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第644回 ノート表示にも対応したプレゼンテーションツールPympress

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プレゼンテーションツールと言えばImpress・PowerPoint・Keynoteが一般的ですが,編集ツールが事実上決め打ちになってしまいます。しかしながら,どうせなら好みのテキストエディターでプレゼンテーション資料も編集したいという特殊な性癖を持っている人も多いでしょう。そんな人におすすめするのがLaTeXで資料を作成できるBeamerです。今回はBeamerで作った「コメントノート付きのPDF」を用意し,マルチディスプレイで表示する際に便利な「Pympress」を紹介します。

Pyhton/GTK製のPDFプレゼンテーションツール「Pympress」

Pympress自身はPython/GTKで作られた,PDFプレゼンテーションツールです。

  • 聴講者用・発表者用の2種類のウィンドウ
  • タッチディスプレイ用のボタン
  • ソフトウェアポインター
  • 資料画面への書き込み
  • 経過時間・残り時間
  • PDFの注釈
  • Beamerが生成するノートページ
  • VLCによる動画再生
  • 設定ファイルによるレイアウト・ショートカットのカスタマイズ

上記のように今風のプレゼンテーションツールの基本機能を一通り備えたインターフェースとなっています。

Impressのようなプレゼンテーション資料の作成ツールであれば,最初から同等の機能が備わっています。ImpressでWYSIWYGに編集するなら,おそらくそのままImpressを使い続けたほうが良いでしょう。Pympressのターゲットはどちらかと言うと「Impressで資料を作りたくない」層です。特にLaTeXとBeamerを組み合わせて資料PDFを生成するユーザーをメインターゲットにしています※1⁠。

※1
とは言え「PDFであればPympressで表示できる」ため,ImpressでPDF出力してそれをPympressで利用してももちろんかまいません。用途や好みに応じてツールを切り替えられるのが,オープンでポータブルなフォーマットの利点です。

PDFであればGUIを備えた大抵のPCで表示可能です。よってマシントラブルが発生してもPDFさえコピーすれば,⁠xxのツールが入っていないので表示できない!」となることはそうそうありません※2⁠。最近だとスマートフォンからの表示に対応したプロジェクターも多いでしょう。

※2
X Window SystemやWaylandが動いていない環境でも,フレームバッファーさえあればJFBViewで表示するという手もあります。もし代替機として外部ディスプレイ出力ができないマシンを持ち出してこられたらお手上げです。

このようなPDFで発表するユーザーにとって便利なツールとしてよく使われていたのがimpress!ve(パッケージ名:impressive⁠⁠」です。本連載でも2009年に第88回プレゼンツール『impressive』を使うで村田さんが紹介しています。しかしながらimpressiveはマルチディスプレイ時の利用法に難があり,なおかつ開発が若干停滞気味でした。特にPython 3への対応の遅れは致命的で,結果的にUbuntu 20.04 LTSのリポジトリからはimpressiveは削除されてしまいます。その後,Python 3に対応した0.13.0のベータ版が出たため,20.10からは復活しているものの11月時点でもベータ版という扱いです※3⁠。

※3
この手のツールはコミット履歴等で開発の状況をある程度把握できるのですが,impressiveについてはSubversionで管理している上に,ウェブビューも独自サーバー上のただのディレクトリ表示なので,どれくらいコントリビューターがいるかも含めて,よく確認できていません。

それに対してPympressは,2009年ぐらいに登場し一時期開発が停滞したものの,その後2015年に復活したあとは活発に開発されているツールです。impressiveでできていたことはほとんどサポートしているため,よっぽど特別な理由がない限りはPympressに移行できると考えて問題ありません。

Pympressのインストール

PympressはUbuntu 20.04 LTSからリポジトリにパッケージが用意されるようになりました。よってaptコマンドで簡単にインストール可能です。Pythonパッケージなので,最新版が必要ならpipを使うという手もあるでしょう。

ただし気をつけなくてはいけないのは,Ubuntu 20.04 LTSのpympressパッケージは依存関係が足りないことです。よって次のように複数のパッケージを指定してインストールしてください。

$ sudo apt install pympress gobject-introspection gir1.2-poppler-0.18

上記はデスクトップ版のUbuntuで確認しているものの,おそらく他のデスクトップ環境でも同じはずです。ちなみにこの問題は20.10では解消されています。また,PDF内部の動画を再生できるようにするためにVLCも一緒にインストールされます。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。