AppSheetにおけるGoogle製品連携の現状
AppSheetは立ち上げ時期からGoogle Sheets、Google Docsを始めとしたGoogleが提供する各種業務アプリケーションを活用する強力な連携機能を有していました。2020年1月にGoogle Cloudプロダクトの一員となって以降も様々な新機能が続々とリリースしており、その連携機能は日々進化を続けています。
特にGoogle Workspace
今回は2022年8月現在のAppSheetとGWSを中心としたGoogleプロダクト連携パターンを紹介します。なお今回紹介する連携パターンは連携機能から想定されるアプリ利用例であり、これはAppSheetによって実現できる可能性のほんの一部です。これをきっかけに業務改善につなげていただければ幸いです。
スプレッドシートとの連携
スプレッドシートは、AppSheetとGWSの連携において、もっとも利用されている組み合わせです。
アプリのデータ保存場所として容易に指定することができ、またスプレッドシートが持つ変更履歴管理や指定版へのリストアなどのアプリ運用において強力な機能を特別な設定なしで利用できます。
GWSを利用している場合はすでに既存業務にて、在庫や問い合わせ管理などの各種リストをスプレッドシートで運用しているケースも多いでしょう。AppSheetではそのようなスプレッドシートをデータソースとして読み込むだけで、シートの内容を管理するアプリとして利用開始できます。
ドライブとの連携
AppSheetのアプリでは画像やファイルを扱うことができますが、当然ながらその保存場所が必要となります。GWSアカウントでAppSheetの利用を開始した場合、標準のファイル保存先はそのユーザー
また昨年からは、単なるファイル保存場所としての利用に留まらず、アプリのデータソースとしても指定できます。具体的には、1ファイル1レコードの単位とし、ドライブ環境をアプリ化することができるようになっています。この機能により、ドライブ上のファイルをAppSheetのアプリから直接操作することが可能となり、飛躍的にアプリの拡張性が増しています。
フォームとの連携
フォームから送信されたデータが保存されるスプレッドシートをAppSheetのデータソースとすることで、フォームとアプリがシームレスに動作します。フォームから収集されたデータへアプリからアクセスできるだけではなく、AppSheet Eventと呼ばれるAddonの設定を行うことでフォームからのデータ入力をトリガーとしたAppSheet Automationを実行することもできます。これにより、フォーム単独では実現できない仕組み、たとえば、入力内容に応じてカスタマイズした自動メールを送信するアプリも簡単に作成できます。
ドキュメントとの連携
アプリでPDFなどのファイルを生成する場合のテンプレートとしてGoogle ドキュメントを利用できます。
既存業務で請求書などの社内文書をドキュメントで管理している場合は、そのままPDFのテンプレートとして利用できるため、別途出力用のテンプレートを作成するといった作業は不要となります。また、アプリからの通知をメールで送信するときに、リッチなコンテンツを含むHTMLメールにしたい場合は、ドキュメントを利用して装飾した内容をメールテンプレートとして利用することにより実現できます。別途HTMLタグを記述する必要はありません。
業務には様々な文書が存在しますが、ファイル作成用にAppSheetで利用するテンプレートは自由にカスタマイズできるため、複雑なスタイルやフォーマットの文書にも柔軟に対応できる点も特徴です。
Gmailとの連携
昨年10月にリリースされたDynamic Email送信の機能によって、AppSheetから送信したメール本文にアプリの画面を埋め込むことが可能となりました。
メールクライアント上から直接アプリが操作できるようになるため、活用の幅は広範囲に及びます。たとえば経費精算の業務など、申請する担当者が必要な情報をアプリに登録しそのまま承認申請するケースなどで有効利用できます。承認者にはDynamic Emailで承認可否を選択できるボタンUIを含めて送信できるため、承認者は別途アプリにログインすることなく、Gmail上から承認または却下を行うことができます。
なお執筆現在
Google Apps Script
2022年5月、AppSheet AutomationからGoogle Apps Scriptの呼び出しが可能となりました。これにより、AppSheetアプリケーションのデータをもとにしたGWSプロダクトの操作が可能となり、アプリで実現できる世界が大きく広がりました。Google Apps Scriptで実現できることのすべてをAppSheetに取り込めることから、AppSheetとGWSで提供されるすべてのサービスとの連携を強化する極めてパワフルな機能です。
さらにApps Scriptより外部のAPIを呼び出し取得した情報を戻り値としてAppSheetアプリに返すことも実現できるようになったため、単にGWSやAppSheetの閉じた世界の情報だけではなく、世界中で公開されているAPIを利用し外部のアプリを操作したり、APIから必要なデータを取得しAppSheetのアプリ内で利用することで、アプリの機能を大きく拡張できます。
カレンダー/Google Meetとの連携
スプレッドシート、ドライブと同様にカレンダーもAppSheetのデータソースとして利用できます。
カレンダーの一つの予定をデータテーブルの一つの行として読み取り、アプリ内で利用します。AppSheetとGoogle カレンダーが同期した予約管理アプリなどでも頻繁に利用される連携機能です。AppSheetから登録した予定やイベントがGoogle カレンダーに同時に表示される他、登録した情報をAppSheetから更新、削除もできるため、異なるアプリ間の移動といった手順を踏むことなく、効率的な予定データのマネージメントにも役立ちます。
また、カレンダーで作成する予定やイベントには、Google MeetsのURLを自動設定できますが、このURLもあわせて取得できるため、AppSheetのアプリからもGoogle Meetsを立ち上げて会話を始めることにもネイティブに対応しています。
グループとの連携
AppSheet Enterpriseプラン以上となりますが、Google グループを認証ユーザリストとして利用できます。
アプリの規模が大きくなると、ユーザを個別に追加/削除するといった運用では作業や管理の負荷が高まりますが、グループを利用すれば一括での多数のアプリユーザの登録・
Google Chatとの連携
Automation BotからChatのWebhook URLを介して各スペースへの通知を送信できます。AppSheet内データの変更や、定時にスケジュールされたイベントをトリガーにAutomation Botを動作させることができますので、ビジネス状況や担当部署に応じて柔軟に通知を自動化できます。
データポータルとの連携
現時点では、正式サポート対象の機能ではなく、Preview Releaseのステータスとされていますが、Google Data Portal (以下データポータル) とAppSheetの連携を実現するデータコネクタが提供されています。
データポータル側の設定オプションで、AppSheetで作成されたアプリから登録されているテーブルやスライス
サイトとの連携
AppSheetでは従来のユーザ単位とは異なり、アプリ単位での課金となるPublisher Proプランがあります。これはログインが不要なアプリに対応するプランとなり、自社製品のカタログやレストラン店舗がメニューを一般公開するなどの目的のために利用するものとなります。
Publisher Proライセンスでアプリを作成し、Google サイトにアプリを埋め込むことにより他社ユーザや利用客に向けて動的なコンテンツを提供することが可能となります。
Cloud Searchとの連携
Cloud Searchは自らがアクセス可能なGWSコンテンツを横断検索できる便利なサービスです。AppSheetのデータを元にしたCloud Searchへの問い合わせ用のリンクを作成することにより、顧客名や担当者名などのキーワードを元にCloud Searchにアクセスすることが可能になります。実装もURLパラメータで検索対象ワードを付与したリンクを作成するだけなので簡単です。
その他のAppSheet連携機能と今後について
GWSとの連携の他にも、BigQuery、Apigee、Google Cloud StorageといったGCPサービスとの連携にもAppSheetは対応しており、より高度なシステム間連携を利用したアプリケーション開発も実現できる点もAppSheetの特徴です。また今後もGoogle Tables
Googleプロダクトとの連携は強化され続けるとともに、その連携をノーコードで達成できるのがAppSheetです。GWSユーザ企業にとってアプリ開発の内製化や自社の市民開発者育成といった取り組みを計画している場合は、AppSheetの選択が最良であることは間違いありませんので、AppSheetでのプロジェクト化を強く推奨します。