2009年6月、日立製作所が開発・販売する統合システム運用管理ツールJP1の最新バージョンがリリースされました。従来のものをさらにブラッシュアップし、また、最新のITテクノロジーを反映した高機能なツールに生まれ変わっています。リリースに伴い、同年10月には、日立製作所が監修した書籍『 JP1による業務システム運用管理の実践』が刊行されています。第3回目は、システム管理ソフトウェア本部JP1マーケティング部部長 更田洋吾氏に、2010年に向けた業務システム運用管理の展望、そして、その先にあるビジネスへの成功の鍵について伺いました。
JP1のバージョンアップ
――6月に、最新バージョンのJP1 Version 9がリリースされました。このタイミングでのバージョンアップの経緯、また、新機能について教えてください。
更田:
JP1は、これまでも企業が抱える業務システムの課題解決のサポートを行ってきました。それらの課題は、時代や状況とともに変化し続けています。さて、今年1年を振り返ってみて、昨年からの世界規模での経済不況などから、各企業でコストに対する意識がこれまでになく高まり、企業規模にかかわらず投資抑制の動きへとシフトしています。
当社では「ITリソースをいかに効率的に活用するか」をテーマに、新しいJP1の開発に取り組んで参りました。それがJP1 Version 9(以降JP1 V9)です。
JP1 V9のコンセプトは「フレキシブル&スマート」です。これが意味するところは、「これからのシステムの大規模・複雑化および集約化に対して、柔軟に対応できること(フレキシブル)」と「実際の運用容易性・シンプルさ(スマート)」です。導入していただいたすべての企業の皆さまに、効率的な運用やリソース管理をしていただくことを目指しており、まさに先ほど述べた今の時代背景にマッチした製品と考えています。
――フレキシブル&スマートをコンセプトにしたJP1 V9とのことですが、業務システムの大規模・複雑化、集約化という動きはこれからさらに加速すると予想されます。この点について、具体的にどのように対応できるのでしょうか。
更田:
今のITシステムのトレンドは、仮想化、そしてクラウドコンピューティングです。この潮流はこれからますます加速していくことが予想されます。JP1 V9は、この2つの技術を用いたシステムを効率的に管理できるようにしています。仮想化環境をベースにしたシステムでは動的に構成が変わることが多いのですが、JP1 V9は、こうしたシステムに対応できるよう、動的な統合監視を実現します。
従来では、システム構成が変わった場合の統合監視では、システムの変更点を担当者自身が手動で編集しなければならず、莫大な運用コストがかかっていました。JP1 V9 では、仮想化ソフトウェアに直接アクセスすることによって動的な構成情報を逐次取得できるため、すべて自動化して運用できるのです。
JP1 V9では、運用側の負荷の軽減やリソースの効率的な利用を実現していますが、今後、サーバ数が増え、構成が複雑になっても対応できるよう、スケーラビリティの確保という特長も備えています。
JP1 V9の導入と運用
――新バージョンに関して、これから導入を検討している方、あるいは別のツールから乗り換えたい方はどのようにすれば良いでしょうか。
更田:
JP1 V9 のもう1つの特長が導入容易性の強化です。これまで統合監視を行うには中央にあるマネージャと監視対象となるエージェントが必要でした。JP1 V9は、エージェントレスでのシステム監視ができるので、新規システムへの導入はもちろんのこと、既存システムの構成に手を加えることなく、中央のマネージャのみを切り替えるだけで導入できます。
エージェントレスは導入容易性を高められる一方で、お客様によっては、ミッションクリティカルな基幹系システムにおいて、従来のエージェント方式できめ細かな稼働監視をしたいというニーズもあります。JP1 V9は、すべてをエージェントレスで管理するのではなく、状況に応じてエージェントを搭載したシステム管理もできるよう、ハイブリッドに対応できます。
このように、企業規模やシステムの特性に応じて運用管理方法を選択できるという点も、このバージョンならではの強みです。
――なるほど。導入にあたってのコストが大幅に削減されているのですね。次に、導入した後の実際の運用管理、とくに操作面に関しては変更がありましたか?
更田:
今回、JP1としては運用性や性能、信頼性、GUIの操作性を格段に向上させています。その代表例がJP1/Automatic Job Management System 3(以降JP1/AJS3)です。これまでも、お客様に運用マニュアルの変更や整備といったご負担をおかけしない範囲で細かな改善を続けてきました。
今回のバージョンアップでは、もっと多くのお客様にJP1/AJS3を使っていただきたいという思いから、これまでのバージョンでいただいたご要望を反映して、業務を意識した操作性を追及しました。その結果、画面上で操作の流れが直感的にわかるようになり、さまざまな業務手順に対応しやすくなっています。
もちろん、旧バージョンとの互換性や接続性も維持しておりますので、これまでの製品に使い慣れた方にも安心して使っていただくことができます。多くのお客様にお使いいただいている製品を提供するベンダの責任として、既存のお客様のオペレーションという資産も継承することを配慮した設計がなされているのです。
『JP1による業務システム運用管理の実践』の発売
――さて、今回技術評論社から『JP1による業務システム運用管理の実践』が刊行されました。本書籍はどういう方を読者として想定しているのでしょうか?
更田:
情報システム部門において、システム運用管理に携わる方、また、システム運用管理ツールの導入を検討・決裁する立場の方々を想定した書籍です。効率的な運用管理を目指すとはいっても、現場ではシステムの安定稼働のために苦労している面が多々あります。本書は、そうした実際の現場に即したシーンを想定し、「業務システム運用管理」の視点から、ツールを使うことでどのように課題解決を図ることができるのかを著しています。そのため、あえてテクニカルな切り口にならないよう、最近のトレンドをふまえた運用管理の効率向上や実践のヒントなどをまとめたものになっています。
その中でも、3章では、シチュエーション別の運用管理という構成で、ジョブ管理や資産管理などについて、運用管理の考え方、さらにJP1 V9を利用した場合の運用のポイントがまとまっています。JP1によるシステム運用管理を行っている方には、マニュアルとは違う副読本として、ぜひご一読いただきたいと思います。
――監修の立場から見た本書の読み方、ポイントをお聞かせください。
更田:
JP1に関する書籍は、これまでも何冊か刊行されています。その中で、本書がこれまでの書籍と異なるのは、日立製作所が企画段階から加わり直接監修に関わっているという点です。これまでの書籍はユーザの方がユーザ視点で書かれたものですが、本書はそこにベンダ視点を加え、ベンダだからこそお伝えでき、お勧めしたい部分が反映された内容になっています。何より、開発している私たちのJP1に対する「設計思想」「運用思想」を込めて監修している点が、本書の大きな特長です。
システム運用管理をこれから始める方、すでに行っている方、それぞれがそれぞれの立場で読み進められる章構成となっております。先ほども述べた3章のシチュエーション別の解説では、JP1を導入されている企業の皆さまだけではなく、今後のシステム運用管理の進め方についてヒントを求めている方、さらには他のツールを導入している方にもぜひお読みいただければと思います。
業務運用システムに関わるすべての方へ
――最後に、業務運用システムに関わる方に向けて一言お願いいたします。
更田:
冒頭でも述べたとおり、今の時代、経済面など大変厳しい状況です。こうした中、とくにシステム運用管理に携わる方は、コスト切りつめなどつらい思いをされていると耳にします。JP1 V9 は、そういう方たちの業務が少しでも楽になるように考えて開発しています。
そして、JP1を導入した企業のその後の成長や飛躍の一助になればと思っています。
――ありがとうございました。
インタビューでもお話しいただいたように、JP1 V9は、「現代の業務システム」、そしてその先にある「未来の業務システム」までを対象にした運用管理を実現できます。コスト削減、リソースの効率化などさまざまな制約がある中、120%の効果を導くためのツールとしてぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか? また、検討材料の1つとして、ぜひ『 JP1による業務システム運用管理の実践』をご覧ください。