Ubuntu Weekly Recipe

第229回Skype 4.0を使う

Skype 4.0 for Linux

Skypeは世界でもっとも使われているインターネット電話サービスです。P2P機能を使って低速な回線でもそれなりの品質で通話ができること、多人数とのチャットやビデオ会議、固定電話との通話が簡単に実現できることもあって、個人や企業を問わず利用されているアプリケーションです。

Skypeはマルチプラットフォームに対応していることも特徴の一つです。WindowsやMacはもちろんのこと、LinuxやAndroid、果てはPSPにまで対応しています。そのため、Androidケータイと家にあるLinux PCを使って無料通話を実現することも可能です。しかしLinux for Skypeについては、ビデオ通話に対応した2.0以降4年にわたって正式リリースは途絶えていました。

実際のところその4年の間にベータ版として2.2がリリースされておりアップデートも行われていたのですが、それも2011年6月で止まり、それと前後してMicrosoftによるSkypeの買収もあって、Skype for Linuxの去就については不明な状態だったのです。

その状況に変化があったのが、5月11日の2.2.0.99のリリースです。このリリース自体はただのセキュリティアップデートだったのですが、マイナーバージョンの番号が「99」だったことから、そろそろ「ベータ」から正式リリースになるのか、という期待があがりました。

そして6月14日、ようやく正式メジャーアップデートである4.0.0.7がリリースされたのです。

今回のリリースはそれほど大きな新機能があるわけではありません。

  • チャットウィンドウの刷新、複数の相手との会話を一つのウィンドウで表示する
  • 新しい発信画面
  • 音声品質の向上
  • ビデオ品質の向上と対応ウェブカメラの追加
  • 連絡先に電話番号を保存できるようになった
  • 新しいステータスアイコンとエモーション
  • チャットの同期機能の改善

リリースノートに掲載されているのは、上記ぐらいです[1]⁠。ただ、マイクロソフトによる買収後もLinux版の開発が止まっているわけではない意味において、大きなリリースと言えるでしょう。

Skypeのインストール

新しいSkype 4.0をインストールするには、まず古いSkypeをアンインストールする必要があります。これは過去のSkypeとファイルが競合し、インストーラーがエラーを発するためです。CanonicalのパートナーリポジトリからSkype 2.2.0.35をインストールしている場合はあらかじめ以下のコマンドでSkypeをアンインストールしておいてください[2]⁠。

$ sudo apt-get autoremove --purge skype skype-bin

ホームフォルダーに「.Skype」ディレクトリーがある場合は、それも別名にするなどして退避させておきましょう[3]⁠。

現時点においてSkypeの最新版をインストールするには、Skypeのサイトからパッケージをダウンロードする必要があります[4]⁠。⁠Skypeをダウンロード」⁠その他のダウンロード」を経てたどり着ける、Skype for Linuxから、⁠Ubuntu 10.04 32ビット」もしくは「Ubuntu 10.04 64ビット」をお使いのCPUにあわせて選択します[5]⁠。どちらかわからない場合は、32ビットを選んでください。ちなみに、12.04を使っていても10.04のパッケージで大丈夫です。

図1 Ubuntuソフトウェアセンターで起動させる
図1 Ubuntuソフトウェアセンターで起動させる

ダウンロードダイアログでは、Ubuntuソフトウェアセンターで直接起動するようにしておけば、そのままインストールできます。ソフトウェアセンターが起動したら、インストールボタンをクリックしてください。

図2 ソフトウェアセンターからのインストール
図2 ソフトウェアセンターからのインストール

あらかじめダウンロードしておいたパッケージファイルをインストールしたい場合は、端末からdpkgコマンドを使うと良いでしょう。

$ sudo dpkg -i ~/ダウンロード/skype-ubuntu_4.0.0.7-1_amd64.deb

ソフトウェアセンター、端末どちらからインストールした場合であっても、インジケーターにSkypeアイコンを表示させるためには、Qtアプリをインジケーターに対応させるためのsni-qtパッケージをインストールする必要があります。

$ sudo apt-get install sni-qt sni-qt:i386

Skypeのテスト

Dashから「Skype」で検索すれば「インストール済み」にアイコンが表示されるはずです。ここからSkypeを起動できます。初回起動時は利用規約が表示されます。同意するとログイン画面が表示されるので、既存のアカウントを使ってログインしましょう。もしアカウントを持っていない場合は「Skype名をお持ちでない場合」をクリックすることでアカウントの作成も行えます。

図3 ログインするとコンタクトリストが表示される
図3 ログインするとコンタクトリストが表示される

まず最初に、⁠Skype Test Call」に発信してマイクから音声が正しく入力できるか確認すると良いでしょう。コンタクトリストから「Skype Test Call」を選択し、通話ボタンを押してください。自動アナウンスが流れて、適当にしゃべってくださいといわれるのでマイクに向かって発言します。その後、発言した内容が再生されるはずなので、それを確認しましょう。

図4 発信中の画面も新しくなった
図4 発信中の画面も新しくなった

もし、音が鳴らない、マイクで発言した内容が入力されない場合は、スピーカーやマイクが正しく認識されているか確認する必要があります。Skypeの設定画面は、コンタクトリストの左下にあるメニューボタンか、インジケーター領域にあるSkypeアイコンをクリックしてから、オプションを選択してください。

図5 メニューボタンからオプションを選択
図5 メニューボタンからオプションを選択
図6 インジケーター領域のSkypeアイコンでもオプションを選択できる
図6 インジケーター領域のSkypeアイコンでもオプションを選択できる

サウンドデバイスでマイクやスピーカーデバイスが表示されます。特に変更していなければ「PulseAuido server (local)」になっているはずです。この場合、⁠テストサウンドの作成」を押すことでテストサウンドが鳴ること、デスクトップ画面右上のスピーカーアイコンからサウンド設定を選択し、出力や入力がミュートになっていないかどうか、テスト通話時にアプリケーションタブにSkypeが表示されるかどうかを確認すると良いでしょう。

USBマイクやスピーカー、ウェブカメラを使う場合は、接続したら一度Skypeを立ち上げ直してください。ホットプラグには対応していないようです。なお、オプション画面の「ビデオデバイス」を選択するとウェブカメラのテストも行えます。

ハードウェアに対する問題については、Ubuntu Wikiの音が出ない場合の対処についてや、Ubuntu Weekly Topicsの第147回UbuntuでUSBウェブカメラを使う⁠、第165回Ubuntuでマイクを使うを参照すると良いでしょう。

いろいろな機能を試してみる

コンタクトリストにユーザーを追加する

はじめて使う場合は、コンタクトリストに通話相手を追加しておきましょう。ウィンドウ左下の「+」マークのアイコンをクリックすることでコンタクトの追加ダイアログが開きます。

ユーザー名を入力し検索ボタンを押せば、候補が表示されるので追加したい相手を選んで追加ボタンを押しましょう。

図7 公開プロフィールで絞り込むこともできる
図7 公開プロフィールで絞り込むこともできる
図8 着信したり、メッセージやファイルを受信したら画面右下に通知される
図8 着信したり、メッセージやファイルを受信したら画面右下に通知される

チャットとファイルの送受信

コンタクトリストにある青い吹き出しボタンを押すと、相手とのチャットウィンドウが開きます。もちろん日本語入力も可能です。

4.0からは、ウィンドウの左に最近連絡をとった相手のリストが表示され、ここからチャット相手を一つのウィンドウ内で切り替えられるようになりました。これまでのように相手ごとにウィンドウを開きたい場合は、オプションの「チャット」から「デフォルトビューを使用」のチェックを外してください。

図9 左のユーザー名をクリックすることでチャットウィンドウを切り替えられる
図9 左のユーザー名をクリックすることでチャットウィンドウを切り替えられる

チャットウィンドウの「+」ボタンを押せばファイルの送受信も可能です。こちらから送信した場合は、相手の承認を待ってから送信が開始されます。受信時の保存先はホームディレクトリで、これはオプションで変更できます。

図10 ファイル送受信ダイアログ
図10 ファイル送受信ダイアログ

同じく「+」から「参加者を追加」すれば、グループチャットもできます。

ビデオ通話

Skype for Linuxはビデオ通話にも対応しているので、他の対応クライアントとウェブカメラを使った通話が可能です。通常の通話を開始したら、通話ウィンドウにカーソルを合わせ、ウィンドウ下部にあらわれるツールバーからビデオボタンを押してください。そうするとこちらのウェブカメラの映像が送られます。

片側だけビデオ通話ということもできます。こちらから相手に送っている映像は右下に表示されます。また、映像はいつでもミュート状態にできます。

図11 ビデオ通話中。自分のウェブカメラの映像は右下に小さく表示される
図11 ビデオ通話中。自分のウェブカメラの映像は右下に小さく表示される

デスクトップの共有

通話中に、ビデオ通話と同様にツールバーにあらわれる「+」ボタンから、⁠画面共有」「選択の共有」を押せば、デスクトップ画面全体や特定の領域を共有できます。最初に共有領域を示す赤い枠が表示されるので、それをクリックしてください。⁠選択の共有」の場合はドラッグで移動やサイズの変更が行えます。

同様に相手が設定すれば相手のデスクトップ画面をこちらに表示することも可能です。通話相手の画面の操作についてサポートする場合に便利でしょう。

図12 相手のデスクトップが通話ウィンドウに表示された状態
図12 相手のデスクトップが通話ウィンドウに表示された状態

固定電話・携帯電話への通話

Skypeクレジットを購入すれば、固定電話や携帯電話など、一般的な電話番号への発信が可能です。またオンライン番号(Skype番号)を購入すれば、固定電話や携帯電話からの発信を受け取ることもできます。

コンタクトリストの右上には、購入済みのSkypeクレジットの額が表示されます[6]⁠。ここで金額表示部分を押して、⁠アカウントページの閲覧」「Skypeクレジットの購入」をクリックすれば、Skypeのサイトからクレジットや番号を購入できます。

図13 残高はユーロで表示される
図13 残高はユーロで表示される

金額はユーロで表示されます。購入はクレジットカード、PayPal、銀行振込などから選べるようです。詳しいことは、Skypeのヘルプページを参照してください。

発信はコンタクトリスト下部にある「電話に通話発信、またはSMSを送信」ボタンを押してダイヤルパッドを表示させて相手の電話番号を入力して行います。日本を選択しておけば、自動的に日本の国コードが付加されますので、市外局番から入力すれば問題ありません。

図14 電話番号の入力
図14 電話番号の入力
図15 通話中は金額プランや通話料が表示される
図15 通話中は金額プランや通話料が表示される

コンタクトリストから特定の相手を右クリックし、プロフィールの表示を選択すると相手のプロフィールに電話番号を追加することもできます。Skypeだけでなく携帯電話にもよくかける相手ならここに相手の電話番号を追加しておくと良いでしょう。この番号に発信する場合は、右クリックで「通話の開始」からリストアップされる番号を選択します。

複数起動する

Skypeは設定ファイルのディレクトリとして「~/.Skype」を使用します。起動時にオプションで別のディレクトリに保存するようにすれば、複数のクライアントを同時に起動することが可能です。

既に一つ目のSkypeが起動している状態で、端末か「Alt+F2」のコマンドを実行画面から「skype --dbpath /tmp/skype2」と入力しましょう。⁠/tmp/skype2」は設定ファイルを保存する任意の場所を指定します。これにより、複数のクライアントを立ち上げて、別々のアカウントでログインできるはずです。チャットや通話ぐらいなら問題なくできます。

図16 複数のクライアントが立ち上がった状態
図16 複数のクライアントが立ち上がった状態

skype-wrapperでUnityに統合させる

skype-wrapperをインストールすると、Launcherのアイコンや右クリックして表示されるクイックリスト、画面右上のメッセージインジケーターにSkypeの機能を統合できます。

  • Launcherのアイコンに未読のメッセージ数を表示
  • クイックリストから未読チャットの表示
  • 着信時にクイックリストで通話開始、保留や切断
  • 各種通知がUbuntu標準のNotifyOSDを使うようになる
  • メッセージインジケーターに未読メッセージ件数が表示される

インストールはPPAから行います。端末で次のコマンドを入力してください。

$ sudo add-apt-repository ppa:skype-wrapper/ppa
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install skype-wrapper

最初はskype-wrapperが使っているSkype4PyがSkypeのAPIを操作できるように、APIの使用を許可する必要があります。Alt-F2を押して、コマンドを実行画面からskype-wrapperを実行します。すると普通のSkypeが起動します。ログインを行うとSkype4PyがSkypeに接続するを許可するかどうか尋ねるダイアログが複数表示されますので、すべてに「この選択を記憶する」をチェックした上で「はい」を押してください。

図17 複数ダイアログが表示されるのですべてにチェックを入れて「はい」を押す
図17 複数ダイアログが表示されるのですべてにチェックを入れて「はい」を押す

するとUnity統合済みのSkypeが起動します。通常のSkypeと異なり、起動直後のコンタクトリストはインジケーターアイコンに格納されたままになりますので、インジケーターから「アクティブに」を押してコンタクトリストを表示させると良いでしょう。

図18 NotifyOSDでメッセージ通知
図18 NotifyOSDでメッセージ通知
図19 Luancherやクイックリストに未読メッセージ表示
図19 Luancherやクイックリストに未読メッセージ表示
図20 着信中に「Answer Call」を押すと通話を開始する
図20 着信中に「Answer Call」を押すと通話を開始する

Unityの統合機能はskype-wrapperからSkypeを起動する必要があります。しかしながらskype-wrapperは、Dashへの表示をオフにしているため、Dashからskypeを検索すると、通常のSkypeとskype-wrapperの設定ツールしか表示されず、skype-wrapperを起動できません。そこで、Dashにskype-wrapperを表示するように設定しましょう。

まず、次のコマンドで設定ファイルを開きます。

$ sudo editor /usr/share/applications/skype-wrapper.desktop

中身を次のように変更します。まず、NameはSkypeのままだと普通のSkypeとDash上で区別がつかないので「Skype-Wrapper」に変更しています。さらにDashでSkype-Wrapperを表示さえるために、⁠NoDisplay=true」の先頭に「#」を入力してコメントアウトしています。

[Desktop Entry]
Name=Skype-Wrapper
Comment=Wrapper for Skype Internet Telephony
Exec=skype-wrapper
Icon=skype
#NoDisplay=true
Terminal=false
Type=Application
Encoding=UTF-8

これで、DashでSkypeを検索すればSkype-Wrapperが表示されるはずです。

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