この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。
[MySQL]2023年5月の主な出来事
2023年5月のMySQLの製品リリースは、MySQL Operator 8.
もう1点大きなアップデートとしては、MySQLのクラウドサービスであるMySQL HeatWaveのサービスのうち、Amazon Web Services
MySQL HeatWave on AWSの特徴
MySQL HeatWaveはMySQLサーバーで実行されるSELECT文を高速化するクエリのアクセラレータとしての側面と、データベース内のデータに対する機械学習を可能とする機械学習エンジンとしての側面をあわせ持っています。
オラクルが運営するOracle Cloud Infrastructure
MySQL HeatWave on AWSの利用には前提としてOCIのアカウントとAWSのアカウントの両方が必要となり、サービスの利用料金はオラクルにお支払いいただく形となります。専用のサービス利用ポータル
アカウント作成から利用開始までの手順はリファレンスマニュアルにまとめられています。
OCI版のMySQL HeatWave とAWS版ではバージョンや機能の大枠は同一となっていますが、差異もあります。2023年5月末現在での最大の違いは、AWS版のみにパフォーマンス管理やSQL実行、および機械学習処理のためのWebコンソールが用意されている点です。なおこちらの機能はOCI版にも近日実装予定とされています。
特にスクリーンショットでご紹介した機械学習のWhat if機能は、どの特徴量
機械学習のアルゴリズムや特徴量の選択、モデルの訓練はAutoMLによって自動で行われ、モデルの訓練もGUIからシンプルに開始できます。さらにWhat if機能によって、機械学習の予測結果からビジネスの改善のポイントを発見するまでをGUIから簡単に利用できるのが、MySQL HeatWave on AWSの大きな特徴になっています。
2023年5月末時点ではOCI版に比べて不足している機能も多々ありますが、AWS上でのサービス提供開始以降、毎月機能の強化が行われています。MySQL HeatWave on AWSの今後の発展にご期待ください。
[PostgreSQL]2023年5月の主な出来事
5月は重要なニュースが複数ありました。まず、次期メジャーバージョンの最初のベータ版が登場し、今年も秋の正式リリースまで目が離せない時期に突入しました。また、現行バージョンについては、セキュリティ上の修正を含むアップデートが出ています。そしてイベント関連では、5月最後の金曜日にPostgreSQLエンタープライズ・
次期メジャーバージョンPostgreSQL 16ベータ1がリリース
5月25日、次のメジャーバージョンであるPostgreSQLバージョン16の最初のベータ版となるベータ1が公開になりました。今秋に予定されている正式リリースに向けて、楽しみな数ヵ月がやってきました。
リリースのお知らせのハイライトで示されているパフォーマンスの向上、開発者のエクスペリエンス向上、セキュリティ強化、監視と管理の向上といったカテゴリは、PostgreSQLを安定的に・
PostgreSQL 16については、これから数回のベータ版リリースを経て正式リリースに至る予定ですので、次号以降も継続的に取り上げていく予定です。
サポート中のPostgreSQLに対する更新がリリース
5月11日には、現在サポート対象になっているメジャーバージョンの更新として、PostgreSQL 15.
以下の2つのセキュリティ脆弱性と、80を超えるバグが修正されています。
- CVE-2023-2454: CREATE SCHEMA ... schema_
element defeats protective search_ path changes - CVE-2023-2455: Row security policies disregard user ID changes after inlining
PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムの2022年度活動成果発表会
5月26日、PostgreSQLエンタープライズ・
PGEConsは2012年に発足して、2023年は12年目の活動に入ります。現在は正会員17社、一般会員59社となり、PostgreSQLをエンタープライズ利用するための技術検証や成果のプロモーション等を行っています。そして今回、技術部会の3つのWG
今回発表された成果のラインナップは次のとおりです。
- 定点観測:バージョン間性能比較
(WG1) - ロジカルレプリケーション新機能
(WG1) - 性能トラブル調査編@Amazon Aurora
(WG3) - PgBouncer性能評価
(WG3) - パーティショニング運用
(WG2) - Community Relations活動
(CR部会)
発表のスライド資料は、今回のイベントページで公開されています。また、これまで積み重ねてきた活動成果もご参照いただけます。
- 定点観測:バージョン間性能比較
- SRA OSS LLC 佐藤友章さんによる発表です。
「定点観測」 と呼んでいるように、PostgreSQLの改良・ 性能向上の状況を毎年恒例で検証しています。今回も新旧バージョンの性能比較としてマルチコアCPUにおける性能検証を行い、バージョン14からバージョン15への性能変化の有無や傾向を確認しています。検証環境としては、今年度もAmazon Web Services (AWS) の仮想マシンを使用しています。 - バージョン14と15の比較という面からは、参照処理も更新処理も性能に有意な差異は見られませんでした。参照性能は64接続で性能が最大になり、更新性能では256〜512接続の間にピークに達したようです。更新処理での性能ボトルネックの理由を探る挑戦もしています。32CPUの内8個でソフトウェア割込みが100%近くに達する時間もあったため、ソフトウェア割込みがボトルネックになっているのではないかとの推測が示されましたが、ソフトウェア割込み発生原因は特定できなかったので今後の課題として持ち越しとなったとのことです。
- ロジカルレプリケーション新機能
- NTTテクノクロス株式会社の金澤竣平さんと原田登志さんの発表です。ロジカルレプリケーションについて、PostgreSQL 15で追加された主な機能の調査・
検証結果が報告されました。 - 列指定機能は、ロジカルレプリケーションの対象列をパブリッシャの特定の列に制限できる機能です。従来はテーブル定義の全ての列が対象でしたが、この機能追加によってテーブル内の特定列のみを指定したレプリケーションが可能になりました。ただ注意点もいくつかあります。たとえば、パブリッシャ側とサブスクライバ側それぞれで、指定列を主キーとした場合としていない場合によって、INSERT処理やUPDATE処理ができる場合/
できない場合があります。 - 行フィルタ機能は、WHERE句を使用してパブリッシャのコンテンツをフィルタリングできる機能です。レプリケーションしなくてよいデータがある場合にはその分負担を下げることが可能になります。
- その他、サブスクライバのアクティビティをレポートするシステムビューであるpg_
stat_ subscription_ stats、次期メジャーバージョンのPostgreSQL 16で予定されているマルチマスタ構成の改善についても報告されました。詳細は発表資料をご参照ください。 - 性能トラブル調査編@Amazon Aurora
- 日鉄ソリューションズ株式会社の永井光さんと秋山暉佳さんによる発表で、過去に実施した検証結果がAmazon Auroraではどうなるかを検証した報告です。
- 過去のCommunity版での検証と今回のAurora検証では、autovacuumの処理時間の変化傾向はおおむね同じパターンですが、処理時間はAuroraが圧倒的に短くなりました。また、更新処理を続けた場合の不要レコード数の蓄積もAuroraの方が小さく、テーブル肥大化が防げていることが示されました。今回のAuroraでの検証は、過去のCommunity版の検証とはPostgreSQLのバージョンや環境条件が異なる部分があります。しかし別途実施した追加検証から、Auroraにおけるアーキテクチャーの違いがautovacuumの性能差異の大きな要因であると考えられるとのことです。
- PGEConsによるautovacuumのパラメータ検証結果
- PgBouncer性能評価
- ヤマトシステム開発株式会社の毛呂良寛さんの発表です。PostgreSQLにおけるコネクションプールを実現する代表的なツールとしてPgBouncerがあります。この発表ではPgBouncerを使用することで懸念される性能面の影響について調査・
検証を行い、利用時の方針や確認するべき事項を提言しています。なお、代表的なツールとしては他にPgpool-IIもありますが、PgBouncerはコネクションプールに特化したツールになっており、Pgpool-IIはクラスタ管理機能など豊富な機能を持つという違いがあります。 - PgBouncer利用による性能面でのメリットとしては、接続・
切断に関わるオーバーヘッドの軽減、PostgreSQLのコネクション数を一定にして同時実行数が大量になった場合の性能劣化軽減といった点があります。また、デメリットとしては、コネクションプールを経由する事による新たなオーバーヘッドの発生、暗号通信時の暗号化や復号化処理が2回発生する点があります。これらがどの程度の影響となるか、実機にて検証して報告されました。 - パーティショニング運用
- NECソリューションイノベータ株式会社の黒澤彰さんと、富士通Japan株式会社の多田明弘さんの発表です。PGECons発足当時から継続されているPostgreSQLへのデータベース移行についての調査・
検証の報告です。今回はPostgreSQLのパーティショニングの機能や運用上で必要となる保守作業について、異種RDBMSからの移行の観点を踏まえてご紹介されました。 - Oracleのパーティション表をPostgreSQLに移行する場合、PostgreSQLの新しいバージョンではパーティショニング機能が向上しているため、移行時の適合性が以前のバージョンと比較して向上しているとのことです。ただし、異種DBMSであるOracleとまったく同じというわけでは無く差異はあります。たとえば、リストパーティションは対象カラム数が異なること、グローバル索引には対応していない点、自動でパーティションを作る機能などに差異がある点に留意する必要があります。
- Community Relations活動
- SRA OSS LLC 長田悠吾さんから報告されました。PGEConsのCR部会では、エンタープライズ領域へのPostgreSQL適用拡大を目指してPostgreSQL開発コミュニティに対して技術的課題のフィードバックを実施しています。
- 2022年度は次のような活動を実施しました。
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- 監視結果をどのように運用にいかすのかについて本家wikiサイト情報の充実
- 性能情報事例を収集するために開設した本家Wikiサイト情報の充実
- IVM (Incremental View Maintenance) 開発の支援活動
- CoC (Code of Conduct; コミュニティの行動規範)
の原文が改訂されたことを受けて日本語訳を更新
- そして、2023年度の活動予定も示されました。現在の取り組みを継続する点として、エンタープライズ領域での技術的課題の詳細化とフィードバックを継続ことと、IVM (Incremental View Maintenance) 開発の支援すること。IVMについては、PostgreSQL 17 に向けてパッチの再提案を準備中とのことです。また、コミュニティへのフィードバック活動を活性化する面からは、チューニングノウハウをマニュアルに追加することを推進していくとのことです。
オープンソースカンファレンス2023 Online/Nagoyaでの「PostgreSQL最新情報」
5月20日、オープンソースカンファレンス
2023年6月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動
オンサイト
MySQL 5.7からMySQL 8.0へのバージョンアップ (仮)
日程 | 2023年6月15日 |
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場所 | オンライン開催 |
内容 | 2018年10月にリリースされたMySQL 5. このウェビナーでは改めてMySQL 5. |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |
東京のリージョンでも利用可能となったMySQL HeatWave on AWS
日程 | 2023年6月22日 |
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場所 | オンライン開催 |
内容 | 5月29日に日本オラクルのセミナールームで開催されたイベントのオンライン版です。なおイベントの内容と重複した概要版となっています。 AWSのアジアパシフィック MySQL HeatWave on AWSはMySQLにクエリ・ このウェビナーではMySQL HeatWave on AWSのサービス概要をご紹介予定です。 |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |
どうする?多様化するクラウド時代のデータベース選定 ~よくある課題と事例からみえる最適解とは~
日程 | 2023年6月15日 |
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場所 | オンライン開催 |
内容 | 企業でのクラウド利用が拡大し続ける中、データベースの選択肢も数多く存在するようになりました。利用するデータベースを選択する際、各企業によってポイントとなる点も様々です。なかでも このセミナーでは、そのような方向けに移行に関するよくある課題と円滑な移行を実現するEDB製品・ |
主催 | エンタープライズDB株式会社、株式会社アシスト |
オープンソースカンファレンス2023
日程 | 2023年6月17日 2023年6月24日 2023年7月22日 2023年7月29日 |
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場所 | 〔Online/ 〔Hokkaido〕札幌市産業振興センター 〔Kyoto〕京都リサーチパーク 〔Online/ |
内容 | オンサイト なお、会場開催の回に参加する場合でも、参加人数把握のために参加登録をお願いします。 |
主催 | オープンソースカンファレンス実行委員会 |
MySQL 8.0入門セミナー 〜レプリケーション&高可用性構成編〜
日程 | 2023年7月13日 |
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場所 | オンライン開催 |
内容 | 大好評のMySQL入門セミナーの中でも特に参加者の多い、レプリケーションと高可用性構成にフォーカスしたウェビナーです。 MySQLのレプリケーションは2000年に実装された |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |
MySQL HeatWave Lakehouse技術セミナー(仮)
日程 | 2023年8月24日 |
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場所 | オンライン開催 |
内容 | オブジェクト・ 2023年5月末現在はベータ版として提供されているMySQL HeatWave Lakehouseの技術解説を行うウェビナーを開催予定です。申し込みページは現在準備中です。 |
主催 | 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit |