、エンジニアがブレークするにはどうすれば良いかについて考えてみるというイベントです。チューニンガソンは、名前の通りハッカソンのようにチューニングで勝負してみようというものです。
このうち、エンジニアブレークスルーは、筆者が思うブレークスルーしていると思うエンジニアを集めて、そのテーマについてディスカッションしてみるというコンセプトを実現しました。
チューニンガソンについては、こういったチューニング系のイベントというのがありそうでなかったので、以前からずっと開催してみたかったものを実現してみました。つい最近も、ライブドアによってISUCONという類似のイベントが開催されたりして、今後こういったイベントが増えていくかもしれないと期待しています。チューニンガソンはイベントの固有名詞ではなく、ハッカソンのように一般の用語として定着するといいなあと思っていたりします。
イベントの企画から当日まで
ここで、イベントを自分で開催してみた経験を少し紹介してみます。特に重要なのは2つ、会場手配と告知です。さきほど、以前よりもハードルがさがったのがこの2つだということを書きましたが、それでもこの2つが一番重要です。
まずはテーマと関係者
順番でいうとまず最初にすることは、もちろんテーマの決定です。テーマが他の要素に左右されるようでは本末転倒です。
そしてテーマに沿って関係者を決めていきます。たとえばパネルディスカッションをやるのであればパネラーとモデレーターを決める必要があります。チューニンガソンのような参加型イベントであればこれは特に不要です。
次に場所、日程、告知も大事
関係者が決まったら、会場の手配と日程の調整をします。この関係者の日程調整と会場の手配が、筆者が思うには一番の山場です。希望の日程で会場が手配できれば、イベントの準備は半分終わりです。
会場が手配できれば日程は確定なので、ここから告知を行っていきます。東京であれば、数十人のイベントなら1ヵ月程度の告知期間でも十分、2週間くらいでも良いと思います。
キャンセルに注意
ここで、もう1つの山場がキャンセルコントロールです。イベントが多数開催されるようになって、前より困難になった点があるとすればこのキャンセルコントロールであるといえます。
以前はイベントは貴重な機会だったのと、そもそも他のイベントと競合したりすることもなかったので、キャンセル率はそれほど高くなかったのが、最近はイベントが常時開催されていることもあって、気軽にキャンセルをするケースが増えてきたのか、キャンセル率がかなりあがってきました。
だいたい最近では、30%くらいがひとつの目安だったりしますが、これも無料と有料でまた違ってきます。ちなみに無料のほうがキャンセル率が高いです(有料は事前徴収でなくても無料よりキャンセル率は低い)。
このため、運営者は少し大目に募集をすることになります。50人定員であれば70人募集するなどです。もちろん、それで定員オーバーするリスクもあるし、それでも定員を下回るリスクもあります。これは経験が大きく影響するので、運営経験豊富な人に相談してみると良いと思います。
できればネット中継も
もうひとつ、これは必須ではないのですが、もしUstreamをやるのであれば、これは運営のかなりの割合を占める作業となります。機材の準備、当日の調整など、専任の担当が一人いてもいいくらいです。またUstをやる場合、会場のネットの回線の帯域がかなり必要になるため、その手配も必要です。Ustは難易度が高いため、イベントに慣れないうちはやらないほうが無難といえますが、Ustがあるとリモートからの参加ができるようになるため、可能であればぜひチャレンジすると良いと思います。
いろんなスポンサーを巻き込もう
あと、これも必須ではないですが、会場以外でも各種スポンサーを集めてみるのもおもしろいと思います。たとえば告知やレポートを記事にして掲載してくれるメディアスポンサー、当日懇親会の食事や飲み物を提供してくれるフードスポンサーあたりがまず思い浮かぶところです。
メディアは、有用なイベントであればそれを記事にするのはメディアとしても魅力があるので、企画が良ければ乗ってくれるところはあると思います。フードについては、無償でフードを食べてもらって良さをしって欲しいと思っている会社と思惑があえば、こちらもありうるでしょう。
ただ、メディアとフードについては注意点もあります。
まずメディアですが、一般参加者(もしくはパネラーなども)顔出しNGという人がいる場合があるので、写真撮影は事前にOKかどうかの確認や周知が必要です。フードについても、会場でフードの種類についての制限がある場合があるので、こちらも事前に確認などが必要です。アルコール禁止の会場、飲み物のみOKの会場、においが強いフードは禁止の会場などさまざまです。
そして当日
ここまでが準備で、あとは当日です。
有料イベントの場合には参加費の徴収や領収書の発行、参加枠がわかる名札の配布などが当日の重要な作業としてあります。いったん開演してしまえば、あとは自分がやりたかったテーマについて存分に楽しむだけです。
このとき、twitterのハッシュタグなどを決めておくと、よりリアルタイムでの情報共有が可能になります。また、イベント後にはレポートをまとめたり、参加者のtweetをtogetterにまとめたり、blogなどをチェックして紹介したりというフォローアップの作業もあります。
おわりに
今回は、最近のイベント事情と、自分でイベント開催するときの経験談について紹介してみました。他の人が開催する面白そうなイベントに積極的に参加するのもいいですし、いっそのこと自分でイベントを開催してしまうのも面白いものです。そうやって発生するコミュニケーションや化学反応は、きっと将来の糧になっていくと思います。