Ubuntu Weekly Recipe

第567回 令和を言祝ぐ

この記事を読むのに必要な時間:およそ 5 分

みなさん,令和ですよ,令和。令月で気淑く風和らぐ令和ですよ。しかも十連休の真ん中あたりに令和になるなんて,令和さんまじやばい。さすが時和すだけのことはある。もういっそのこと毎日が令和だったらいいのに。ということで今回はUbuntuと令和のお話です。

なぜ令和?

念のため,まずは本連載の趣旨を確認しておきましょう。

Ubuntuの強力なデスクトップ機能を活用するための,いろいろなレシピをお届けします。

最近はデスクトップに限らずサーバーや各種デバイス・サービスの紹介もしているものの,基本的にUbuntuに関連した記事となります。Ubuntuは内部的にはUNIX時間を採用しており,その単位は秒です。いろいろなコマンドやツールは月日の表示に対応しているものの,おそらくほとんどは西暦が標準でしょう。つまりUbuntuを使う上で日本の元号に触れることはほぼありません。

ではなぜ今回,Ubuntuと令和の話をするかと言うと理由は単純で,この記事が公開される日が改元の日でもある5月1日だからです。それだけです。そもそも大型連休の中日にUbuntuの記事を読むような人は,よっぽどUbuntu大好き人間か,休日出勤という名の連休を楽しんでいる奇特な人か,休日にも関わらず本記事の編集・査読と公開設定をしてくれる本連載の編集氏だけのはず。であれば大抵の悪ふざけは許してもらえると期待して,今回はいつもと趣向を考えた,あまり活用できないレシピをお届けすることにしたのです。

さて,Ubuntuは2004年10月にリリースされたので,平成16年生まれです。よって日本の元号が変わるのは今回がはじめての経験となります※1)⁠改元どころか2000年問題も経験していない未成年です。実際,Ubuntuと同じく,改元は人生で初めてだという読者諸氏も多いことでしょう。きっと多いことでしょう。

※1
実際のところLinuxカーネルの登場が平成3年(1991年)なので,昭和生まれのLinuxディストリビューションは存在しないはずです。ただしUnix系のソフトウェアはたまに時空を超えるので,昭和44年(1969年)末から昭和45年(1970年)あたりに生まれたことになっているものも存在するかもしれません。

しかもUbuntuは4月19日に19.04がリリースされたばかりです。つまり次の元号が発表された4月1日ごろにはすでにリリース向けのフリーズが迫っている状態であり,改元に伴う変更を取り込むには時間がない状態でした※2)⁠第556回の末尾でも少し言及はされていますが,結果的に19.04でもほぼ何も入っていない状態であり,正式な対応が行われた各種パッケージを取り込むのは,19.10以降になると思われます※3)⁠

※2
これはDebian GNU/Linux 10(buster)のリリースに向けてフリーズ期間に入っているDebianも同じで,対応できそうなものから随時取り込んでいっているようです
※3
Ubuntuのパッケージリポジトリは「リリースされた時の最新版」をできるだけ採用し,リリース後は「そのバージョンを維持する」ポリシーとなっています。リリース後にアップストリームで新しいバージョンが出たとしても,その新しいバージョンには追随せず,不具合対応だけ必要に応じて取り込むポリシーです。このため,各種ソフトウェアが令和に対応したとしても,そのバージョンが19.04リリースまでに間に合わない場合は取り込み用がないのです。ただしFirefoxなど一部のパッケージは例外扱いとなっています。

Ubuntuを令和対応にする

さて,19.04のリリースに令和対応が行われていないとしても,個別のソフトウェアの設定だけで対応可能な場合も多々あります。ここからは,ソフトウェアごとの対応方法を確認していきましょう。

日本語入力

元号を最も使う可能性があるケースは,日本語入力において元号そのものを入力することでしょう。UbuntuだとESMに入ったprecise以外はかな漢字変換システムとしてMozcを採用しています。よってMozcが対応する必要があります

Mozcに関して言えば,令和対応をUbuntuの公式リポジトリで提供予定です。少なくとも16.04,18.04,18.10,19.04がアップデートされる見込みです。さらにDebianや開発版の19.10では修正が既に取り込まれています。

もし急ぎで対応したいなら,個人辞書に設定しておきましょう。画面右上の言語パネルから「ツール」「単語登録」を選択します。品詞は「名詞」であとはそのままで良いでしょう。

図1 単語登録で令和を追加

画像

ちなみに19.04だとmozc-utils-guiが最初からインストールされていないために,⁠ツール」が表示されないかもしれません。その場合は,システム設定の「地域と言語」から「インストールされている言語の管理」を選択し,表示される指示に従ってください。もしくは「sudo apt instal mozc-utils-gui」を直接実行する方法でもかまいません。

他にも今後は太上天皇の略称ではないほうの「上皇」や皇太子ではない「皇嗣」なんて単語を入力する機会が増えることになりますが,こちらはいずれも登録済みのようです。

かな漢字変換というカテゴリで言うと,anthyやskkdicなども辞書の更新が必要です。いずれもMozcのように個人辞書の登録で対応できるはずです。

ちなみにMozcや他のかな漢字変換には「ことし」「2019ねん」と入力すると「平成31年」⁠令和元年」と変換してくれる仕組みも存在します。これも個人辞書で回避可能ではあるので,必要なら登録しておきましょう。将来的なMozcパッケージのアップデートでは,このタイプの変換も令和に対応する見込みです。

フォント

「令」「和」も常用漢字なので,一般的な日本語フォントであれば表示可能です。これに関して何か特別な対応を行う必要はありません。

フォントで影響してくるのは「合字」です。⁠㍻」「㍼」の令和版で「㋿(U+32FF)⁠となります。令和対応版のMozcなら「れいわ」で合字の令和も変換候補に出てきますが,そうでないなら「U+32FF」と入力してタブキーで変換すると出てくるはずです。

U+32FFは5月7日にリリース予定のUnicode 12.1において,⁠U+32FF SQUARE ERA NAME REIWA」として定義されます。この定義に合わせて各種フォントや文字を扱うソフトウェアが対応することになるのですが,最近のUbuntuで標準的に使われているNoto Sansフォントについては,4月10日にU+32FF対応版がリリースされています。Noto Serifのほうは,源ノ角明朝も含めてリリースされていないようです。

V2.001のSourceHanSans.ttcをダウンロードしてインストールしてみましょう。CJKすべて含むサイズの大きなファイルなので注意してください。

$ mkdir -p ~/.local/share/fonts
$ cp ~/ダウンロード/SourceHanSans.ttc ~/.local/share/fonts/
$ fc-cache -f -v

これで「㋿(合字の令和)⁠を表示できるようになりました。

図2 geditで合字の令和を表示した例

画像

「令」の字は下半分が「マ」になる異体字も存在します。通常の「令」「U+4EE4」で,⁠令󠄂(マのほう)⁠U+4EE4 U+E0102です。残念ながらNotoフォントは令の異体字に対応していません。もし「マの令」を使いたいなら,別のフォントをインストールしましょう。たとえばIPAmj明朝フォント(fonts-ipamj-mincho)「マの令」に対応しています。

図3 LibreOfficeでマの令を表示した例

画像

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。