Ubuntu Weekly Recipe

第648回デスクトップ環境の2020-2021年

新しい年の始めに、Ubuntuで使用できるさまざまなデスクトップ環境について、2020年に起こったことと2021年に起こりそうなことを紹介します。

新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。本連載も13周年を迎えました。

昨年は著者多忙につき休載が多く、昨年中に650回を迎えることができなかったのが少々残念であります。昨年も同じ主張をしましたが、執筆者を多様化するしかありません。

本連載のことはさておいてデスクトップ環境の開発状況は、コロナ禍であっても滞ったという話は聞いておらず、広い意味での分散開発の底力の強さを知ることになりました。また、後に詳しく紹介しますが2大ツールキットのGTKとQtがともにメジャーバージョンアップ版をリリースしたという記念すべき年でもありました。

はたしてこれからどんなことが起こるのでしょうか。本年もよろしくお願いいたします。

ツールキット最新状況

デスクトップ環境の話に入る前に、ツールキットの最新状況について紹介します。ツールキットは誤解を恐れずにいえばGUIライブラリ集であり、デスクトップ環境ではGTKQtが広く使われているのは今更説明するまでもないでしょう。

Qtの最新バージョンである6.0が昨年12月8日GTKの最新バージョンである4が昨年12月16日にリリースさました。多少なりともデスクトップ環境の開発に影響を及ぼすものと思われますが、どうなのでしょうか。

GTK4のリリースに伴って、2.x系列の最終バージョンである2.24.33が12月21日にリリースが行われ、2.x系列のサポートは終了しました。今や2.x系列はほぼ使われていませんが、有名どころではGIMPMozcの一部機能(mozc_renderer)などではまだ使われています。GIMPは次のメジャーバージョンである3.0のリリースが近づき、Mozcは検討中となっています。

ついでにGTKの話を続けると、2019年にGTK+という名称がGTKに変更されました。

デスクトップ環境

各デスクトップ環境を見ていきましょう。昨年第601回でお届けした内容の今年版になりますが、昨年の内容と今年の内容はリンクしません。

GNOME

昨年GNOMEは3.36と3.38がリリースされました。Ubuntu 20.04 LTSは前者を採用したためユーザーも多いのではないかと思います。では今年3月にリリースされるのは3.40になるのか?といえばそうはならず、40となります。繰り返しますが、3月にリリースされるのはGNOME 40です。そして9月にリリースされるのはGNOME 41になる予定です。

GNOME 4.0にならなかったのはGTK 4と紛らわしかったからということですか、確かに足並み揃えてGTK 4に移行するわけでもないのに同じバージョニングだと混乱を招くため、正しい判断のように思います。換言すると、GNOME 3.0の時のようにGTK+ 3.x(当時)に足並みをそろてリリースを行うわけではなく、KDEのように混在しつつ徐々にGTK 4へのポーティングを行っていくということです。

GNOMEが大きく変わるのはバージョニングだけではなく、ユーザーインターフェースも大きな変更が予定され、GNOMEのブログで披露されています。とはいえUbuntuではGNOMEのルック&フィールをそのまま採用しているわけではなく、Unity 7に似せるための調整が入ります。そのため、これまでとあまり大きな変更がない、ということになる可能性もあります。どのようになったのかはUbuntu 21.04リリース後に本連載で取り上げることになるかと思いますので、それまでお待ちください。

KDE

何度となく述べていますが、現在KDEというデスクトップ環境はリリースされていません。KDE Frameworks、KDE Plasma、KDE Applicationsに分かれてリリースされています。

Kubuntu 20.04 LTSはKDE Frameworks 5.68.0、Plasma 5.18.5、Applications 19.12.3で構成されています。また、Kubuntu 20.10はKDE Frameworks 5.74.0、Plasma 5.19.5.0、Applications 20.08.1で構成されています。

少し解説すると、KDE Frameworksは毎月リリース、KDE PlasmaとKDE Applicationsは4ヶ月毎のリリースです。しかし、KDE Plasmaは18ヶ月サポートのLTSがあるため、古いバージョンが混ざってリリースされています。ちなみにPlasma 5.18はLTSです。

正直なところKDEに関しては昨年の大きな変更点今年のロードマップが公開されているため、ここで触れることはあまりありません。

……と、ここまでURLを除いてほぼ昨年の原稿どおりですが、今年のロードマップを見るとQt 6に関する記述がないことに気づきます。前出のQt 6のリリースブログを読むと、本格的に開発を開始できそうなのは9月に予定されている6.2以降となりそうなので、今年は移行作業をあまり進めないということなのか、あるいはQt 5から6へのポーティングは比較的容易(という主張)なため、それほどの大仕事とは思っていないのかのいずれかであることは予想できます。

予定されている変更点としては、Plasma Waylandセッションを通常利用できるレベルに引き上げる予定であるというのは朗報でしょう。UbuntuのGNOMEでは、いまだにXセッションがデフォルトになっていますが、FedoraなどほかのLinuxディストリビューションでは数年前からWaylandセッションがデフォルトになっており、KDE Plasmaもこれに並ぶことになります。

Xfce

Xfceは、昨年12月22日に4.16がリリースされました。主な変更点はアートワークであとは小規模な変更とのことですが、Xubuntu 21.04で使用できるようになるのが楽しみです。

ちなみにXubuntu 20.04 LTSと20.10ではほとんど違いがないため、今からインストールする場合はサポート期間の長い前者がおすすめです。

次のバージョン(4.18?)に関する情報は見つけられませんでしたが、なんとか毎年リリースできるくらいの開発リソースを維持してほしいと思います。ただ、こればかりは体制の問題で大変に難しいです。

LXQt

LXQtは昨年2月24日に0.15.011月5日に0.16.0がリリースされています。

こちらも次のバージョン(0.17.0?)に関する情報は見つけられませんでした。そろそろ1.0がリリースされるのかどうなのかとか、Qt 6対応がどうなるのかとか、気になるところです。

MATE

MATEは昨年2月10日に1.24がリリースされました。ということはUbuntu MATE 20.04 LTS/20.10で使用できます。

やはり次のバージョン(1.26?)に関する情報は見つけられませんでしたが、かなり活発に開発は行われているので、近日中のリリースが期待できます。

Cinnamon

Cinnamonは昨年5月13日に4.6が、11月27日に4.8がリリースされました。いずれもパフォーマンスの向上が図られています。また4.6ではディスプレイの分散スケーリング(Ubuntuでは任意倍率のスケーリング)をサポートしました図1⁠。

図1 Cinnamon 4.6ではディスプレイの設定に「分散スケーリング」「ユーザーインターフェーススケール」がある。なお4.4では後者は「設定」タブに存在した
図1

第618回で紹介したUbuntu Cinnamon Remix20.10もリリースされており、Cinnamon 4.6.7が採用されています。このリリースノートをよく読むと、21.04では公式フレーバーにした後にさまざまな改修作業を行いたい旨が記述されているので、期待したいところです。

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