KVMで始めるプライベート・クラウドへの第一歩

第8回まとめ

KVM環境構築時の検討事項

KVMは仮想機能(ハイパーバイザ)であり、1台のサーバ上で複数の仮想マシン環境を同時に動作させる仕組みを提供します。

可用性向上やバックアップ等はLinux OSの管理機能やオープンソース・ソフトウエア(OSS)との組み合わせを検討します。

I/O冗長化について

NICや外部ディスクへのアクセス経路の冗長化はホストLinux上で実装します。

NIC冗長化機能のbondingや外部ディスクパス冗長化機能のdevice-mapper-multipathにより、ホストLinux上でI/Oパスの冗長化を行い、冗長化済みのNIC、ディスクリソースを仮想ゲスト環境に割り当てます。

高可用性(High Avalilability:HA)について

KVMにはHA機能は実装されていないために、何らかのHAソリューション(RHELの場合はRed Hat Cluster Suiteなど)との組み合わせて実現します。

システムごとに個別の作りこみとなるため、障害時の挙動確認、運用手順など十分に検証が必要です。

仮想マシン環境のバックアップについて

KVMおよびディストリビューションに含まれている管理ツールであるvirt-managerには仮想マシン環境のバックアップ機能はありません。仮想マシン環境の設定およびディスクイメージはホスト Linux 上ではファイルとして存在するため、仮想マシン環境のバックアップはファイルのコピーで行います。

バックアップ時には一旦仮想マシン環境を停止してコピーを行い、通常ファイルと同様に管理します。

KVM環境を展開していく際には、今後のニーズとしてマルチハイパーバイザ対応の管理ソリューションも必要になります。

既存環境の管理ツールがKVM対応でない場合には、KVM環境管理用にvirt-managerなどの別ツールを使用することになり、管理者の負担が大きくなります。

この課題を解決するためには、異なるハイパーバイザを同じ操作で管理できる,マルチハイパーバイザ対応の管理方法が必要になります。

クラウド・コンピューティング環境では非機能要件(信頼性、可用性、保守性など)に応じて様々な仮想化機能(ハイパーバイザ)が混在します。仮想化環境管理の負担軽減のために、異なる仮想化機能を同じ操作で一元管理できるマルチハイパーバイザ対応管理ソリューションが重要になってきます。

IBMではマルチハイパーバイザ対応の仮想化環境管理ソリューションとして、IBM Systems Director VMControlを準備しており、KVM仮想化環境展開時の仮想環境統合管理ツールとしてご活用いただけます。

IBM Systems Director VMControlとは

VMControlとは、IBMが提供するプラットフォーム管理ソフトウェアSystems Directorの機能拡張プラグインで、サーバやスイッチ、ストレージなどのハードウェアの一元管理機能に加え、さまざまな仮想化環境の一元管理や、仮想マシンのイメージライフサイクル管理を実現する、マルチハイパーバイザ対応の管理ソリューションです図1⁠。

図1 Systems Directorがカバーする範囲
図1 Systems Directorがカバーする範囲

VMControlによって以下の内容を実現でき、管理者は複数の仮想化環境の管理負担を軽減できます。

  1. 異なる仮想化環境上の仮想マシンのステータス確認や電源操作などが1つのコンソールから同じ操作で行えます。
  2. 仮想マシンのイメージをカタログとして登録することで、アプリケーションの設定を含んだシステム構築が短時間で簡単に行えます。
  3. ハードウェア障害と仮想化環境管理の連携が簡単に設定でき、仮想マシンの稼働率を高めます。

それでは、VMControlがこれらの内容をどのように実現するかを説明いたします。

異なる仮想化環境上の仮想マシンの確認や操作

図2のとおり、 PowerVM(赤枠)と VMware(紫枠)は異なるハイパーバイザですが、物理ホスト/仮想マシンを同じ形式で確認できます。

これは KVM でも同じです第7回の図3を参照⁠⁠。

管理画面上で各仮想マシンの状態も表示され、仮想マシンの電源操作も可能です。

管理者はそれぞれのハイパーバイザ毎に管理ツールを使いわける必要がなく、管理負担を軽減できます。

図2 異なる仮想化環境も一覧表示
図2 異なる仮想化環境も一覧表示

仮想マシンのイメージライフサイクル管理

仮想マシンイメージをカタログ登録し、必要に応じて仮想マシンを新規にプロビジョニングすることができます。KVM/PowerVM/z/VMに対応しており、KVM では仮想マシンのイメージバックアップとして使用できます。

図3は KVM の仮想マシンイメージのプロビジョニング操作はウィザードで数ステップで完了できるので、専門知識を必要とせず簡単にプロビジョニングできます。

図3 ウィザードで仮想マシンイメージをプロビジョニング
図3 ウィザードで仮想マシンイメージをプロビジョニング

ハードウェア障害と仮想化環境管理の連携

ハードウェア障害をトリガーとして管理操作を自動実行するよう簡単に設定できるため、ハードウェア障害が発生しても仮想マシンのサービスを継続させることができます。IBM のx86サーバ(System x)には 事前障害予知(Predictive Failure Analysys:PFA)と呼ばれるハードウェアの障害発生を予知する機能が備わっています。

この機能と組み合わせることで、予期せぬシステムダウンによるサービスへの影響を最小限に抑えることができます。

詳しくは以下の資料の P.9 をご覧ください。

IBM Systems Director VMControl 2.3 ご説明資料
http://www.ibm.com/jp/domino01/mkt/cnpages7.nsf/page/default-000DA59F

よるKVM環境の管理については、以下のサイトで検証レポートを公開予定です。

導入や操作についてはこちらのレポートをご参照ください。
IBM Systems Director VMControl 2.3.1 KVM 稼働検証レポート
http://www.ibm.com/jp/domino01/mkt/cnpages7.nsf/page/default-003C488C

まとめ

KVMはLinuxディストリビューションに組み込まれ、個別にKVMモジュールを組み込む必要がなくなり、かつ、Linuxディストリビュータのサポート・サービスにより、使いやすい環境が整ってきました。

仮想マシンへのリソース割り当ての変更やLiveMigrationなど、仮想化機能としては必要な機能が揃っており、クラウド・コンピューティング・インフラ検討時のひとつの選択肢となっています。

今後、クラウド・コンピューティング環境へ展開するにあたり、マルチハイバーバイザに対応した管理機能が重要になりますが、VMControlのようなKVMを含めたマルチハイバーバイザを一元的に管理できるソリューションも揃ってきました。

IBMには、KVM開発のスキルをはじめ、皆様のKVM活用にお役立ていただけるKVM対応のソリューション、KVMシステム構築の実績があります。

KVMを活用したクラウド・コンピューティング環境へ一歩踏み出してください。

IBM、IBMロゴ、Systems Director VMControl、PowerVM, z/VMは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corporationの商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点でのIBMの商標リストについては、www.ibm.com/legal/copytrade.shtmlをご覧ください。

他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ各社の商標です。

この記事に掲載されている情報は、2011年4月15日現在のものです。事前の予告なしに変更する場合があります。

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