Ubuntu Weekly Recipe

第728回格安2in1 PC、FFF-PCM2BにUbuntu 22.04 LTSをインストールする(後編)

2回に渡ってFFF-PCM2BにUbuntu 22.04 LTSをインストールし、活用する方法を紹介しています。前編に続き、後編はいよいよインストールと活用する方法の紹介です。

Ubuntuのインストール

マニュアルにも記述されているのですが、ブートデバイスの選択は起動直後にF7(Fn+^)キー、UEFI BIOSの起動はDeleteキーを連打してください。

eMMCにインストールされているWindowsをSSDに移した場合は、Ubuntuをインストールする前に「ディスク」を使用してeMMCのパーティションをすべて削除してください。これは無用なトラブル防止という意味合いが強いですが[1]Windowsのライセンスを読む限り、複数のデバイス(インスタンス)にインストールするのはライセンス違反だと解釈できそうなためです。

また理由はよくわかりませんが、⁠Ubuntuを使用する」を選択するとポインターが消えてしまうことがありました。⁠Ubuntuを使用する」をクリック後ポインターをグリグリと動かし続けることで、デスクトップ上にポインターが表示されました。もし必要であれば試してみてください。

インストールのオプションは、第720回でも紹介したように「最小インストール」を選択し、あとからFlatpakパッケージを使用できるように設定しましょう。詳細は第720回を読んでください。

スケーリングと外観などの変更

前述のように画面の自動回転を使用するためと、タッチパネルを使用するためにいくつかの設定変更を行います。

8インチディスプレイにフルHDの解像度は少々小さすぎるため、⁠ディスプレイ」「任意倍率のスケーリング」を有効にし、⁠サイズ調整」「125%」にします図1⁠。

図1 ⁠サイズ調整」「125%」にする
図1

「外観」のDockを変更します。⁠Dockを自動的に隠す」を有効に、⁠パネルモード」をオフにします図2⁠。わりと好みによる設定なので実施するかどうかは任意に決定してください。

図2 好みに応じてDockの設定を変更する
図2

Extension Managerをインストールし、インストールされている「Desktop Icons NG」を無効にします図3⁠。画面を回転させるのであれば、デスクトップにアイコンを置くべきではありません。

図3 デスクトップにアイコンを置くと回転するたびに位置が移動するので無効にする
図3

タッチパネルでは「ファイル」をシングルクリック(タップ)で扱えると便利です。⁠ファイル」のハンバーガーメニューにある「設定」をクリックし、⁠アイテムの開き方」「シングルクリック」に変更します図4⁠。

図4 タップでファイルを扱えるようにする
図4

自動回転の問題点

ディスプレイの自動回転、すなわちPC本体を横にするとディスプレイ表示が横になり、縦にすると表示も縦になる機能はUbuntuでも使用できます。しかし残念ながら現在はX.Orgセッションだけです。

GNOME Shellのシステムメニュー(右上のメニュー)をクリックするとそれがわかります。Waylandセッションにはありませんが図5⁠、X.Orgセッションには「画面の回転をロック」が表示されています図6⁠。逆説的ですが、回転をロックできるということは回転できるということです。

これはバグであり、すでに報告されています。

図5 Waylandセッションのシステムメニュー
図5
図6 X.Orgセッションのシステムメニュー
図6

第717回には現状のWaylandについていろいろと述べましたが、このような問題にも気づくことになりました。

ドキュメントビューアーにはPDFを回転表示する機能があるのでWaylandセッションにしてもいいのですが、Webブラウザーも縦のほうが読みやすいこともあり、やはり自動回転はできたほうがいいでしょう。

縦表示+タッチパネルの使い心地

PDFとEPUBファイルを表示するため、Flatpak関連パッケージをインストールし、かつFlathubリポジトリを有効にして、Okularをインストールします。もちろん「ドキュメントビューアー」や他のアプリケーションでも構いません。個人的な好みです。

OkularでPDFを表示し、全画面モードにすると期待のことができるようになりました図7⁠。ページ送りには難があるのでキーボードの矢印キーのお世話にならざるを得ず、あまり使い勝手はよくありません。やはりこのあたりはAndroidに一日の長があるといえそうです。

図7 全画面表示の一歩手前の縦表示。あとは「表示⁠⁠-⁠フルスクリーンモード」にすると全画面表示になる
図7

一方では、ここまでできるようになったという考え方もあります。

Firefoxをオフィシャルバイナリに置き換える

Celeron N4120はお世辞にも潤沢なCPUリソースがあるとはいえないため、少しでもCPU負荷を軽減するためにFirefoxはオフィシャルバイナリ版に差し替えます。方法は第710回で紹介しています。

現在のFirefoxはタッチパネルによるスクロールはデフォルトで非対応です。環境変数「MOZ_USE_XINPUT2=1」を設定すると、タッチパネルによるスクロールができるようになります。

オフィシャルバイナリを置き換えた場合~/.local/share/applications/firefox.desktopから起動するので、これを書き換えるのが手っ取り早いでしょう。具体的には

Exec=/home/ikuya/firefox/firefox %u

の行を、

Exec=sh -c "export MOZ_USE_XINPUT2=1;/home/ikuya/firefox/firefox %u"

などとしてください。もちろんホームフォルダーは書き換えずそのままとしてください。

ハイバネートとハイブリッドスリープ

第637回でGPD MicroPCにUbuntu 20.04 LTSをインストールし、ハイバネートとハイブリッドスリープを有効にしました。

本機でもできるようになると便利なため、第637回を参考にしていろいろと試してみましたが、ハイバネート自体は可能だったもののレジュームしてきませんでした。

ハイバネートはメモリーの内容をスワップファイル(今回の場合)に書き出すこと、レジュームは起動時に書き出した内容をメモリーに読み込むことです。ログを読んでもハイバネートはできているように見えますが、起動すると通常どおりブートしているようです。

おそらくブートの時点で問題があるものの、筆者の力量ではこれ以上の調査は難しそうだと判断しました。腕に覚えのある方はさらなる調査に挑戦してみてください。

使えない機能

今のところ指紋認証機能は使えません。現在Ubuntuで使用できる指紋認証はあまり多くないため、致し方ない部分ではあります。

キーボードの使い心地

キーボードは主要キーのピッチを確保するため、キーの数を極端に少なくしています。キーの数は66個でした。ただしスペースキーは1つと数えています。

これだけ少ないとファンクションキーとの組み合わせが多すぎて、実用上支障が出てきます。

中でも困るのはTabキーが単独で存在しないことです[2]。端末を使う時にすごく困るばかりか、Windowsキーも当然単独では存在しないため、例えばWindows+Tabキーでウィンドウの切り替えができません。Fnキーが有効になるのは1度きりのため、Fn+Alt+Fn+Backspaceキーの組み合わせはできません。

とはいえこのあたりは工夫でなんとかならなくもありません。というのも、1ワークスペースに1ウィンドウを配置するとウィンドウの切り替えではなくワークスペースの切り替えを行えばよくなります。

どのくらい文字入力するかで、別途キーボードを取り付けるかどうかを決めましょう。

液晶保護フィルム

完全に余談ですが、ディスプレイは結構反射します。画面を見ているのか自分を見てるのかわからなくなるのは困ります。そこで反射防止の液晶保護フィルムを貼ることにしました。

とはいえスマートフォンのように専用品が売られているわけではないので、8inchタブレット用フリーカット 高精細反射防止を購入しました。自分で切らなくてはいけないのはなかなか大変ですが、期待どおりの成果を上げてくれました。必要であれば追加購入するといいでしょう。

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