この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。
連載10周年企画セミナー「データ活用の現状と近未来 —— データベースからデータスペースへ」を開催  
この
今回の目玉は、独立行政法人情報処理推進機構
ここでは、この企画で講演いただいた方の発表内容と、パネルディスカッションの概要を紹介します。発表で使用したスライド資料や動画は、すべてではありませんが準備ができたものからOSSコンソーシアムのWebサイトで公開します。
この10年のDBMSの流れを俯瞰して — 2015年-2025年
発表者は、この連載の執筆者である梶山 隆輔
詳細は割愛しますが、ここまで10年間のOSSデータベースは次の3つにまとめられそうです。①これまでのDBのコア機能強化への注力から新たな方向へ向かいつつあること。②クラウドとオープンソースの関係性
レガシー刷新とデータ活用 — OSSで始めるCOBOL基幹のモダン化
発表者は、井坂 徳恭さん
データ活用の観点からは、レガシーシステムには活用できるはずのデータがたくさん蓄積されているはずですが、外部システムとの連携のしにくさなどもあり、活用されていない現状があることも示されました。
ノーコードOSSで無理なくはじめるデータ活用
発表者は、内田 太志さん
また、本セミナーのオンラインの参加者からMS Accessからの移行について質問がありました。これには移行支援ツールを用意しているパートナー企業もあり、エコシステムが広がりつつあることが紹介されました。
Tsurugi+MCP説明
発表者は、神林 飛志さん
たとえばフォーミュラーカーの本番レース中に集まってくる大量のセンサーデータをリアルタイムでTsurugiが格納して、AI推論処理を行うことが可能になりました。そして、この低遅延処理は、製造業でOT
〔特別付録〕OSS鳥瞰図の紹介
発表者は、榎 真治さん
【特別講演】デジタル・エコシステム実現に向けた取組みについて  
今回の企画の目玉です。スペシャルゲストとして、独立行政法人情報処理推進機構
まずはデータスペースとはどういうものかの説明から入り、従来型データベースでは実現できなかった課題や、どんな分野でデータスペースのニーズがあるのかなどを、丁寧に説明いただきました。
また、IPAでは経済産業省と共に
ここではアウトラインの紹介のみになってしまいましたが、IPAのDX SQUAREには、データスペースの解説やウラノス・
- DX SQUARE
「データスペースとは? 〜 次に来る、デジタル用語のギモンに回答」  - DX SQUARE
「システム連携基盤 “ウラノス・ エコシステム” とは 〜 業界も国境も超えたデータの共有に向けて」  
〔パネルディスカッション〕これまでのデータベース・これからのデータスペース 
講演の部で発表いただいた、梶山さん、井坂さん、内田さん、IPAの上野さんにパネリストになっていただき、溝口 則行
このパネルディスカッションの趣旨はこの企画セミナー全体の趣旨と同一です。IPAで将来を見据えた活動をしているメンバと、どちらかと言えば現在提供出来る技術やソリューションに軸足のあるOSSコンソーシアム各部会のメンバが一緒に討論できることが、最大の注目点です。
モデレータからパネリストに問い掛けた論点は3つです。
- ① こんなことが実現できるの知ってた? …みたいな話が何かあるか?
 - ② データ処理・
管理ツールに期待することは? (やりたいことはあるけど実現できないんだけど…という要望がきっとあるはずで無茶振りもOK)  - ③ データを活用することで得られる価値は何か?
そして、社会・ 仕事・ 生活は変わるか?  
これらの論点について、どんな意見や、それら意見に対する感想が出たのかを簡潔に報告するのはなかなか困難です。簡潔にまとめにくい話題だからこそパネルディスカッションとして取り上げています。会話のニュアンスも含めてご理解いただくには、生のパネル討論の話を聞いていただくのがありがたいと思います。OSSコンソーシアムのWebサイトからアーカイブ録画にリンクを掲載する予定ですので、ご覧いただければと思います。
[MySQL]2025年10月の主な出来事 
10月は、MySQLのイノベーション・
なお、接続部品のConnectorのバージョン9.
クラウド版MySQLであるMySQL HeatWave 9.
Oracle AI World 2025でのMySQLおよびMySQL HeatWave関連の発表事項
オラクルの年次イベントであるOracle AI World 2025が、10月13日から16日に米国ラスベガスで開催されました。昨年までのOracle CloudWorldという名称から、よりAIにフォーカスしたイベントということで名称が変更されています。
MySQLをテーマにしたセッションも複数あり、AI関連での重要な発表が行われています。ここ数年はクラウド版のMySQLであるMySQL HeatWaveの話題に偏っていましたが、今年はソフトウェア版のMySQLサーバの新機能として、MySQL AIが発表されました。このMySQL AIでもMySQL HeatWaveでも利用可能な新機能としては、自然言語からMySQLのSQL構文を学習して最適化されたLLMによってSQL文を生成して、さらにそのSQL文を実行できるNL2SQL
そのほかの発表事項を含めた最新情報は以下の3つのイベントでもご紹介予定です。
- 11月6日
(木):Oracle HeatWave Meet in Tokyo 「シンプルな構成でデータを資産に変える」  - 11月26日
(水):MySQL Technology Caféリターンズ 「MySQL AIとMySQL Studioを使ってみよう」  - 12月17日
(水):Oracle Cloudウェビナー 「Oracle AI World 2025でのMySQL & HeatWave最新情報」  
11月6日のイベントでは、国内最大級のオンライン・
LLMと機械学習を内包したMySQLの新エディション MySQL AI
MySQL HeatWaveが持つ生成AI機能や機械学習機能を、ソフトウェア版のMySQLサーバでも利用できるような拡張が行われ、MySQL AIとしての提供が開始されています。
MySQL AIには以下の機能が含まれています。
- 生成AI: データベース組み込みのLLMとベクトル・
ストア  - 機械学習:自動化された訓練、推論、説明
 - ベクトル処理:非構造データからのベクトル埋め込みの作成とセマンティック検索
 - NL2SQL:自然言語からSQL文を生成して実行
 - MySQL Studio:NL2SQLを使ったチャットやSQLの実行が可能なGUI
 
MySQL AIに同梱されるLLMはCPU上での動作に最適化されたモデルとなっています。リソースを多く使うため、最小構成はCPU:32仮想CPUコア、メモリ:128GB、ストレージ:512GBとなっています。一方でGPUは必要ではありません。現時点での対応OSは、Oracle Linux 8およびRed Hat Enterprise Linux 8のみです。
なおMySQL AIはMySQL Enterprise Editionのオプションとしての位置づけとなっています。そのためMySQL Enterprise Editionのサブスクリプションに加えて、MySQL AI用のオプション費用が別途発生します。
MySQL 9.5.0イノベーション・リリースでの新機能や変更点  
MySQL 9.
またSQL文の実行計画を表示するEXPLAIN文の出力形式が、従来の表形式
また、バッファプールにないセカンダリ・
レプリケーションおよびグループ・
InnoDBのREDOログへの書き込みを行う専用スレッド
[PostgreSQL]2025年10月の主な出来事 
10月4日に第54回 PostgreSQLアンカンファレンス@東京が開催されました。PostgreSQLアンカンファレンスは特定のテーマに絞らず、PostgreSQLに関連する話題であれば何でもOKという形式です。今回は約1年ぶりに株式会社アシストのセミナールームでのオフラインでの開催となりました。
オラクルが運営するPostgreSQLのマネージド・サービスとは 
オラクルといえば商用データベースの代表格であるOracle Databaseの開発元として知られています。またサン・
- OCI Database with PostgreSQL (OCI PostgreSQL)
の概要  - 
OCI PostgreSQLは、オープンソースのPostgreSQLの高度な機能と、OCIの堅牢なパフォーマンスおよび信頼性を組み合わせた、オラクルが提供するフルマネージドのデータベース・
サービスです。バックアップやパッチ適用は自動化され、小規模なシステムから業務システムまでの多様なニーズを満たすよう設計されており、可用性と拡張性のための特徴的なアーキテクチャにより、安全かつコストパフォーマンス良く運用できるサービスとなっています。  - 
2025年10月末現在では、PostgreSQL 17が最新のバージョンとなっています。9月にリリースされたPostgreSQL 18の提供準備中のため、利用を希望する方は問い合わせてほしいとのことです。
 - OCI PostgreSQLのアーキテクチャ
 - 
アーキテクチャの特徴は、コンピュートとストレージを分離にあります。データベースに最適化した新しいDatabase Optimized Storageの共有ファイル・
システムを利用し、ネットワークで接続されたストレージ上でデータを管理します。  - 
OCI PostgreSQLのアーキテクチャ概要 
 - 
このストレージは、あらかじめ領域を確保する必要はなく、データ量に応じて動的に容量が拡張または縮小されます。データとメタデータの変更は両方とも、ログ・
シーケンス番号 (LSN) でタグ付けされ、個々のデータベースブロックの LSN を追跡できるようになっています。  - 
参照処理の負荷分散や高可用性のためにレプリケーション構成を構築する際にも、この共有ストレージを利用して1ノードからの書き込まれたデータやWALを複数のノードで参照できるようになっています。ノード間ではメタデータのみが複製され、データそのものやWALは複製されないため、ノードの追加やフェイルオーバーも短時間で可能となっています。
 - OCI PostgreSQLで利用できる拡張機能
 - 
PostgreSQLの特徴でもある拡張機能はOCI PostgreSQLでも利用できます。利用可能な拡張機能は以下の通りです。
 
| デフォルトで有効 | 「構成」 | 
||
|---|---|---|---|
| btree_ | 
pg_ | 
address_ | 
pgaudit | 
| btree_ | 
pgcrypto | address_ | 
pglogical | 
| citext | plpgsql | amcheck | pgrowlocks | 
| cube | seg | anon | pgstattuple | 
| dict_ | 
tablefunc* | dblink | pgvector | 
| fuzzystrmatch | tcn | pg_ | 
postgis | 
| hstore | tsm_ | 
pg_ | 
postgis_ | 
| intarray | tsm_ | 
pg_ | 
postgis_ | 
| isn | unaccent* | pg_ | 
postgis_ | 
| lo | uuid-ossp | pg_ | 
postgres_ | 
| ltree | pg_ | 
||
- OCI PostgreSQLでは、設定パラメタや利用する拡張機能をまとめて設定する
「構成」 という仕組みがあり、デフォルトでは利用できるようになっていない拡張機能は、この「構成」 であらかじめ追加しておく形となります。  - ベクトル・
ストアやセマンティック検索に必要となるpgvectorや、図形や空間の情報管理の定番であるPostGISも利用可能となっています。また10月に開催されたOracle AI World 2025のOCI PostgreSQLセッションでは、OllamaやOpenAIなどの各種のLLMと連携してRAGや生成AIアプリケーションをPostgreSQLで実現するためのpgai for PostgreSQLをサポートする方向であることも発表されていました。  
国内でも学校教育市場に特化したICT専業メーカであるチエル株式会社での導入や、株式会社アバップでの社内DX基盤での採用事例が公開されています。大規模な導入事例としては、営業活動を支援するSaaSであるSeismic社での利用が公開されており、ここでは360以上のOCI PostgreSQLが稼働するという規模になっています。なお、Seismicの顧客事例としてはオラクル社が紹介されていたりもします。
OCI PostgreSQLは2023年11月にサービス提供が開始された比較的新しいサービスですが、ハイペースで機能強化や拡張機能の追加が行われています。OCI PostgreSQLはOCIの30日間無料トライアルでも利用できるため、まずは実際に触ってお試しください。
2025年11月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動
イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト
オープンソースカンファレンス(OSC)〔11月〜2026年1月開催分〕  
| 日程 | 〔Fukuoka〕2025年11月22日 〔Yamaguchi〕2025年11月23日 〔Okinawa〕2025年11月29日 〔Hiroshima〕2025年12月13日 〔2026 Osaka〕2026年1月31日  | 
|---|---|
| 場所 | 〔Fukuoka〕九州産業大学 12号館 2F 〔Yamaguchi〕常盤工業会館 〔Okinawa〕SAKURA innobase Okinawa 〔Hiroshima〕サテライトキャンパスひろしま 〔2026 Osaka〕大阪産業創造館 3F-4F  | 
| 内容 | オープンソースカンファレンス 〔Fukuoka〕オラクルのMySQLコミュニティチームおよび日本PostgreSQLユーザ会の講演やブース出展が予定されています。 〔Yamaguchi〕OSC山口 4回目です。オンラインとのハイブリッド開催です。 〔Okinawa〕OSC沖縄20周年記念企画です。セミナー発表者、ブース出展申し込みを募集中です。11月10日締切です。 〔Hiroshima〕セミナー発表者、ブース出展申し込みを募集中です。11月4日締切です。 〔2026 Osaka〕出展者 それぞれの開催回でのOSSデータベース関連の発表については、公開されるプログラム詳細をご参照ください。  | 
| 主催 | オープンソースカンファレンス実行委員会 | 
Oracle HeatWave Meet in Tokyo - シンプルな構成でデータを資産に変える -
| 日程 | 2025年11月6日 | 
|---|---|
| 場所 | ANAインターコンチネンタルホテル東京 | 
| 内容 | 本セミナーではITとビジネス双方の視点から、この課題に対するソリューションや実際のお客様事例をお伝えいたします。ご紹介するのは、使い慣れたMySQLを基盤に、DB内のデータからオブジェクトストレージ上のファイルまでを統合的に分析できる、革新的なクラウドネイティブサービス 業界最大級のチケット販売サイトを運営されている  | 
| 主催 | 日本オラクル セミナー事務局 | 
Hybrid/オンプレミスで実現するセキュアなDelta Lake基盤構築とデータ活用戦略 〜クラウドDB環境依存からの脱却〜
| 日程 | 2025年11月6日 | 
|---|---|
| 場所 | オンライン開催 | 
| 内容 | ベンダー各社のクラウドサービスを利用したデータ分析基盤の導入が進む一方で、 これらの課題を解決するため、EDB Postgres AI Analyticsを活用し、ハイブリッドやオンプレミス環境でセキュアなDelta Lake基盤を実現するアプローチを紹介します。クラウドに依存せず、自社の管理下で健全なデータレイクを構築し、機密データを最大限に活用するための具体的な移行・  | 
| 主催 | エンタープライズDB株式会社 | 
次世代RDB劔"Tsurugi"のJDBC(を作った話)(JJUG CCC 2025 Fallにて)  
| 日程 | 2025年11月15日 | 
|---|---|
| 場所 | ベルサール新宿グランド コンファレンスセンター | 
| 内容 | これは、例年2回開催する日本最大のJavaコミュニティイベントであるJJUG GCCでの1セッションです。 Tsurugiは2023年10月にOSSとしてリリースされた新しいRDBMSです。TsurugiにJavaでアクセスするライブラリーとしてTsubakuro・ 今回、PostgreSQLを使わずにTsurugiにアクセスするJDBCドライバーを開発しましたので、それを紹介します。  | 
| 主催 | 日本Javaユーザーグループ | 
PostgreSQL Conference Japan 2025
| 日程 | 2025年11月21日 | 
|---|---|
| 場所 | AP日本橋 | 
| 内容 | 日本PostgreSQLユーザ会 参加にはチケットの購入が必要です。チュートリアルトラック聴講を含むチケットは、例年売り切れになる事がありますので早めのし込みをおすすめします。  | 
| 主催 | 日本PostgreSQLユーザ会 | 
MySQL Technology Cafe リターンズ「MySQL AIとMySQL Studioを使ってみよう」 
| 日程 | 2025年11月26日 | 
|---|---|
| 場所 | オンライン | 
| 内容 | MySQLの技術ネタをあれこれご紹介するMySQL Technology Caféが帰ってきました。今回は、MySQL Enterprise Editionに搭載された新機能 さらに、新たな開発/  | 
| 主催 | Oracle Code Night | 
db tech showcase 2025 Tokyo(アーカイブ配信) 
| 日程 | 2025年8月21日から当面の間 | 
|---|---|
| 場所 | オンライン配信 | 
| 内容 | 国内で開催されるデータベース関連の主要なカンファレンスのひとつです。OSSデータベース専門のセミナーではありませんが、MySQLやPostgreSQLをはじめさまざまなOSSデータベースについての多数のセッションが毎年設けられています。 | 
| 主催 | 株式会社インサイトテクノロジー |