WebエンジニアにとってのIoT ~Physical Webが拓く未来~

第4回 Physical WebとiBeacon

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UriBeacon VS iBeacon

位置情報サービスのラインナップ強化の中の一つであるiBeaconと,位置情報に限らず様々なモノに情報発信のフックを仕込んでいきReal-World Wide Webを目指すUriBeaconでは目指すところに違いがあることは推測できます。

とは言え,この2つ自体はほぼ同じ技術を利用しているため,実現できるところも似てきます。

iBeaconでは代替できないのか

では,iBeaconではPhysical Webで実現できるようなアプリケーションは作れないのでしょうか?

機能的な話だけであれば,簡単に作ることは出来るでしょう。

これまでに説明したように,iBeaconもUriBeaconもBLEのアドバタイジングパケットを利用しているので性能要件的には同じですし,以下の図のように,iBeaconが飛ばす数値と,あらかじめ登録されたURLをコンバートするテーブルがあれば良いだけです。

図4 ビーコンから受け取った数値をURLに変換

図4 ビーコンから受け取った数値をURLに変換

問題は,誰がこのテーブルを運用するかと言うことになります。

次のようなパターンが考えられます。

ビーコン設置者が自ら専用アプリを用意

店舗運営者がビーコンを設置し,さらに自分で専用アプリも提供します。

近接するユーザのスマートフォンに,その専用アプリがインストールされていなければビーコンを設置する意味はありません。ユーザのスマートフォンにアプリをインストールしてもらうこと自体が熾烈な競争になっている現状において,全国展開しているような大型チェーン店などであれば別ですが,⁠町のパン屋さん」などのスモールビジネスでは現実的な選択ではないでしょう。

図5 店舗運営者がビーコンを設置し,さらに自分で専用アプリも提供

図5 店舗運営者がビーコンを設置し,さらに自分で専用アプリも提供

また,エンドユーザにとっても,様々な事業者がこのような独自方式で提供していた場合,事業者ごとに提供されるアプリを逐一インストールしていなければなりません。

ビーコン設置者は特定事業者のキュレーションサービスなどを利用

たとえば飲食店などのキュレーションサービスはいくつか想像できると思います。そう言ったサービスに登録して,発行してもらったID登録したビーコンを店舗に置く,と言うのが現状での比較的現実的なソリューションではないかと思います。

図6 ビーコン設置者は特定事業者のキュレーションサービスなどを利用

図6 ビーコン設置者は特定事業者のキュレーションサービスなどを利用

エンドユーザは,そのキュレーションサービスのアプリをインストールしてなければそこに登録された情報とは出会えません。URLと変換するにしろ,直接IDと店舗情報を紐づけるにしろ,事業者ごとにデータを持つことになり,情報のフラグメンテーションが発生します。

標準化規格の恩恵

現在,PCにしろ,スマートフォンにしろ,ユーザの手元にはChrome,Safari,Firefox,IEなど,HTTPという標準仕様に対応したWebブラウザが入っています。

Webサイトをユーザに見せたい事業者は,HTTPという標準仕様に準拠したサーバを用意して,そこにコンテンツを置けば良いだけです。専用のブラウザアプリケーションを開発,配布する必要はありません。

同様に,Physical Webの仕様に準拠したブラウザがスマートフォンに標準搭載されていたら,スモールビジネスの店舗運営者は,ビーコン(とWebサイト)を設置するだけで,サービスをエンハンスすることができます。

また,最初からURLを仕込んで飛ばすことが出来るので,IDと情報を紐づけるテーブルを占有する支配的な事業者も登場しません。

図7 標準化規格を使用した場合

図7 標準化規格を使用した場合

エンドユーザにとっても,標準ブラウザをいれておくだけすれば,情報の取りこぼしがありません(今度はフィルタリングが課題になるのですが⁠⁠。

ただし,これは規格が普及した場合の話であり,規格を普及させるということ自体が本来簡単な話ではありません。ユーザがいないプラットフォームにはコンテンツプロバイダは入ってきませんし,コンテンツのないプラットフォームにはユーザは集まりません。

Webの場合,家庭用PCの普及期にWindowsにIEが同梱されていたことで,⁠ユーザの手元にブラウザが最初からある」という状況が作られたことが,普及に大きく影響したのではないでしょうか。

Physical Webの場合,提唱しているのがAndroidを抱えているGoogleなので,同様にOS抱き合わせ戦略も採れるでしょうが,市場がiPhoneと二分されている現状,どういう形でiPhoneに差し込むかが課題になるのかもしれません。

著者プロフィール

加藤亮(かとうりょう)

ソフトウェアエンジニア。

比較的プロトコルとフロントエンド寄り。

2014年7月よりリクルートテクノロジーズアドバンスドテクノロジーラボ所属。