今回は新たに生まれ変わったownCloudである、ownCloud Infinite Scaleを簡単に使用する方法を紹介します。
ownCloudってなんだっけ
ownCloudという名称には、なじみがあるでしょうか。久しぶりに聞いたという場合もあれば、初耳という場合もあるでしょう。
というのも、近年特にUbuntuユーザーにはownCloudはすっかり縁遠いものになっていました。
本連載の過去記事を振り返ると、第231回は
そこでも説明されていますが、ownCloudは
ownCloudとそのフォークであるNextcloudはPHPで書かれ、多数のアドオン
近年はNextcloudのエコシステムがすっかりできあがっており、第610回で紹介したNextcloud TalkなどはownCloudでは実現されませんでした。
ownCloudもこのような状況で手をこまねいていたわけではなく、乾坤一擲の手を打ちます。PHPではなくGo言語で書き直すという決断です。
直感的には、Go言語で書かれるということはシングルバイナリで動作するので、アップデートが簡単になります。また高速化も図れるでしょう。一方、PHPで書かれたアプリは動作しなくなるのでエコシステムをまるごと捨てることにもなります。
Go言語で書かれたownCloudはownCloud Infinite Scaleという名称で、昨年11月30日にリリースされました。
「ownCloud Infinite Scale」
前置きが長くなりましたが、今回は原則としてこのドキュメントに従ってownCloud Infinite Scaleをデプロイしていきます。以後ownCloud Infinite Scaleは長いのでoCISと略します。
ローカルデプロイ編
まずは練習として、手元の環境にoCISをデプロイします。場所はどこでも構いません。筆者はブリッジネットワークに設定したVirtualBoxの仮想マシン
なおデプロイ先についての差異については触れませんが、Ubuntu Serverをそのまま使用するのであればavahi-daemonパッケージをインストールしておくことを強くおすすめします。
今回は本記事の掲載時点で最新版の2.
また前提として、設定ファイルは/etc/
に、共有ファイルは/var/
に配置します。コンテナーを使用する場合は、より適切な場所に変更するといいでしょう。
ではデプロイを開始しましょう。次のコマンドを実行してください。
$ sudo wget -O /usr/local/bin/ocis https://download.owncloud.com/ocis/ocis/stable/2.0.0/ocis-2.0.0-linux-amd64 $ sudo chmod +x /usr/local/bin/ocis $ sudo useradd --system --no-create-home --shell=/sbin/nologin ocis $ sudo mkdir -p /var/lib/ocis $ sudo chown ocis:ocis /var/lib/ocis $ sudo mkdir -p /etc/ocis $ sudo touch /etc/ocis/ocis.env $ sudo chown -R ocis:ocis /etc/ocis
何をしているのかは極めてわかりやすいですが、oCISのバイナリを/usr/
以下にダウンロードし、ocisユーザーを作成して設定ファイルと共有ファイルを置くフォルダーを作成し、それぞれパーミッションを変更しています。
さらに、肝となる設定ファイルの/etc/
を作成しています。次はこのファイルに追記します。
$ sudo editor /etc/ocis/ocis.env OCIS_INSECURE=true PROXY_HTTP_ADDR=0.0.0.0:9200 OCIS_URL=https://example.local:9200 OCIS_LOG_LEVEL=warn OCIS_CONFIG_DIR=/etc/ocis OCIS_BASE_DATA_PATH=/var/lib/ocis
設定ファイルもまたわかりやすいので、解説は不要でしょう。OCIS_
」
いよいよ初期化します。次のコマンドを実行してください。
$ sudo -u ocis ocis init --config-path /etc/ocis
OCIS_
の値を引数にすると、そこにあるocis.
の内容を元に初期化を行います。ここで重要なのは、ユーザー名
=========================================
generated OCIS Config
=========================================
configpath : /etc/ocis/ocis.yaml
user : admin
password : aH=IKe&RavoiPawuCxThB0=RgBLb*4zr
oCISはsystemdで自動起動すると便利なので、そのように設定します。次のコマンドを実行してください。
$ sudo systemctl edit --force --full ocis.service
/etc/
が編集できるようになります。内容は以下のとおりにしてください。もちろん設定ファイルの置き場所を変更した場合はそれに合わせてください。
[Unit]
Description=OCIS server
[Service]
Type=simple
User=ocis
Group=ocis
EnvironmentFile=/etc/ocis/ocis.env
ExecStart=/usr/local/bin/ocis server
Restart=always
[Install]
WantedBy=multi-user.target
続けて次のコマンドを実行して、systemdでoCISを起動してください。
$ sudo systemctl daemon-reload $ sudo systemctl enable --now ocis $ sudo systemctl restart ocis
これでデプロイしたホスト名とポートhttps://
)
/etc/
のOCIS_
を見てもわかるとおり、HTTPSでのログインが必須です。もちろん自己署名証明書となるため、Webブラウザーは警告を表示します。これを突破するとログインフォームが表示され、生成されたユーザー名
ちょうどキリがいいので今回はここまでとします。