Ubuntu Weekly Recipe

第630回 Ubuntuで天体写真のスタッキングに挑戦する

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第343回では,連続して撮影した複数の写真を繋げて,タイムラプス動画やスタートレイル動画を作成する方法を紹介しました。今回は複数の写真を使った「スタッキング」に挑戦してみましょう。

写真のスタッキングとは?

スタッキングとは複数の写真を重ね合わせて平均化する手法で,高感度ノイズや画像のゆらぎの軽減を目的として,主に天体写真の分野でよく利用されています。

星は非常に暗い点光源です。暗い被写体を撮影する時は,シャッタースピードを遅くして光をより多く取り込むのが定石ですが,星は地球の日周運動によって常に動き続けているため,うかつに長秒露光をかけると点がブレて線になってしまいます。そのため星を撮影する時は,センサーの感度を上げてシャッタースピードを稼ぐか,いっそ星を静止させるのを諦めるか(いわゆるグルグル写真にする)の二択となります。

図1 星を静止させることを諦めた例。星は動いてしまうが,超低感度で撮影できるため,非常にクリアな星景写真になる

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当然ながら,星を静止させて写したい場合は,高感度で撮影するしかありません※1⁠。

※1
「いやいや,赤道儀がありますよ」などと思った方がいるかもしれませんが,そのあたりは本記事の対象外となりますので,ご了承の上,沼にお帰りください。

センサーの感度を上げると,いわゆる「高感度ノイズ」が画像全体に対してランダムに発生します。ランダムに発生するというのがポイントで,連続して撮影した写真の特定のピクセルに注目すると,そのピクセルにノイズが発生しているカットと発生していないカットがあることになります。そこで複数のカットを重ねて平均化すれば,ノイズを軽減できるわけです※2⁠。

※2
穴の空いた靴下を重ねばきすることで,穴を塞ぐのをイメージするとわかりやすいかもしれません。

単に画像を重ねて平均化するのはそれほど難しい作業ではなく,ImageMagickのconvertコマンドでも可能です。しかし前述の通り,天体は常に動き続けているため,あるカットと別のカットでは,天体の位置が微妙にズレて写っています。そのため,カットごとに微妙なズレを補正しながら画像を重ねていく必要があります。考えただけでも非常に面倒くさい作業ですが,カットごとの天体の位置を検出し,自動的に位置合わせをしてくれるスタッキングアプリというものが存在します。それが今回紹介するSirilです※3⁠。

※3
なお商用の天体写真処理アプリとしては,ステライメージなどが有名です。

Sirilのインストール

SirilはUbuntuのリポジトリにパッケージが用意されているため,APTで簡単にインストールできます。

$ sudo apt install siril

インストールが完了したら,GNOMEのアクティビティから「siril」と検索してアプリを起動してください。

画像のコンバートとシーケンスの作成

あらかじめ,スタッキングする複数の画像を用意しておいてください。ここでは例として,筆者が撮影した6枚の画像をスタックして,ノイズ感の軽減を確認してみます。

図2 スタックの元となる写真のうちの一枚。このカットには残念ながら赤い破線で囲った部分に人工衛星が写り込んでしまっているが,これもノイズ同様,スタッキングによって除去することができる。

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まずJPEG画像を,Sirilが使用するFITS形式※4に変換する必要があります。⁠File conversion」タブを開いたら,スタックしたいファイルすべてを「Source」にドラッグ&ドロップして追加してください。

※4
FITSはFlexible Image Transport Systemの略です。天文学の分野でよく利用されており,単なる画像ファイルではなく,天体に関する様々なデータセットも同時に格納できるフォーマットです。

図3 直接ドラッグ&ドロップするか,Addをクリックしてファイル選択ダイアログからスタックしたいファイルを追加する

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Sirilはスタックする一連のファイルを,シーケンスという単位で管理します。⁠Sequence name」に任意のシーケンス名を入力してください。

この際,変換した画像やシーケンスファイルはワーキングディレクトリ内に保存されます。デフォルトは「~/Pictures」ですが,もしも異なるディレクトリを指定したい場合は「Change dir」をクリックして変更してください。

「Convert」をクリックすると画像が変換され,シーケンスが作成されます。

図4 変換中の状態。Output logsタブに進捗状況が表示される

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図5 変換が完了すると画像ビューアーが開き,カラー画像とRGBの各チャンネルが確認できる

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著者プロフィール

水野源(みずのはじめ)

Ubuntu Japanese Teamメンバー。理想のフリーデスクトップ環境を求めて東へ西へ……のはずが,気がついたら北の大地で就職していたインフラ寄りのエンジニア。最近レンズ沼にハマる。