Intel Core i3-10105搭載PCでUbuntu 20.04.3 LTSを動作させ、すべてのハードウェアを認識するか、AMD Ryzen 3 PRO 4350G搭載PCと比較してパフォーマンスはどうなのかを計測します。
Intel VS AMD 4コア8スレッドモデル対決
第651回 でCPUをIntelにするかAMDにするか迷い結局後者にしたのですが、その後いろいろあって結局IntelのCPUも購入することになってしまいました。
せっかくなので、本来の用途に使用する前に第651回で組んだPCと比較してみようと思います。
具体的な構成は次のとおりです。
CPU
Intel
Core i3-10105
マザーボード
MSI
H510I PRO WIFI
メモリー
ADATA
AD4U266638G19-B
SSD
Western Digital
WDS250G2X0C
ケース
In Win
IW-BP671/300B
メモリー、SSD、ケースは部屋にあったもので新たに購入していません。
使用するOSはUbuntu 20.04.3 LTSです。すなわちカーネルのバージョンは5.11です。5.4や5.9を使用している場合は速やかにバージョンアップを行ってください。図1 の「このシステムについて」を見てみると、プロセッサーもグラフィックも正しく表示されていることがわかります。
図1 「 このシステムについて」を表示したところ
Core i3-10105 を選択した積極的な理由は特になく、4コア8スレッドモデルで一番価格が安いもの(スペックが低いもの)です。ただし別途ビデオカードを増設する予定はないので、GPU統合モデルである必要はありました。
H510I PRO WIFI はなかなか興味深いマザーボードで、H510というローエンドのチップセットを詰んでいるにも関わらず有線LANは2.5GbE、無線LANはIEEE 802.11ax(いわゆるWi-Fi6)に対応したコントローラーを搭載しています。この辺がUbuntuでも使用できるかがひとつのポイントとなりますが、結論から先に述べるといずれも使用できます。図2 が有線LANで2.5GbEを使用しているところで、図3 が無線LANで802.11axが使用できているところです。もちろん2.5GbEに対応したハブ、802.11axに対応したアクセスポイント(ルーター)が必要ですが、拙宅ではいずれも揃っています。
図2 「 接続済み - 2500Mb/s」の表示が眩しい
図3 「 リンクの速度」が桁違いに速い
ただしUSBの速度は控えめで、USB 3.2 Gen1にしか対応しません。Gen 2や2.2が必要な場合はもう少し上位のチップセットを選択するか、唯一のPCI ExpressバスにUSBカードを増設することになるでしょう。USBの速度に関しては本稿の主旨から外れるので解説しませんが、数字が多いと速くなります。
比較対象となるPCは第651回から少し変わっていて、スペックは次のとおりです。
CPU
AMD
Ryzen 3 PRO 4350G
CPUファン
アイネックス
IS-40X
マザーボード
ASRock
A520M-ITX/ac
メモリー
Crucial(CFD)
W4U3200CM-16G
SSD
Western Digital
WDS250G2X0C
ケース
In Win
IW-BQ656/150N-U3
ちなみに用途も変わって、現在はWindows 11動作用PCとして使用する予定です。またSSDは相性問題からかWDS250G2X0Cだとフリーズして全く使い物にならなかったため、GWM.2NVST-U3G2CCA を経由して接続しています。
ベンチマーク結果
今回もPhoronix Test Suite を使用し、軽くベンチマーク結果を見ていきましょう。
内蔵GPU
図4 と図5 はSuperTuxKart の結果です。一番さが少なかったものと差が大きかったものを掲載しています。
図4 SuperTuxKartの結果その1
図5 SuperTuxKartの結果その2。その1とはコースが異なる
4350Gではいずれも120FPS近く出ており、ボトルネックになっていませんが、Core i3-10105はやや厳しい結果になっています。内蔵GPUの性能を重視するならAMD一択といえます。
CPU
図6 と図7 は著名なパスワードクラッカーであるJohn the Ripper での結果です。ややCore i3-10105のほうが優勢ですが、大差はついていません。
図6 John the RipperでのBlowfishでの解読結果
図7 John the RipperでのMD5での解読結果
図8 は7-Zip の圧縮速度テストです。16.02という古いバージョンなのは若干気になりますが、CPU性能にはあまり違いが出ていません。
図8 7-Zipの圧縮速度テスト
図9 と図10 はLLVM のビルド時間です。カーネルのビルドはなぜかできなかったのでこれにしました。やはり違いは出ていません。makeよりNinjaのほうが速いのは興味深いです。
図9 ビルドシステムにNinjaを使用したLLVMのビルド時間
図10 ビルドシステムにmakeを使用したLLVMのビルド時間
図11 はXZ の圧縮テストです。にわかには信じがたいですが、マルチスレッドのテストにも関わらずCore i3-1015のほうが高速であるという結果が出ています。
図11 XZの圧縮時間
図12 はInkscape でSVGをPNGに書き出すテストです。図13 はLibreOffice のPDF書き出しテストです。いずれもやはり違いはあまり出ていません。
図12 InkscapeでSVGファイルをPDFに書き出す時間
図13 LibreOfficeでPDFに書き出す時間
図14 と図15 はBlender でのレンダリング時間です。ともに4350Gがやや優勢です。
図14 BLenderでのレンダリング時間その1
図15 Blenderでのレンダリング時間その2
消費電力
ワットチェッカーで確認したところ、アイドル時の消費電力は20ワット程度、負荷をかけた状態でも80ワット程度でした。
総評
Core i3-10105の購入価格が14,000円程度、Ryzen 3 PRO 4350Gの購入価格が22,000円前後で8,000円程度の差があり、かつCPUに関しては速度差はあまりないことを考えると、Core i3-10105のコストパフォーマンスは圧倒的といえるでしょう。マザーボード(H510I PRO WIFI)とセットでも3万円以下で買えたことを考えると、やはり4コア8スレッドモデルまたはそれ以下のローエンドモデルではIntelのプラットフォームを選択するのが正解といえます。もちろんUbuntuでも何ら問題なく動作します。
今更いうまでもなく現在は半導体不足でCPUやマザーボードやその他多数のPCパーツが在庫なしまたは価格が高騰しており、正に「時期が悪い」のですが、PCを組む必要がある場合はうまくタイミングを見計らって購入してください。