Linus Torvaldsは9月28日(米国時間)、当初のスケジュールどおりに「Linux 6.17」を公開した。前バージョンのLinux 6.16から約2ヵ月、7本のリリース候補版を経ての正式公開で、今秋にリリースが予定されている「Ubuntu 25.10」や「Fedora Linux 43」などのメジャーなディストリビューションの基盤カーネルとして採用される。
Linux 6.17ではIntel / AMDアーキテクチャを中心とするハードウェア関連のアップデートが数多く行われており、全体的にパフォーマンスが改善したリリースとなっている。おもなアップデート内容は以下の通り。
- CPUのセキュリティ脆弱性を緩和する「攻撃ベクトル制御(Attack Vector Controls)」機能の実装
- Intelが開発中のモバイルPC向け次世代CPU「Panther Lake」に搭載されるGPU「Xe3」がすぐに利用可能(デフォルトで有効)
- Intel Lunar Lake / Panther LakeマシンのWebカメラをサポートするIntel IPU7ドライバの実装
- AMD HFI(Hardware Feedback Interface)ドライバの統合によるパフォーマンスと電力効率の向上
- …クラシックコア(パフォーマンス重視)と高密度コア(電力効率優先)が混在する「AMD Ryzen」製品において実行中のスレッドを動的に分類し、より最適なコアに配置する(バックグラウンドスレッドを高密度コア、優先度の高いスレッドをクラシックコア)
- AMD CPUにおけるCPUIDフォールトのサポート
- 64ビットARMシステムにおけるライブパッチのサポート
- Raspberry Pi 5のRP1チップ(I/O機能の大部分を担うサウスブリッジ的なチップ)のメインラインサポート
- スケジューラからユニプロセッサ構成のサポートを削除、シングルプロセッサマシンでもSMP用に構築されたカーネルを実行
- DualPI2(RFC 9332)輻輳制御プロトコルのサポートによるリアルタイムワークロード(ゲーム、ストリーミングサービスなど)のレイテンシ短縮
なお、Linux 6.17の開発期間中にステータスが外部メンテナンスに変更され、メインライン上でコードが凍結された状態にあるBcachefsに関しては、Bcachefs開発者のKent Overstreetが自身のブログで、メジャーなディストリビューションによるサポート状況を説明している。それによれば、DebianおよびUbuntuユーザであればBcachefs.orgがホストする外部リポジトリからDKMS(Dynamic Kernel Module Support)パッケージを入手してアップデートすることが可能で、FedoraはCopr(Fedoraが運営する外部パッケージのビルドシステム)から入手可能となっている。一方、openSUSEはLinux 6.17上でBcachefsのカーネルドライバを無効にしているため、アップデートは提供されない。
Linux 6.17の公開にともない、Linusは次期カーネル「Linux 6.18」のマージウィンドウをオープンしており、すでに50近いプルリクエストが届いているという。スケジュール通りに開発が進めば2週間後の10月12日に最初のリリース候補版が公開され、11月末または12月初旬にはLinux 6.18がリリースされることになりそうだ。
【追記】:Linus Torvaldsは9月29日、カーネルツリーからBcachefsのコード11万7000行を削除した。削除の理由についてLinusは「BcachefsはLinux 6.17で“外部メンテナンス”とマークされたが、移行をスムースにするためにコードは残していた。現在、BcachefsはDKMSモジュールで提供されており、カーネル内のコードは古くなってしまう。したがってバージョン間での混乱を避けるために削除する」とコメントしている。
これにより、Linux 6.18以降のメインラインカーネルではBcachefsはサポートされなくなる。