ファーストブックシリーズ多変量解析がわかる
2011年4月21日紙版発売
涌井良幸,涌井貞美 著
A5判/272ページ
定価2,068円(本体1,880円+税10%)
ISBN 978-4-7741-4639-3
書籍の概要
この本の概要
多変量解析はデータを客観的に分析する,とても応用範囲が広い統計手法です。またコンピュータの発展により,困難だった計算も,容易に実行できるようになりました。一方,多変量解析は難解で,道具として使いこなすのは,難しいイメージがあります。本書は,そんな難解といわれる多変量解析を,具体的な例題と図で分かりやすく解説。また,専用ソフトを用いないため,入門書としてうってつけです。「ファーストブック 統計解析がわかる」を読んだ次のステップとしても最適です。
こんな方におすすめ
- 多変量解析を勉強している方
- 幅広い統計手法を勉強したい方
目次
第1章 多変量解析の準備
1-1 多変量解析の目的 ~複数項目の資料から宝物情報を抽出する術
- 多項目からなる多変量資料
- 多変量解析の目的
- 個票データが重要
- 個票データで用いる言葉
1-2 分散 ~分散は資料のバラツキ具合を表す
- 資料の並の値が平均値
- 個体の個性を表す偏差
- 偏差の平方和が変動
- 偏差の2乗平均が分散
- 分散の記号
- 資料のバラツキを身近に表現する標準偏差
1-3 相関図 ~2変量の関係をイメージ化
- 2変量の関係を描く相関図
- 正の相関・負の相関
1-4 共分散,相関係数 ~2変量の関係を数値化する
- 偏差の積の平均値が共分散
- 2変量の関係を数値化する共分散
- 共分散の記号
- 共分散を普遍化した相関係数
- 分散共分散行列と相関行列
1-5 変量の標準化 ~データを規格化して見やすくする技法
- 変量を規格化する「標準化」
- 標準化された変量の共分散は相関係数と一致
1-6 パス図 ~変量の関係をイメージ化
- 変量の関係を図示するパス図
- 潜在変数を含むパス図
- パス図のまとめ
1-7 ソルバーの使い方 ~多変量解析のための強力な武器
- ソルバーの確認
- ソルバー利用法
1-8 クロス集計表 ~2つの項目の関係を表にする方法
- 例から調べるm×nクロス集計表
- 表側と表頭
第2章 回帰分析
2-1 回帰分析の分類 ~外的基準のある分析術
- 単回帰分析と重回帰分析
- 線形の回帰分析と非線形の回帰分析
- 回帰分析のイメージ化
2-2 単回帰分析とは ~相関図上の点を回帰直線で表現
- 回帰方程式のイメージ
- 回帰方程式の利用法
2-3 単回帰分析の回帰方程式の求め方 ~予測値と実測値との差を最小化
- 実測値と予測値
- 回帰方程式の求め方
- 実際に回帰方程式を求めてみる
2-4 単回帰分析の回帰方程式の公式 ~統計量の様々な関係
- 回帰方程式の公式
- 回帰方程式の公式の証明
- 残差平方和と残差の分散の関係
- 目的変量の分散は予測値と残差の分散の和
- 単回帰分析のパス図
2-5 決定係数 ~回帰分析の精度を示す指標
- 回帰方程式の精度
- 回帰方程式の説明力を表す決定係数
- 実際に決定係数を求める
- 重相関係数
2-6 重回帰分析 ~1変量を複数の変量から予測する分析法
- 重回帰分析の回帰方程式
- 重回帰分析の回帰方程式の求め方
- 実際に回帰方程式を求めてみる
- 重回帰分析のパス図
2-7 重回帰分析の回帰方程式の公式 ~一般公式は行列で表現
- 最小2乗法の復習
- 残差平方和を微分
- 回帰係数を行列表現
2-8 Excelを用いた回帰分析 ~LINEST関数の利用法
- LINEST関数で線形回帰分析
2-9 対数線形モデルの回帰分析 ~非線形モデルへの対応法
- 対数線形モデルとは
- 具体例を見てみる
- 変数を変換して線形モデル化
第3章 主成分分析
3-1 主成分分析の考え方 ~合成変量から資料を分析
- 変量の合成の原理
- 合成変量の作り方
- 主成分はデータの見方を変えただけ
3-2 主成分の求め方 ~分散を最大にする変量を合成
- 主成分は分散を最大にする変量合成
- 原理を直接用いて主成分を数値計算
- 主成分の解釈
- 各個体の主成分の値が主成分得点
3-3 寄与率 ~主成分の説明力を表現する指標
- 主成分の寄与率の定義
- 実際に寄与率を算出
3-4 第2主成分 ~主成分の搾りカスから抽出される第2の主成分
- 主成分の「搾りかす」から得られる第2主成分
- 主成分の「搾りかす」の資料の算出
- 実際に第2主成分を抽出
- 第2主成分を解釈
3-5 累積寄与率 ~主成分全体の説明力を示す指標
- 寄与率の和が累積寄与率
- 実際に累積寄与率を算出
3-6 変量プロットと主成分得点プロット ~主成分分析の結果を視覚化
- 変量を主成分から評価する変量プロット
- 個体を主成分から評価する主成分得点プロット
3-7 主成分分析の数学的な定式化 ~ラグランジュの未定係数法
- 主成分の求め方の復習
- ラグランジュの未定係数法
- 実際に微分計算
- 固有値問題を解く
- 固有値問題の解から主成分を得る
第4章 因子分析
4-1 データの背後を探る因子分析 ~データから原因をあぶり出す手法
- 1因子モデルで仕組みを理解
- 1因子モデルを式で表現
- モデルの式から分散・共分散を算出
- 因子間の独立性を仮定
- 変量の標準化で式を簡略化
- 変量の標準化
- 原理は分散・共分散を忠実に再現すること
- 方程式を解いてみる
- 因子の解釈
4-2 共通性と寄与率 ~共通因子の説明力を示す指標
- 変量に対する共通因子の説明力が「共通性」
- 資料全体に対する共通因子の説明力が「寄与率」
4-3 2因子モデルの因子分析 ~因子負荷量の方程式を導出
- 2因子モデルの関係式
- 2因子モデルの因子負荷量の方程式
4-4 2因子直交モデルを解く(1) ~最小2乗法で因子負荷量を決定
- 2因子直交モデルの因子負荷量の方程式
- 共通性を推定
- 共通性推定のためのSMC法
- 因子負荷量の方程式の解き方
- 因子負荷量の方程式を実際に解く
- 因子の意味を調べる
4-5 反復推定法 ~推定値と算出値との不整合を解決
- 反復計算の原理
- 計算結果を見てみる
4-6 バリマックス回転 ~共通因子を解釈しやすくする技法
- 因子分析の基本方程式の特徴
- 因子負荷量の回転
- 回転後のまとめ
4-7 2因子直交モデルを解く(2) ~主因子法で因子負荷量を決定
- 因子負荷量の方程式を行列表現
- 主因子法による因子の抽出
- 固有値問題を解く
- 最小2乗法と比較
第5章 SEM
5-1 古典的因子分析とSEM ~SEMはデータ構造を予め仮定
- 古典的因子分析の復習
- 古典的因子分析を発展させたSEM
5-2 確認的因子分析 ~因子の意味を予め仮定する分析術
- 確認的因子分析の関係式
- パラメータの決定原理は因子分析と同様
- 理論値と実測値の誤差が適合度関数
- 計算の実行
- 結果を見てみる
5-3 非直交モデルの因子分析 ~因子間の相関がある因子分析
- 非直交モデルとは
- 非直交モデルを式で表すと
- 非直交モデルの方程式を解く
5-4 潜在変数に構造を仮定できるSEM ~SEMらしい問題に挑戦
- モデルを式で表すと
- モデルの方程式を解く
- 結果を見てみる
5-5 SEMのモデルを検定 ~SEMと最尤推定法とのコラボレーション
- SEMの尤度関数
- 最尤推定法の適合度関数
- 確認的因子分析モデルを最尤推定法で分析
- 確認的因子分析モデルの確認
- 最尤推定法を実行
- 結果を見てみる
- 適合度関数と検定
- SEMの検定の特徴
第6章 判別分析
6-1 判別分析とは ~データの群分けを最適に判断する技法
- 2つの代表的な判別分析法
6-2 相関比 ~2群の離れ具合を表現する相関比
- 具体例で調べる
- 分散の分離
- 群の離れ具合を示す群間変動
- 群のまとまり具合を示す群内変動
- 全変動に占める群間変動の割合が相関比h2
- 相関比h2の性質
- 実際に計算してみよう
6-3 線形判別分析のしくみ ~相関比が最大になるような変量の合成
- 具体例でイメージ作成
- 群が離れて見える変量を合成
- 変量合成の原理は相関比の最大化
- 具体例を用いて計算
- 解確定のために合成変量zの分散を仮定
- 定数項決定の原理は相関比とは別
- 線形判別関数z=0は2群の境界線を表す
- 結果を見てみる
- 判別得点は群所属の判別の目安
6-4 線形判別分析の計算の実際 ~パソコンで解いてみる
- 線形判別分析のまとめ
- Excelのソルバーで線形判別分析
6-5 線形判別分析の数学的解法 ~統一的な議論が可能
- ラグランジュの未定係数法を利用
- 微分の結果を行列で表現
- 未定係数mは相関比
- 実際にmを求めてみよう
- 線形判別関数を求めてみよう
6-6 マハラノビスの距離 ~確率を加味した平均値からの遠近表現
- マハラノビスの距離の必要性
- 1変量のマハラノビスの距離
- 多変量のマハラノビスの距離
- マハラノビスの距離を一般化
- マハラノビスの距離と多変量正規分布
6-7 マハラノビスの距離による判別分析 ~距離の遠近で群判別
- マハラノビスの距離による判別の原理
- マハラノビスの距離による判別の具体例
- マハラノビスの距離による判別の正誤
6-8 判別的中率 ~判別の精度を示す指標
- 判別的中率
- 判別的中率の評価
第7章 質的データの多変量解析
7-1 質的データの統計学 ~数値の意味を持たないデータの扱い
- データを測る尺度には4種
- 質的データの統計解析
- アイテムとカテゴリー
7-2 数量化Ⅰ類 ~量的データを基準に質的データを数量化
- 数量化Ⅰ類の分析対象となる資料
- 各カテゴリーにカテゴリーウェイトを付与
- 目的変量とサンプルスコアとの誤差を最小化
- カテゴリーウェイトを条件付け
- 最小2乗法を用いて実際に計算
- 結果を見てみる
7-3 数量化Ⅱ類 ~質的データを基準に質的データを数量化
- 数量化Ⅱ類の分析対象となる資料
- カテゴリーウェイトの設定
- 2群を遠ざけるようにウェイトを決定
- 相関比のまとめ
- 相関比を最大にする数量化が数量化Ⅱ類
- カテゴリーウェイトに条件付け
- 相関比h2を最大にするように数量化
- 結果を見てみる
7-4 数量化Ⅲ類 ~クロス集計表の表側と表頭のカテゴリーを数量化
- 数量化Ⅲ類の分析対象となる資料
- 数量化Ⅲ類は項目の並べ替え
- クロス集計表の並びは相関図の並び
- 数量化Ⅲ類の原理は相関係数の最大化
- 相関係数を求めるための個票を作成
- 作成した個票から相関係数を算出
- カテゴリーウェイトの条件付け
- 相関係数を最大にするように数量化
- 結果を見てみる
7-5 数量化Ⅳ類 ~互いの親近性から関係を数量化
- 数量化Ⅳ 類の分析対象となる資料
- 親近度の重みづけをした距離を距離を考える
- 距離Qを最小にするように数量化
- 結果を見てみる
- 多次元に拡張
7-6 コレスポンデンス分析 ~数量化Ⅲ類の拡張
- コレスポンデンス分析の対象となる資料
- コレスポンデンス分析は項目の並べ替え
- クロス集計表の並びを相関図の並びで解釈
- コレスポンデンス分析の原理は相関係数の最大化
- 相関係数を求めるための個票を作成
- カテゴリーウェイトを条件付け
- 相関係数を最大にするように数量化
- 結果を見てみる
- カテゴリーウェイト順に並べ替え
付録
- 付録A 分散と共分散の計算公式
- 付録B 重回帰方程式の一般的な解法
- 付録C 極値条件とラグランジュの未定係数法
- 付録D 行列の基本
- 付録E 対称行列の固有値問題とその性質
- 付録F 固有値問題の数値的解法
- 付録G 第1主成分を取り除いた「搾りカス」変量の導出
- 付録H 正規分布と多変量正規分布
- 付録I 最尤推定法
- 付録J 最尤推定法のための適合度関数