子どもたちの未来を創ったプログラミング教育
~日本最初のプログラミング教育を受けた小学生たちは一世代後にどう育ったか、プログラミングが育てた思考・創造力~

[表紙]子どもたちの未来を創ったプログラミング教育 ~日本最初のプログラミング教育を受けた小学生たちは一世代後にどう育ったか、プログラミングが育てた思考・創造力~

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A5判/336ページ

定価1,980円(本体1,800円+税10%)

ISBN 978-4-297-12882-1

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書籍の概要

この本の概要

新学習指導要領によって小中高校でプログラミング教育が義務化されました。

しかし教育現場では本来の目的とされている子どもたちのアルゴリズム理解や理数能力の向上など,思考力や創造力を育てる授業とはほど遠いのが現状で,試行錯誤が続いています。

1970年代はじめ,パソコンの普及以前にアメリカのマサチューセッツ工科大学では世界最初の子ども用プログラミング言語『LOGO』が開発されていました。Scratchの母体となった言語です。そのLOGOを数少ない資料をもとに自作し,日本で最初に小学生にプログラミング教育を始めた小学校教師が著者の戸塚滝登氏です。戸塚氏は80年代初頭から20年間以上に渡ってプログラミング教育を実践しつづけ,日本の先駆者として知られています。

本書は,その教育を受けた子どもたちがどのようにプログラミングの授業を受け,その後どのように育ったのか,また,どのような職業についたのかを追跡調査した内容をまとめた書籍です。

身近な自然現象のおもしろさを探究するプログラミング理科,日常生活にひそむ算数や数学を探究するアルゴリズム算数など,戸塚氏は現在のプログラミング教育の源となった数々の教材と授業を開拓し,プログラミング授業によって生徒たちの探究心と好奇心を引き出し,思考力や創造力を育てました。その実践は新学習指導要領の中に姿を変えながら取り込まれています。

プログラミングによって養われる能力を子どもたちに身につけさせたいと望んでいる現場教師,自分の子どもにどのような教育を受けさせ,どうプログラミングと出会わせたらよいか悩んでいる保護者の方,そしてプログラミング教育の全体像を理解したいと望んでいる教育関係者と研究者の方にとって一助となる一冊です。

こんな方におすすめ

  • プログラミング学習で何が身につくのかを知りたい現場教師と保護者の方
  • プログラミング教育の全体像を理解したい教育関係者と研究者の方

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プログラミングによって養われる能力を子どもたちに身につけさせたいと望んでいる現場教師,自分の子どもにどのような教育を受けさせ,どうプログラミングと出会わせたらよいか悩んでいる保護者の方,そしてプログラミング教育の全体像を理解したいと望んでいる教育関係者と研究者の方にとって一助となる一冊です。

目次

第1章 30年後の宿題
―教え子追跡調査プロジェクトのはじまり―

  • 1 女学生さんの問い
  • 2 新米教師とパソコン
  • 3 山奥の分校へ
  • 4 子どもたち
  • 5 彗星さがし
  • 6 教え子追跡調査の3つの特徴

第2章 最後のミッション

  • 1 「教育」という車の奇妙なダッシュボード
  • 2 どうやって長期教育効果を確かめるか?
  • 3 教え子追跡調査の目的
  • 4 2つの壁
  • 5 追跡する教え子たちをしぼり込む
  • 6 最初から驚きの結果が出た
  • 7 偶然の比較対照実験
  • 8 教師という名のコメットハンター

第3章 9つのプログラミングの物語
―アルゴリズム算数・プログラミング理科―

  • 1 子どもたちにどのようにプログラミングを教えたか
  • 2 村の地図を歩いてつくる
    ―1983年:氷見市立仏生寺小学校―
  • 3 ひまわりの葉の生長を調べる
    ―1983年:氷見市立仏生寺小学校―
  • 4 『ロゴたんけん隊』でプログラミングを学ぶ
    ―1985年:氷見市立湖南小学校―
  • 5 正11角形をさがせ
    ―1986年:氷見市立湖南小学校―
  • 6 木星の4つの月の公転周期を見つける
    ―1984年:氷見市立湖南小学校―
  • 7 クモはどうやって巣をつくるかプログラムする
    ―1986年:氷見市立湖南小学校―
  • 8 自然のパターンのひみつ
    ―1988~1989年:富山市立神明小学校―
  • 9 ひよこの成長を追跡する
    ―1997~1998年:富山市立堀川南小学校―
  • 10 再帰的プログラムで素数をさがす
    ―1994~1995年:富山市立藤ノ木小学校―
  • 11 自然の音楽コンサートにて

第4章 プログラミングに優れた子どもたちの謎

  • 1 3つの資質
  • 2 8人の教え子たちとプログラミング
  • 3 創造性,リジリエンス,不思議感受性
  • 4 30年後の宿題プリント
  • 5 大人になった教え子たちはプログラミング教育をどう評価しているか
  • 6 学びは島,知識は海

第5章 「小さな研究室」の発見
― 一斉授業との決別―

  • 1 真逆の結果
  • 2 プログラミング教育と一斉授業は「水と油」
  • 3 一斉授業から隔離されて育ったITヒーローたち
  • 4 学びのひみつ基地
  • 5 「小さな研究室」のしくみ
  • 6 あなたの学校にも「小さな研究室」は実現できる
  • 7 3つの車輪
  • 8 ガラパゴス・ゾーン
  • 9 未来圏から吹く風を読む
  • 10 プログラミング教育に課せられたミッション

第6章 論理の誕生
―プログラミング教育が育むもの―

  • 1 残された謎
  • 2 変身キッズたちのプログラミング
  • 3 あきちゃんのプログラミングの不思議
  • 4 K君とデボラちゃんのプログラミング
  • 5 論理の発見

第7章 プログラミング教育の根源I
―元小学校教師の哲学者,ウィトゲンシュタインが考えたこと―

  • 1 ピアジェの問い
  • 2 野生の思考と栽培された思考
  • 3 ワイルドフラワーの謎
  • 4 元小学校教師だった哲学者,ウィトゲンシュタインが考えたこと
  • 5 プログラミングは子どもたちの思考に「論理の足場」を与える

第8章 プログラミング教育の根源II
―プログラミング教育の父,パパートが考えたこと―

  • 1 ピアジェの影武者,マカロックの弟子
  • 2 マカロックとピッツのニューラルネット
  • 3 パーセプトロンの失敗
  • 4 LOGOの誕生
  • 5 タートルの誕生
    ―論理思考をめぐらせるための道具
  • 6 LOGOは教育思想だ
  • 7 拝啓パパート先生
  • 8 プログラミングという「原教科」
    ―なぜ人工言語を学ぶのか

第9章 学びをつれてくる「道具」
―AIと子どもたちとの関わり―

  • 1 「心の嵐」に吹かれた子
  • 2 「道具」は学びに先行する
  • 3 伝達主義と構築主義
  • 4 衝突
  • 5 縛られた振り子
  • 6 AIはどのように学ぶのか
  • 7 人はなぜ子ども時代を与えられているのか?

第10章 先生がくれた未来へのバトン

  • 1 いいえ,10年先の仕事をやりに行くんです!
  • 2 未来教師
  • 3 女教師のバトン
  • 4 「小さな研究室」の記憶
  • 5 潮風とシャボン玉
  • 6 学びの明かりを灯すもの
  • 7 未来教師の使命
  • 8 窓際のトットちゃんの謎
  • 9 100人の教師の群れよりも,1人の教師の力を信頼する
  • 10 最終便のモーツァルト
  • 11 夜明けへ

著者プロフィール

戸塚滝登(とつかたきと)

1952年,富山県生まれ。富山大学理学部物理学科卒。1979年から2003年まで,富山県内の公立小学校で教諭を務める。70年代末よりプログラミング教育を実践,日本のプログラミング教育のパイオニアの一人。NHKこどもメディア研究会委員や東京学芸大学非常勤講師を経て,現在はサイエンスライターとして小学館「総合教育技術」誌などに連載多数。著書に『コンピュータ教育の銀河』(晩成書房 1995),『コンピュータが連れてきた子どもたち』(小学館 2005),『子どもの脳と仮想世界』(岩波書店 2008)など多数。大の天文学ファンで天体観測と彗星探しが趣味。