OSSデータベース取り取り時報

第96回MySQL 8.1 & HeatWave Lakehouseリリース⁠PostgreSQL 16ベータ2と対応したFDW

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

[MySQL]2023年7月の主な出来事

7月はMySQLの2つの大きなリリースを中心に、複数の製品のリリースがありました。1つはMySQLのメジャーバージョンであるMySQL 8.1.0のリリースです。MySQL 8.1.0はイノベーション・リリースの位置づけであり、3ヵ月毎に新機能が追加された次のメジャーバージョンがリリースされます。

もう1つは、オラクルが提供するMySQLのクラウドサービスであるMySQL HeatWave Database Serviceの新機能HeatWave Lakehouseの一般提供開始です。HeatWave Lakehouseは、オブジェクト・ストレージ上に置かれたCSVやParquet形式の大量のデータを、MySQLサーバのSQL文で高速に分析できる機能です。

MySQL HeatWave Lakehouse概念図
MySQL HeatWave Lakehouse概念図

HeatWave Lakehouseでは、オブジェクト・ストレージ上に配置されたIoTデバイスのログなどのCSV形式のデータと、MySQLサーバ内の業務データなどを統合した分析が可能になります。

MySQL 8.1のリリースと同じタイミングでMySQLサーバー8.0.34、5.7.43の各マイナーバージョンをはじめ、MySQL NDB Cluster,MySQL Shell,MySQL Routerなどのプログラムの商用版およびコミュニティ版のマイナーバージョンアップが行われました。MySQL HeatWaveのデフォルトも8.0.34にアップデートされており、MySQL 8.1.0を選択することも可能になっています。なお各ConnectorはMySQL 8.1と8.0に対応した8.1.0のみがリリースされており、またMySQL Workbenchは8.0.34のみがリリースされています。MySQL 5.7は2023年10月にExtended Supportフェーズが終了し、Sustaining Supportフェーズに移行するため、5.7.34は5.7の最終リリースの一つ前のマイナーバージョンとなっています。

MySQL 8.1の新機能とリリースモデル

MySQL 8.1.0は、本連載の第92回でご紹介したMySQLの新しいリリースモデルにおける最初のイノベーション・リリースです。MySQLブログの日本語版でもご紹介しているとおり、複数のイノベーション・リリースを経て、8年間機能追加を行わずバグ修正のみを行うLong-Term Support(LTS)がリリースされます。

今後想定されるMySQLのバージョン(黒がイノベーション・リリース)
今後想定されるMySQLのバージョン

上記の図ではMySQL 8.4がLTSと記載されていますが、確定ではなく変更になる可能性があります。

上記の通り数年後にMySQL 10.0のリリースが見込まれるため、指定したバージョン以降でコマンドの実行やパラメータの設定を行うコメントの表記について、従来はメジャーバージョンは1桁のみをサポートしていたものが2桁をサポートするようになりました。

MySQL 8.1.0の主な新機能および変更点は以下の通りです。

データをダンプするツールとしてのmysqlpumpが廃止になりましたが、代替としてMySQL Shellのダンプユーティリティの利用が推奨されています。このユーティリティではインスタンス全体、スキーマ単位、テーブル単位でデータをマルチスレッドでダンプできます。またオブジェクト・ストレージに直接ダンプすることも可能です。

MySQL 8.1は64bit版のみの提供となり、また下記のOSおよびプラットフォームはMySQL 8.1ではサポートされません。

  • Enterprise Linux 6
  • SUSE 12
  • Debian 10
  • MacOS 12
  • Ubuntu 18.04 および 20.04
  • Windows 10 およびWindows Server 2012R2

MySQL HeatWave Lakehouseについて次回解説予定です。

[PostgreSQL]2023年7月の主な出来事

5月末に登場したPostgreSQL 16のベータ版ですが、次のベータ2がもうリリースされました。また、この次期バージョンに合わせて拡張機能のひとつであるFDWの更新情報も入ってきました。最後に、開催されたセミナーから国内での事例情報をお知らせします。

PostgreSQL 16ベータ2がリリース

5月末に最初のベータ1が公開され、この連載でも前々回と前回にお知らせをしてきたPostgreSQLバージョン16ですが、6月29日にベータ2が公開になりました

ベータ1とベータ2の間が約1ヵ月だけということもあり、ベータ1からの変更点はそれほど多くない様です。リリースのお知らせには次の5点が示されています。

  • initdbによって選択された照合プロバイダーに関する変更
  • libicuでCロケールを選択する動作の変更
  • Joinの最適化に関連するいくつかの修正
  • スタンバイからの論理デコードによって導入された変更に関連するBツリーコードの修正
  • パーティションの先祖に対してMAINTAIN権限を検索する際の危険性の修正

MongoDB⁠MySQL⁠Hadoop(HDFS)用FDWのPostgreSQL 16対応アップデート

FDW(Foreign Data Wrapper)は、PostgreSQLへのSQL操作を使って外部にあるデータにアクセスできるようにするPostgreSQLの拡張機能です

7月20日、3種類のFDWがバージョンアップして次期PostgreSQL 16に対応しました。今回更新されたFDWは、EDB(EnterpriseDB)によるもので、MongoDB、MySQL、Hadoop(HDFS)にアクセスするものです。

FNS系列23局の放送基幹システムをEDBで構築/運用した話

7月3日から14日の期間にオンラインで開催されたアシストフォーラム2023にて、PostgreSQLの商用サポート製品であるEDB Postgresの採用事例の発表がありました。フジテレビ系列28社で構成するFNSにおいて、基幹システムである編成営業放送システムのデータベースとしてEDB Postgresが採用されているとのこと。放送の配信に直結するミッションクリティカル領域での事例として、可用性を確保するための対策など、興味深いものです。

オンラインセミナーの配信期間は既に終了していますが、Webサイトの事例記事として参照できます。

2023年8月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

オンサイト(会場)開催が復活しつつあります。また、利便性のあるオンライン開催もこの3年間で定着し、オンサイト/オンライン/ハイブリットが混在するようになってきました。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

第43回 PostgreSQLアンカンファレンス@オンライン

日程 2023年8月7日(月)20:30~23:00
場所 オンライン開催
内容
  • 初心者による「使ってみた/動かしてみた」
  • 中級者による「こういうノウハウ使ってる」
  • 上級者(?)による「こういう拡張してみた」
その他、PostgreSQLに関連する話題であれば何でもOK!アンカンファレンス形式なので、何が出るかは当日参加してのお楽しみ。
主催 PostgreSQLアンカンファレンス

オブジェクトストレージ上のデータを高速に分析可能にするHeatWave Lakehouse機能のご紹介

日程 2023年8月24日(木)16:00~17:00(15:45接続開始)
場所 オンライン開催(Zoomウェビナー)
内容 MySQL HeatWaveの拡張機能であるHeatWave Lakehouse機能を使用すると、オブジェクトストレージ上のデータを高速に分析対象にでき、MySQLで使えるSQLを使って柔軟に分析できます。MySQL上のデータとHeatWave LakehouseのデータをJOINすることもできるため、データベース内のデータとログデータを付き合わせて照合したい場合にも役立ちます。
このウェビナーでは、MySQL HeatWaveの概要や特徴を説明した後に、HeatWave Lakehousek機能の特徴、利点、現在ご利用いただけるバージョンの仕様についてご紹介します。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

MySQL Innovation Day Tokyo 2023

日程 2023年8月28日(月)14:00~17:00
場所 日本オラクル株式会社 本社セミナールーム
内容 2023年7月にMySQLイノベーション・リリースの最初のバージョンであるMySQL 8.1がリリースされたことを記念して開催するイベントです。
MySQLを利用するお客様やユーザーの声にお応えし、2023年3月にMySQLは新しいリリースモデルを発表しました。最新のイノベーションを導入して3ヵ月毎にリリースされるイノベーション・リリースと、長期的な安定稼働を支えるために新機能追加を行わずにバグ修正やセキュリティパッチの提供のみをリリースから8年間行うロング・ターム・サポートの2本立てとなります。MySQL 8.1はこの新しいリリースモデルにおける最初のイノベーション・リリースです。これまでのMySQLや他のオープソース・データベースにはなかった斬新な新機能も追加されています。
このイベントでは刷新されたMySQLのリリースモデルのご紹介やMySQL 8.1の新機能のご紹介とあわせ、今後はバグ修正やセキュリティパッチの提供のみに切り替わるMySQLの機能を改めて振り返ります。
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

オープンデベロッパーカンファレンス2023

日程 2023年8月26日(土)10:00~18:00
場所 docomo R&D OPEN LAB ODAIBA(台場フロンティアビル 12F)
内容 オープンソースカンファレンスの姉妹イベントで、開発者とインフラエンジニアの交流の場として「DevOps」⁠開発」⁠開発者」をキーワードに開催されます。今回、ついにセミナーと展示の両方が会場でのリアル開催として完全復活です。データベース関連の発表や展示は、8月上旬公開予定のプログラムをご参照ください。
主催 オープンデベロッパーズカンファレンス実行委員会

オープンソースカンファレンス2023 Online/Fall⁠Tokyo/Fall

日程 〔Online/Fall〕2023年9月29日(金)〜30日(土)10:00~18:00 ⁠8月29日まで発表者・団体募集中)
〔Tokyo/Fall〕2023年10月21日(土)10:00~16:00 ⁠8月上旬から出展者・団体募集予定)
場所 〔Online/Fall〕オンライン開催
〔Tokyo/Fall〕大田区産業プラザPiO(東京都大田区)
内容 オンサイト(会場)開催のオープンソースカンファレンスが戻ってきました。このOnline/FallとTokyo/Fallでは、セミナーはオンライン開催、展示は会場開催と、日程を分けての実施になります。遠方からも聴講しやすいオンライン開催のセミナーと、対面での交流や情報交換が可能な会場開催です。それぞれ日程と開催方法、内容にご注意いただきご参加ください。なお、会場開催の回に参加する場合でも、参加人数把握のために参加登録をお願いします。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

PostgreSQL Conference Japan 2023

日程 2023年11月24日(金)10:00〜18:00(9月5日まで講演発表の募集中)
場所 AP日本橋(東京都⁠⁠ 6F(東京駅より徒歩5分)
内容 少々気の早いお知らせですが、毎年秋に開催されている日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)主催のPostgreSQL Conference Japan 2023が案内されました。午前は基調講演などがあり、午後は複数トラックに分かれて多数の講演が設けられる予定です。9月5日締切で講演発表の募集もされています。また、スポンサーとスタッフも募集中です。参加にはチケットが必要で9月下旬から販売開始予定です。
主催 日本PostgreSQLユーザ会

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