今回は変則的にLibreOffice 6.2.xの変更点について紹介します。活発に開発されているLibreOfficeはマイナーバージョンアップでも仕様が変更されることがあり、最近の新元号対応、Qt/KDE5、OpenJDKについてお知らせします。最後にはカンファレンスの案内もあります。
UbuntuとLibreOffice 6.2
まずUbuntuでLibreOffice 6.2を使用する方法ですが、19.04には6.2.2があらかじめインストールされています。近日中にStable Release Update(SRU)のプロセスを経て、6.2.3にアップデートされる見込みです(本記事公開時点)。
Snapパッケージ版のLibreOfficeはこれほど厳密なルールはなく、よりスピーディに最新版が使用できるようになります。第567回で既報のとおり、すでに6.2.3にアップデートしています。ただし相変わらずWindowsのファイル共有(Sambaを含む)経由でのファイルのアクセスはできません。
Flatpak版にはこういった制限はありません[1]。
令和対応
新元号である令和への対応も、第567回で既報のとおり6.2.3で行われています。第567回ではCalcで和暦を表示したところが紹介されていますが[2]、Writerだと「挿入」-「フィールド」-「他のフィールド」で「ドキュメント」タブの「フィールドタイプ」を「日付」にし、「書式」を変更することによって和暦で挿入できます(図1)。
Qt/KDE5サポートの変遷
Qt/KDE5のサポートに関する詳細は『新春特別企画 LibreOfficeの2018年振り返りと2019年』をご覧いただきたいのですが、6.1からVCLプラグインにQt/KDE5向けのgtk3_kde5が、6.2からqt5とkde5が追加されました。
問題はデフォルトでビルドされるかどうかです。6.1ではgtk3_kde5がデフォルトでビルドされていたものの、6.2ではqt5/kde5がデフォルトでビルドされるようになり、gtk3_kde5は外されてしまいました。もちろんソースコード上は残っているため、自分でビルドすれば問題とはなりませんが、LibreOfficeを自力でビルドするのはなかなかに骨が折れます[3]。
qt5/kde5のVCLプラグインには多数の問題が見つかっており、今月末で6.1のサポートが切れることによってqt5/kde5がデフォルトのままでいいのか?という問題提起がされました。結果、qt5/kde5はデフォルトのままにするがgtk3_kde5 VCLプラグインもデフォルトでビルドする方針になりました。
Ubuntuで使用できるLibreOfficeにどのような変化が起こるのかは現時点では不明ですが、必要な場合はバグ報告でgtk3_kde5 VCLプラグインを有効にできるかどうか掛け合ってみてください。
余談ですが『新春特別企画』で言及したqt5/kde5のVCLプラグインの不具合である文節の区切りがわからないという問題は、6.3で解決されます(図2)。
OpenJDKの対応
LibreOfficeを使用する上でJava実行環境のインストールは必須とは言えなくなっていますが、それでもいくつかの機能を使用するためには必要です。そしてOracleによるJava実行環境のサポートポリシー変更はいまだに大きな影響を与えています。Ubuntuではあまり影響がないのは不幸中の幸いではあります[4]。
そんな中、OpenJDKの最新版で"java.vendor"を"Oracle Corporation"から"Private Build"に変更するという仕様変更があり、Java実行環境が認識しなくなる不具合が報告されました。それがアップストリーム(LibreOffice)にも報告され、修正されました。大幅なロジックの変更が見られます。ちなみにUbuntuでの修正はこれで、かなり場当たり的なものになっています。
アップストリームによる修正はより広範囲に影響があり、例えばOpenJDKの派生版の一つであるAdoptOpenJDKが提供しているJava実行環境をインストールしても認識されるようになりました。UbuntuでもAdoptOpenJDKを使用したい場合は、PPAからインストールすると簡単です。「hotspot」と「openj9」の2種類から選択できますが、通常は前者でいいようです。
図3は19.04のLibreOffice 6.2.2で、OpenJDK 12とAdoptOpenJDK 11をインストールしているにもかかわらず認識していません。図4は19.04の6.2.3で、同じくOpenJDK 12とAdoptOpenJDK 11をインストールしているにもかかわらず前者しか認識していません。図5は6.2ブランチの開発版ですが、このように6.2.4以降は両者ともに認識されるようになります。
この影響はUbuntuよりもWindowsのほうが大きいかもしれません。というのもAdoptOpenJDKはWindows版でもインストーラーが配布されているため、インストールが簡単です。一方OracleもWindows用のOpenJDKを配布していますが、インストーラーはありません。よって、これまで使用していたOracleJDKから乗り換えるのは、AdoptOpenJDKが最良であると筆者は考えます。インストールが簡単でもLibreOfficeで認識しないと意味がないのは論を俟たないでしょう。