5月10日(土) 、東京・六本木、グリー( 株) 様の会議室で行われた、「 Ubuntu 14.04 LTSリリースパーティ+オフラインミーティング14.05」に参加しましたので、その参加レポートです。ミーティングテーマは「VPSとクラウド そろそろ仕事でUbuntuを使ってみるか」です。
仕事で使うというのは、デスクトップ用途で使う側面と、サーバ用途で使う側面があります。クラウドファーストが普及しつつある現在、「 サーバ用途で使う」=「IaaS上で仮想マシンのゲストOSとして使う」と言えます。
テーマに沿って、今回登壇いただいたのはクラウドサービス事業者の方々が多く、クラウドについての話題が大部分を占めていました。
今を時めくクラウド事業者の方々の熱い情熱が、「 夕べのあれが、ただの喧嘩に見えたの? あれはね、正真正銘、殺し合いだったよ」的な戦いを繰り広げました。それについては、後ほど詳しくレポートします。
一方、デスクトップ用途については、LibreOffice日本語チームの小笠原氏からのプレゼンがありました。そこでも、登壇者と参加者での「Mac対UbuntuもしくはApple対Linux」的な宗教戦争が勃発します。円環の理から遮断された閉鎖空間で、無限に戦い続けるのではないかと思えたほどです。
その他、多くのネタ、突っ込みどころ、仕掛けなどなど、非常に盛り上がったオフラインミーティングでありました。
写真 オフラインミーティングの様子
自己紹介
筆者は寺内康之(てらうちやすゆき)と申します(Twitter:@yasuki ) 。仕事では某IT会社でクラウドサービス企画やクラウド基盤のお守りをしているわけですが、今回は個人参加。
オフライン・ミーティングレポート記述者の募集がイベント中に参加者に向けてあったため、思い切って手を上げました。Ubuntu 6.06 LTSのころから、いろいろ遊んでいる身としては、コミュニティになんらかの貢献をしたいと思っていましたので、( 半分ビールの入った勢いもあって)チャレンジしてみることにしたのです[1] 。
はじまらないはじまり
イベント当日、筆者は一般受付開始5分前に会場に入れました。ボランティアスタッフをはじめ、多くの方が食べ物・飲み物を並べる作業をしていまして、なにか手伝おうとしたものの、機会をつかめないまま、提供されている無線LANの設定などをしていました。
写真 殺人的なサンドイッチやソフトドリンク、ケータリングの量! このほかにもアルコール類などが多数!
開会の時間に近づいてきますと、参加者も多くなりましたが、ケータリングの遅れや紙コップ手配のミスで、飲み物が行き渡らず乾杯がじめられない事態となり、スタッフの苦労が偲ばれました。
筆者は早々にプレミアムなビールをゲットして乾杯を待っていましたが、がまんたまらず一人で乾杯の練習をし、美味しく頂きました。
寺薗先生登場
そんなまったり感が漂う中、寺薗先生が会場に到着しました。早速司会の長南氏に呼ばれます。「 ど、どうすればいいですか」という先生の第一声から、なんとなくイベントが始まりました。寺薗先生は会津大学の先生で、惑星地質学や情報科学の専門、はやぶさプロジェクトのイトカワへのタッチダウンの実現に貢献されたそうです。筆者も「はやぶさ」の地球帰還をライブで観ていたほどのファンですから、生でプロジェクト関係者の方とお会いできたのは感激です。
写真 左:司会の長南氏。右:寺薗先生
本番開始
いよいよUbuntu Japanese Team様のリーダー小林氏より、乾杯の挨拶となりました。
写真 Ubuntu Japanese Team様のリーダー、小林氏による「乾杯!」
その単語、1つと数えますか? ほんとうに一言でした。男らしく潔いです。
引き続き、小林氏のプレゼンとして「Ubuntu 14.04 LTSオーバービュー」です。やっぱ最初のテーマはそうだよな、と期待の眼差しを向けた先のスライドに……。
ごもっともなのですが……。なにか、こう、裏話とか、小枝とか、文書化されていない何かを期待するじゃないですか。そんな落胆の間もなく、間髪入れずUbuntuは今年で10周年、全リリースのオーバービューをします、とおっしゃいました。
盛り上がります。
その後、4.10 Warty Warthogから14.04 LTS Trusty Tahrまでを1バージョン1スライドで一挙に紹介いただけました。しかも、各リリースの年に起きたIT業界動向をまとめられ、ちょっとした近代史のようでした。
たとえば、6.10 Edgy Eftがリリースされた2006年10月では、「 ニコニコ動画が発足しましたね。最初はYouTubeにコメントを付けただけの、インチキみたいなサイトだった」といった具合です。そうそう筆者もそう思ってましたと、共感の嵐で、さすがはリーダーでした。
クラウディアさんこと戸倉氏のプレゼン
いよいよメインの招待枠のプレゼン開始で、先鋒は日本マイクロソフト( 株) 様です。有名なクラウディアさんこと戸倉氏が登壇されました。今日のクラウディアさんは、キャビンアテンダント風のコスチュームでエレガントです。
写真 クラウディアさんこと戸倉氏
マイクロソフトのクラウドサービス名は、従来、Windows Azureでしたが、2014年3月25日からMicrosoft Azureと改名し、WindowsだけでなくLinuxも動くAzureというメッセージを打ち出しています。もちろんUbuntu 14.04 LTSもギャラリーで仮想マシンイメージテンプレートは公開されており、すぐに使えるようになっています[2] 。
そして、東京データセンターの開設アニメーションの上映で、窓辺ななみ(C.V.水樹奈々)とクラウディア(C.V.喜多村英梨)の歌声「Future Update」が響きました。いや~豪華ですね。こちらで試聴できます。
さて、窓辺ななみとクラウディアは、どんな関係なのでしょう。窓辺ファミリーの家系図でご説明いただきました。
写真 ななみちゃんとクラウディアさんはいとこの関係
戸倉氏自ら、力の入れどころが間違ってます、とおっしゃっております。ハイそのとおりですが、おもしろいです。
続いて、Japan Windows Azure User Group様、つむらあきら氏の登壇で、VPSとクラウドの違いのプレゼンと、Azure上でUbuntu 14.04 LTSの動作デモでした。
写真 Japan Windows Azure User Group様、つむらあきら氏
またもやアニメが流れます。自宅のSambaとAzureの動画エンコーダーとモバイルPCをつないだ、ハイブリッドシステムを動かし、アニメをいつでもどこでも見られる環境を構築していました。うらやましいかぎりです。
GMOインターネット vs さくらインターネット
日本を代表するパブリッククラウド事業者の1つ、GMOインターネット( 株) 様の塩原氏の登壇です。今日は前段で萌えアニメ上映が続きましたので、塩原氏もそれが必然とばかりに続きます。美雲あんず(C.V.内田真礼)と美雲このは(C.V.上坂すみれ)で「UP TO YOU」の曲が響きます。こちらで試聴できます。
塩原氏は、先のつむら氏のプレゼンにあったVPSの説明はもう古いとばかりに、GMOのVPSの先進性を説明して行きます。
さらに、某大手の「Sくら」のクラウドを使っている人は、AWSへ「卒業」していくという問題を指摘し、GMOのクラウドは「Sくらのクラウド」と「SくらのVPS」の中間に位置することでニーズを開拓していると論陣を張りました。
イメージキャラクタの「美雲このは」の紹介では、「 清楚かわいい」を連呼し、ConoHaの由来を“ Compute Nodes with Hi-flexible Archtecture” であることを明かします。
そして、本イベント最大の問題スライドが投影されるにあたり、会場の熱気はエネルギー充電120%に達します。
明らかに、クラウディアさんと桜葉愛ちゃんをdisっております。
写真 GMOインターネット( 株) 様の塩原氏。右:3次元このはちゃん
熱気冷めやまぬまま、次のプレゼンター、「 Sくら」こと、さくらインターネット( 株) 様の横田氏が登壇です。
写真 売られたケンカは買ってやる
と、初っ端のスライドで宣戦布告をし、導火線に火をつけました。
とはいえ、用意していたスライドは、ガチな企業・サービス紹介で、四半期決算などの数字が並んでいます。盛り下がるかと思いきや、それをネタに巧みな話術で笑いを取るあたりはさすがです。
さくらのクラウドも月額料金と時間課金と料金体系がありますが、インスタンス稼働時間により自動で月額定額か時間従量か、どちらか安いほうが選択されるという仕組みを採用しており、非常に新鮮でした。使う側からすれば、いつやめるかわからないのに、料金プランを先に選ばせるのは理不尽でしょうという説明は、とても合理的で納得性の高いものです。
随所随所で売られたケンカを買い反撃を続けるプレゼンは、本当に盛り上がりました。
写真 ご静聴ありがとうございました
ここでGMOインターネット塩原氏と、さくらインターネット横田氏の戦闘をまとめてみましょう。
クーポン対決
GMO「我々が展示会などで配るクーポン券は3,000円。大手さんは2万円券をどんどん配る。長らく忸怩たる思いをしておりました。そこで、今日は、2万円クーポンを用意してきました!(拍手)3次元このはちゃんとじゃんけん大会で3名様に差し上げます!」( 大拍手!!)
さくら「2万円クーポン、じゃんけんなんてセコいこと言いません。みなさん持って行ってください」
さくらさんの勝ち
サービス対決
さくら「このベンチマークのどおり、SSDインスタンスでは、磁気ディスクに比べ、7倍のIOPSが出ます。……あれ? GMOさんSSDありましたっけ!?」
さくらさんの勝ち
キャラクタ対決
GMO「清楚かわいい電子の座敷わらしConoHaちゃん」問題スライド、どん!「巨乳に飽きたあなたにお勧めのスレンダーなイメキャラを採用!」
GMOの勝ち (2ポイント差し上げます。ど真ん中ですから。え? だって私、さやか推しだもの。)
ということで、判定は2対2で、引き分けです。
写真 金額じゃないんです、ユーザ体験こそが大事なのです
後半戦、ライトニングトーク
予定していた大手サービス事業者のプレゼンが終わり、この後ライトニングトークが続きます。
Canonical Japan様の松本氏によるJujuの紹介
最初は、Canonical Japan様の松本氏が登壇し、Canonicalの提供する自動デプロイシステムJujuを紹介しました。Jujuは、パブリッククラウドやローカルサイトにあるUbuntuサーバへ、OSSソフトウェアやアプリケーションを自動的に展開・配布するオーケストレーションツールです。
この手の仕組みは、今後さらに増えるであろうスケールするシステムの運用を助ける強力なツールとなること間違いなしで、ハードウェアベンダ、仮想化ベンダ、OSベンダがシェア獲得のしのぎを削っている領域です。CanonicalもUbuntuを軸に、とくに力を入れているようです。
Jujuはcharmと呼ばれる設計図で、自動インストールを行います。puppetでいうmanifest、chefでいうrecipeみたいなもののようです。charmは、canonicalの運営するjujucharmsで公開・共有することができます。
当日の発表で特筆すべきは、MySQLのActive/ActiveのHA構成をデプロイするcharmが公開されたとのことでした。データベースのHA、難しいですよね。しかもActive/Stanbyではなく、Active/Activeです。それが、簡単にデプロイできるなんて、本当に魔法のようです。筆者も近々利用させていただくことになるでしょう。
写真 Canonical Japan様の松本氏
Ubuntu Japanese Team様の柴田氏によるUbuntu Phoneのお話
次は、Ubuntu Phoneのお話。Ubuntu Japanese Team様の柴田氏が登壇されました。
Ubuntu for Androidの中止が発表され、そっちはそっちで落胆していただけに、モバイル分野のUbuntuには期待がかかるところでした。最近Ubuntu Phoneもバージョンアップし、それはそれはすばらしく画期的な進化をとげたようです。
なんと! 電話を受け取れるようになったのです!(大拍手!)
Phoneの名がついていながら、13.10リリース時のイメージでは、着信してもバイブレーションしないので気づけない、気づいたとしても通話開始できないことがある状態だったそうです。
外野からのツッコミでは「電話を受けられない機能が付いていた」のが外されたので、デグレだ、という声が上がります。たしかにそういうニーズもありそうです。そして、Ubuntu PhoneではGUIはUnity8を採用し(デスクトップはUnity7) 、Qt5で作られているそうです。
写真 Ubuntu Japanese Team様の柴田氏
日本Qtユーザー会の鈴木氏によるQtのお話
ということで、日本Qtユーザー会の鈴木氏へマイクが渡されました。
Qtはアプリケーションユーザインターフェースフレームワークだそうでして、とくにGUIアプリを作成するツールキットとして、ウィンドウやボタンなどを容易に配置し設計することができるようです。
Qtで作られたKDEはあまり普及しておらず、会場内で挙手を求めたところ、100人ほどいるのにKDEユーザはただの1人でした。なので、Qtの普及には、Unityに大きな期待をかけており、Ubuntuが頼りの綱だそうです。
Qt Createrという開発環境も用意されており、その操作デモを見せていただいきました。ところで、Qtは「キュート」と呼ぶことをはじめて知りました。とほほ。
写真 日本Qtユーザー会の鈴木氏
LibreOffice日本語チームの小笠原氏による開発者募集などのお話
最後は、LibreOffice日本語チームの小笠原氏です。さっきビールを飲んで真っ赤になっていた人だ、と心配しましたが、顔色も戻ってしっかりされてました。
デスクトップでもGitやターミナルを使いたいから、Windowsは嫌だと、至極もっともな主張を展開されました。筆者も大きく頷かずにはいられません。目の前にクラウディアさんがいらっしゃいましたが。
Linuxであれば、資料作成にはLibreOfficeは必要です。それも激しく同意です。ということで、開発者不足なので、大募集中だそうです。我こそはという方は、ぜひご協力ください。
これで終わりかと思いきや、外野から「Macでいいじゃん」という声が飛び、会場は俄然キナクサイ雰囲気が漂い始めました。
小笠原氏はMacのプリンタドライバ開発時代の体験などを語り、Appleの製品は良いんですよ、でも一部異常に閉鎖的な文化が嫌いなんだと言います。
そしてLinuxはパッケージ管理システムがよくできている、と主張しました。Debianさまさまです。たしかにMacでは削除すら満足にできないですから。
私もLinuxが好きですが、何を使うかより、その上で何を産み出すかですよね。
Ubuntuでも赤い帽子の人でも、MacでもWindowsでもいいんです。EmacsでもvimでもSublimeでもnotepad.exeでもいいんです。
何かを使って、知的生産活動ができさえすれば。
写真 LibreOffice日本語チームの小笠原氏
参加者プレゼント
さて、プレゼンのレポートはこれで終了です。いままで書いてきませんでしたが、登壇された皆さまからは、参加者の皆さまに素敵なプレゼントを用意していただきました。各プレゼンの最後にじゃんけん大会があり、勝ち抜いた参加者に贈られましたので、それを一挙にご紹介します。くやしいことに私はじゃんけんに一度も勝てませんでしたが……。
( 株) 技術評論社からは、SoftwareDesign 2014年5月号と、その電子本引換券
マイクロソフト( 株) 様からは、去年の夏コミで販売した「無料ではじめるWindows Azure×WordPress超入門」巻末カラーコミック付き
日本Azureユーザ会からは、マイクロソフト手帳と日本DC開設記念クリアファイル、そして「クラウディア」と兄の「クロード」という名のワイン2本セット(拍手!)
GMOインターネット( 株) 様からは、2万円クーポン。また希望者全員に3,000円クーポン
さくらインターネット( 株) 様からは、2万円クーポン
Canonical Japan様からは、本家Ubuntu 14.04 LTSのDVD
写真 Canonical本家のDVDパッケージはけっこうクール
そして、グリー( 株) 様からは、素敵な会場を提供いただきました。
そしてなにより、楽しい時間と機会を作っていただき、ご尽力いただいたUbuntu Japanese Team様のスタッフの方々、ありがとうございました。
参加された皆さま、そしてこのレポートを最後まで読んでいただいた読者の方々に感謝をしつつ、本レポートを終わりたいと思います。