Ubuntu Weekly Recipe

第628回PCの初期動作を確認する

今回はUbuntuを使用し、新しく組んだPCなどで正しく動作するか確認する方法を紹介します。

自作PCとテストの重要性

昨今、PCパーツをバラバラに購入して組み立てる、いわゆる自作PCは価格的なメリットはあまりありません。メーカー製のPCが通常では考えられない価格で購入する方法を紹介しているWebサイトをご覧になったことがあるかもしれません。スペックも充分なものであり、これを購入すれば通常の用途ではあまり困ることはないでしょう。

ただ、第626回第627回で紹介したようなゲームをプレイしたいので高性能なGPUを搭載したビデオカードを積みたいといった場合、そもそも筐体に入らないといったこともありえます。現在市販されているGPUはAMDかNVIDIA製で、当然好みがありますし予算もあるため、どれでもいいというわけにもいきません。ビデオカードにポンと10万円出せる人は少数でしょうし、CPUだって同様です。

そう考えていくと、自分の用途や設置場所に応じてPCパーツを購入し、組み立てるのは理にかなっているといえます。PCパーツ単体は価格の上下や随時新モデルの販売開始があり、購入時期が非常に難しいですが、ほしい時が買いどきです。

もちろん、PCパーツの選定はそれなりに前提知識が必要です。あとから考えるとパーツの選定にしくじったなんて話はよくあり、そういうパーツを集めてまた1台組んでしまうのも面白いですが、PCが何台あっても使い切れるなんて人は極めて少数でしょう。

PCパーツはある意味選び放題で、メーカー製PCよりも高機能で高耐久性のものを選択するのはさほど困難ではありません。もちろんその分価格は高くなりますが。

個々のPCパーツを揃えたとしても、それを組んで1台のPCにした場合に正しく動作するかというのはまた別の話です。自信がない場合はPCパーツショップにそのようなサービスがあれば組んでもらい、初期動作確認もやってもらえるところもありますが、自分でできるようになるとまた楽しさは格別です。自分の選定したPCパーツが、自分の意図した性能を発揮するのを見るのはとても楽しいことです。

ではどうやって正しく動作するかを確認するのか、というのが次の問題になり、ようやく本題です。ここではその方法を紹介します。

「ディスク」のベンチマーク

USBメモリにUbuntu 20.04 LTSのインストールイメージをコピーし、組み上げたPCに接続して起動します。真っ先に確認してほしいのは、⁠ディスク」でインストール先のベンチマークを取ることです。リード(読み込みテスト)はさておき、ライト(書き込みテスト)はフォーマット前でないと実行できません。

昨今新規に組んだPCのインストール先がHDDということはないでしょう。通常SSDになるでしょうし、HDDにする予定なら強く再考を促したい程度にはSSDにすることを強く推奨します。

SSDは接続方法が大きく3種類あります。通常のSATA接続、M.2スロットのSATA接続、M.2スロットのNVMe接続で、NVMeが一番高速です。NVMeもGen3と4があり、後者のほうがスペック上はより高速です。

接続方法はさておき、速度は公称値が公開されています。よって、それと同等の速度が出ているかどうかを確認します。

Dockから「Disk」を起動し、ベンチマークを取るSSDを選択してハンバーガーメニューの「Benchmark Disk」をクリックします図1⁠。続けて「Benchmark Settings」が表示されるので、設定を確認して「Start Benchmarking」をクリックしてください図2⁠。そして「Start Benchmark」をクリックすることで、実際にベンチマークが開始されます図3⁠。図4が結果です。⁠Sample Size」がデフォルトの「10MiB」だとすぐに終了します。⁠100Mib」などもっとサイズを大きくしてテストしてみるのもいいでしょう。

図1 ⁠Benchmark Disk」をクリックする
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図2 ベンチマークの設定を決定する
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図3 ⁠Start Benchmark」をクリックしてベンチマークを開始する
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図4 ベンチマークの結果。ライトが遅い
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なお今回使用したのはIntelの「SSDPEKKW256G8XT」というSSDで、スペックと図4を比較するとライトの速度が1/3くらいしか出ていませんが、おそらく正常です。最近のSSDは公称値と比較してこれほどの速度差が出ることは少なく、発熱によって速度が下がっている(サーマルスロットリングが発生する)ことも考えられます。公称値に達しない場合はその原因を探ってみてください。

Memtest86+

Ubuntuのインストールが完了し、再起動してアップデートを適用するなどして動作しそうなことがわかったら、Memtest86+を実行するといいでしょう。Memtest86+はその名のとおりメモリのテストプログラムです。

メモリに異常がある場合、原因を探るのがわりと困難です。よって、なるべく早い段階でメモリテストを行い、問題がないことを確認しておくのがおすすめです。メモリは通常、そのまま使う分には使用中に壊れることはありません。少なくとも筆者は経験がありません。

Legacy BIOSでUbuntuの起動メニュー(GRUB)が表示される場合は「Memory test (memtest86+)」という項目があるので図5⁠、ここでエンターキーを押すとテストが開始します[1]⁠。

図5 GRUBのメニュー
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100%完走するまで待つとかなりの時間がかかるため、どのぐらい実行するのかは悩ましいですが、20〜30%くらいで問題がなければおおむね問題ないと考えられるため、そのあたりで切り上げるか、一晩実行しっぱなしにするか、100%を目指すか、そのあたりは個々の判断で行ってください。

ちなみにメモリに異常が見られた場合は、原則としては不良品として交換になります。あるいは(最近はあまり聞きませんが)相性問題が発生している可能性もあります。このような事態になった場合にメモリの交換サービスを提供しているPCパーツショップもあるため、そのようなサービスを使用することも検討しましょう。

GtkStressTesting(GST)

最後に紹介するのは、まさに今回の用途にぴったりな、負荷をかけるためのアプリケーションであるGtkStressTesting (GST)です。CPUとメモリに負荷をかけることができるようですが、後者は未実装のようです。負荷をかけるだけではなく、さまざまな状態を確認することもできます。

まずはインストールしてみましょう。DebianパッケージやSnapパッケージにはなっていないため、Flatpakパッケージでインストールします。

Flatpakとリポジトリ(Flathub)のセットアップから行う場合は、次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt install flatpak
$ sudo apt install gnome-software-plugin-flatpak

一度ここで再起動しましょう。

GSTのインストールには次のコマンドを実行してください。

$ flatpak install flathub com.leinardi.gst

インストール後メニューから起動してください。図6が起動直後の画面です。左上の「Read all」をクリックし、パスワードを入力するとメモリの情報も表示するようになります。

図6 起動直後のGST
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一番左のメニューでテストの方法を選択し、次の項目で時間を設定して、⁠Start」をクリックして開始してください図7⁠。指定した時間だけテストを実行します。CPUに負荷をかけると温度が上がり、冷却が追いつかないと落ちたり再起動がかかったりします。個人的な体験では、2時間ほど負荷をかけ続けても問題がなければ、安定して動作すると判断しています。

図7 テスト中。CPUの負荷と温度が上がっていることがわかる
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以上これらのテストを実行し、市販PCに匹敵するレベルで安定して動作することを確認してください。

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