今回は注目を集めるUbuntu GNOME 17.04の変更点と、これからUbuntuを使い始めるならGNOMEがぴったりということで入門者向けの情報も2ページ目 以降に掲載します。
今から始めるならUbuntu GNOME
Ubuntu Weekly Topicsで既報 のとおり、Ubuntu 18.04 LTSまでに採用するデスクトップ環境がGNOMEに戻ることになりました。
Ubuntu GNOME 17.04のリリースアナウンス では、おもに次の事柄が言及されています。
Ubuntu 17.10からGNOMEになる予定であること
そのためUbuntu GNOMEはリリースしないこと
Ubuntu 17.04からでもUbuntu GNOME 17.04からでも、Ubuntu 17.10にアップグレードできる予定であること
つまり、Ubuntu GNOME 17.04がUbuntu GNOMEとしての最後のリリースとなります[1] 。
ちなみにUnityに移行したのが11.04なので(図1 ) 、7年ぶりに純粋なGNOMEに戻ることになります。
図1 最後にGNOMEを採用したUbuntu 10.10の頃はまだ2.32だったため、戻ったとはいえルック&フィールは完全に異なる
これからUbuntuを使い始める方は、最短で半年後、最長でも9ヶ月後には標準のデスクトップ環境がGNOMEになってしまうので、Ubuntu GNOMEをインストールしてGNOMEに慣れておくのがいいでしょう。
Ubuntu GNOME 17.04≒GNOME 3.24
まずはおなじみ各パッケージのバージョンの比較からです。16.10でもアグレッシブに更新されていましたが、17.04ではさらにそれが進みました。その結果、おおむねという但し書きはつくものの3月22日 にリリースされたばかりのGNOME 3.24 にアップデートしています。前出のリリースアナウンスにもあるとおり、Ubuntu
GNOMEとして最新のGNOMEでリリースしたのはこれが最初(で最後)です。
では具体的に見てみましょう。
表1 Ubuntu GNOME 17.04のコンポーネント(抜粋)
3.8.x
vino
3.14.x
gnome-user-share
3.20.x
gcr, gnome-bluetooth, gnome-keyring, gnome-terminal, gkbd-capplet, nautilus
3.22.x
aisleriot, file-roller, gedit, gnome-characters, gnome-contacts, gnome-mahjongg, gnome-screenshot, gnome-software, gnome-themes-standard, yelp
3.23.X
gnome-font-viewer, dconf-editor, gnome-sushi
3.24.x
adwaita-icon-theme, baobab, cheese, eog, evince, gdm3, gnome-backgrounds, gnome-calendar, gnome-calculator, gnome-color-manager,gnome-control-center, gnome-disk-utility, gnome-documents, gnome-getting-started-docs, gnome-getting-started-docs-ja, gnome-initial-setup,
gnome-logs, gnome-maps, gnome-mines, gnome-music, gnome-online-accounts, gnome-photos, gnome-session, gnome-screenshot, gnome-settings-daemon, gnome-settings-daemon-schemas, gnome-shell, gnome-shell-extensions gnome-sudoku, gnome-system-monitor, gnome-tweak-tool,
gnome-user-guide, gnome-weather, mutter, simple-scan, totem, zenity
パッケージ情報
17.04からはbraseroがインストールされなくなりましたが、nautilus-extension-braseroパッケージはインストールされているため、CD/DVDライティング自体は可能です。
gnome-software-plugin-flatpakパッケージがインストールされるようになったことにより、GNOMEソフトウェアでFlatpakパッケージのインストールができるようになりました。
gnome-session-waylandパッケージがデフォルトではインストールされなくなりましたが、gnome-sessionパッケージに統合されたことによるものであり、Waylandセッションは選択できます。
EvolutionとGnuPGフロントエンドのseahorseもデフォルトではインストールされなくなりました。特に前者のインパクトは大きく、Thunderbirdもインストールされていないため、メールクライアント(MUA)が何もインストールされていません。
GNOME 3.24の新機能
GNOMEそのものの変更点としては設定関連が多いです。ディスプレイの設定にナイトライトモードが追加されました。日が落ちて暗くなったら自動的に画面の色をやや暖色にし、睡眠しやくすなるというものです(図2 ) 。同じような時期にリリースされたWindows 10のアップデートにも同じような機能が実装されているのが興味深いところです。
ほかにもプリンター(図3 、図4 )とオンラインアカウントとユーザーの設定画面が新しくなっています。
図2 新しく実装されたナイトライトモード
図3 Ubuntu GNOME 16.10 (GNOME 3.20)でのプリンター設定画面はこうだった
図4 このバージョンからは設定が一つのボタンにまとまってわかりやすくなった
Ubuntu GNOME入門
Ubuntu GNOMEやGNOMEそのものの紹介をすると本連載1回分ではとても足りないため、ハマりやすい初歩的なことのみを紹介します。
インストール
ライブイメージから起動した後にライブセッションに入ると、どのようにインストールしたらいいのか、わかりにくいです。その場合には左上の「アクティビティ」ボタンをクリックするか、Superキー(WindowsではWindowsキー)を押し、左側のバーを表示してください。この状態をアクティビティ画面、左側に表示されたバーを「ダッシュ(Dash) 」といいます。すると一番上にインストーラーを起動するアイコンがあるので、これをクリックしてください(図5 ) 。
図5 インストールアイコンはダッシュの一番上にある
初期セットアップ
インストール完了後、初回ログイン時にセットアップ画面が起動します。ここで正しく設定しておかないと日本語が打てませんので注意してください。
16.10(第442回) でも紹介しましたが、今一度もう少し詳細に解説します。
ログイン直後には「ようこそ」が表示されています。右上の「次へ」をクリックします(図6 ) 。
図6 初回ログイン時に起動される「ようこそ」
次がポイントの「入力」です。まずは現在接続されているキーボードレイアウトが表示され、チェックが入っているはずです(図7 ) 。続けて下の「︙」をクリックします。すると下に検索欄が表示されるので、「 mozc」などで検索して表示されたらチェックを入れ、「 次へ」をクリックします(図8 ) 。
仕様上キーボードレイアウト(今回の例では「日本語」 )と入力メソッド(今回の例では「日本語(Mozc)」 )はそれぞれ一つずつは必要です。
図7 まずは現在接続キーボードレイアウトにチェックが入っているか確認する
図8 mozcで検索すると表示されるため、チェックを入れる
位置情報サービスは特に理由がない場合は「オフ」が無難でしょう(図9 ) 。「 次へ」をクリックします。
図9 簡単に設定を変更できるので、どちらでもあまり悩む必要はない
「オンラインアカウント」はGNOME Shellを使用するメリットの一つですが、ここでは設定しません(図10 ) 。「 スキップ」をクリックしてください。なお、前のバージョンでは「ownCloud」だったのが、このバージョンでは「Nextcloud」になっています。
図10 ここでは設定を省略するが、設定画面の「オンラインアカウント」からいつでも追加できる
これで設定は終わったので、「 Start Using Ubuntu」をクリックします(図11 ) 。
図11 設定を完了しログインする
続けてヘルプが表示されるため、必要に応じてご覧ください(図12 ) 。
図12 ヘルプは翻訳されている部分とされていない部分がある
さらに右上のキーボードレイアウトインジケーターをクリックし、「 日本語(Mozc)」をクリックします(図13 ) 。
図13 実際にMozcを使用する段階になってからでもいいが、最初に設定しておくのがおすすめだ
これで最低限必要な初期設定は終わりです。
ウィンドウの最小化ボタンと最大化ボタンがない
GNOME Shellのタイトルバーや、geditなどにみられるタイトル以外にも機能を持ったヘッダーバーには、ウィンドウの最小化と最大化ボタンがありません(図14 ) 。
図14 左側のマインスイーパーがタイトルバー、右側のgeditがヘッダーバー
最小化と最大化ボタンをつけたい場合は、「 アクティビティ」 -ダッシュの一番下の「アプリケーションを表示する」 -「 ユーティリティ」 -「 Tweak Tool」とたどってTweak Toolを起動してください。もしメニューをたどるのが面倒な場合には、アクティビティ画面で「tweak」などで検索すると絞り込んで(図15 )Tweak Toolを起動します(図16 ) 。
そしてTweak Toolの「タイトルバーボタン」設定項目に「最大化」と「最小化」があるので、これらを「オン」にします。
図15 アクティビティ画面でキーワード検索できる
図16 「 最大化」と「最小化」を「オン」にするとボタンがつく
フォルダーが前に表示されない
ファイル(Nautilus)の初期設定は、Ubuntuではフォルダーの後ろにファイルが表示されるのに対して、Ubuntu GNOMEではファイルやフォルダーに関係なく名前順に表示されるため(図17 ) 、使いにくいかもしれません。
図17 Ubuntu GNOMEではこのようにファイルがフォルダーの前に表示されることがある
Ubuntuのように表示させたい場合には、画面上のトップバーにある名称が表示されているところをクリックして、アプリケーションメニューを表示してください(図18 ) 。そして、このメニューにある「設定」をクリックし、「 フォルダーをファイルより前に配置する」にチェックを入れます(図19 ) 。
図18 アプリケーションメニューの「設定」をクリックする
図19 「 フォルダーをファイルより前に配置する」にチェックを入れる
拡張機能
GNOME Shellの特徴の一つとして、拡張機能で見た目や使い勝手を変更できます。その拡張機能はWebサイト で配布されていますし、Ubuntuのリポジトリで提供されているものもあります。
Webブラウザーの選択
Webサイトからインストールする場合、Firefox 51以前であれば話が簡単だったのですが、52以降は話がやや難しくなっています。というのも、GNOME Shellの拡張機能はWebブラウザーからインストールなどの管理を行えるのですが、これはNPAPIプラグインで実装されています。しかしFirefox 52からはNPAPIプラグインが原則として有効ではありません。
その対応のため、Ubuntu GNOMEではchrome-gnome-shellというGoogle Chrome/Chromium用パッケージがインストールされています。しかし、これはもちろんFirefoxからは使用できず、Chromiumはインストールされていません。
よって、次の2つの選択肢があります。
Firefoxにアドオンをインストールする
Chromiumをインストールする
それぞれ見ていきましょう。
Firefoxにアドオンをインストールする方法は、GNOME Shell拡張機能のWebページに説明があります(図20 ) 。「 Click here to install browser extensions」をクリックし、指示に従ってインストールします。完了後、再読込すると先ほどまで表示されていた情報が消えており、拡張機能がインストールできるようになります(図21 ) 。
図20 Firefoxでアクセスすると、Webブラウザーでの対応が必要である旨の注意が表示される
図21 この表示になればFirefoxから拡張機能が管理できる
Google Chrome/Chromiumを使う方法は、それらをインストールするだけです(図22 ) 。今回は例として後者をインストールしています。
図22 Chromiumはソフトウェアからインストールできる
インストールと管理
続いて、実際にDash to Panel という拡張機能をインストールしてみます。まずは拡張機能のトップページ で"dash to"で検索します(図23 ) 。表示された「Dash to Panel」をクリックすると個別のページに移動します(図24 ) 。「 OFF」になっているスイッチをクリックするとインストールするかどうか質問されるので、「 インストール」をクリックします(図25 ) 。即座に適用され、GNOME
Shellのレイアウトが変更されます(
図26 ) 。
図23 "dash to"で検索する
図24 個別ページの右上にある「オフ」をクリックする
図25 「 インストールする」をクリックする
図26 インストールが完了すると即座に反映する
インストールされている拡張機能の削除とアップデートと設定変更は、上部に表示されている「Installed extensions」をクリックします(図27 ) 。するとインストールされている拡張機能が表示されます。Ubuntu GNOMEではあらかじめgnome-shell-extensionsパッケージがインストールされており、これに含まれる拡張機能と、先ほどインストールした「Dash to Panel」が表示されているはずです。
各拡張に表示されている緑の歯車アイコンをクリックすると、アップデートできます。また、水色の工具アイコンをクリックすると設定を変更でき、赤いバツアイコンをクリックすると削除できます。ただし前述のとおり「Dash to Panel」拡張以外はどれもパッケージに含まれているものであり、アップデートや削除もできますが、しないほうがいいでしょう。
図27 「 Installed extensions」で拡張機能を管理できる
リポジトリからインストール
リポジトリにも著名な拡張機能が多数存在します。インストールと管理がパッケージという単位で管理ができるため、そういうことが必要な場合には便利でしょう。また、よくも悪くも通常はアップデートしないため、そのバージョンのGNOME Shellで確実に動くことが期待できます。
GNOMEソフトウェアで拡張機能のパッケージを検索してもあまりヒットしないため、端末で"apt search gnome-shell-extension"コマンドを実行して探し、必要なパッケージをインストールするのが簡単です(図28 ) 。
図28 dashtodockパッケージを端末からインストールした
この方法ではWebサイトからインストールするのとは違い、インストールしただけでは有効になりません。一度ログアウトして再ログインするか、GNOME Shellを再起動する必要があります。
GNOME Shellのみを再起動する場合、Alt+F2キーを押し、中央に表示された「コマンドを入力」ダイアログに"r"とだけ入力し、エンターキーを押します(図29 ) 。その後、前出のTweak Toolを起動し、「 機能拡張」タブを開いてインストールした拡張機能を「オン」にしてください(図30 ) 。拡張機能の個別の設定も変更できます(図31 ) 。
図29 GNOME Shellを再起動するコマンド
図30 Tweak Toolの拡張機能タブでオンにする
図31 歯車ボタンをクリックすると設定画面が表示される
おすすめの拡張機能
Dash to Dock は必須ともいえる拡張機能です。その名のとおり画面左に表示されるダッシュ(Dash)をDockのように表示します。原則としては常に表示されるものの、全画面の状態では自動的に隠れるようになるります。それ以外にも機能が豊富です。「 gnome-shell-extension-dashtodock」というパッケージ名でリポジトリにあります。
GNOME Shellに対応していない通知アイコンは左下に表示されるのですが(図32 ) 、これは不便であり、やはり右上に表示してほしいです。そのような場合はTopIcons Plus をインストールしましょう。「 gnome-shell-extension-top-icons-plus」というパッケージ名でリポジトリにあります。インストールした直後ではトップバーの中央に表示されるため、設定を変更して右側に表示されるように設定しましょう(図33 ) 。
図32 clipitパッケージをインストールして起動すると、アイコンが右下に表示される
図33 「 Tray horizonal alignment」を「Right」にするとトップバーの右側に移動する
GNOME Shellでサスペンドしたい場合、トップバーの右にあるシステムメニューを表示し、Altキーを押すと電源ボタンがサスペンドボタンに変わります。しかし常時サスペンドボタンを表示させてもよいでしょう。そのためにはSuspend Button をインストールしてください(図34 ) 。「 gnome-shell-extension-suspend-button」というパッケージ名でリポジトリにあります。
図34 Suspend Button拡張をインストールし、有効にするとシステムメニューにサスペンドボタンが表示されるようになる
表示しているウィンドウを手軽にタイル表示にしたい場合、ShellTile をインストールするといいでしょう。
ほかにもたくさんありますので、お気に入りの拡張機能を探してみてください。