60分でわかる! 60分でわかる!
トランプ関税と自由貿易

「60分でわかる!
トランプ関税と自由貿易」のカバー画像
著者
バウンド 著
小田正規おだまさき 監修
定価
1,540円(本体1,400円+税10%)
発売日
2025.9.30
判型
四六
頁数
160ページ
ISBN
978-4-297-15146-1

概要

トランプ関税、米中対立、レアアース、炭素国境調整措置(CBAM)、そして経済安全保障──。

近年の経済ニュースで頻出するこれらのキーワードの背景には、「自由貿易」と「保護主義(貿易)」の対立構造が存在します。とくに第一次トランプ政権以降、自由貿易の旗手とされてきたアメリカが保護主義へと急速に舵を切り、第二次政権ではWTOへの拠出金停止や、全世界に対する一方的な関税措置など、従来の国際秩序を揺るがす政策を推進しています。その結果、「自由貿易=善」という従来の前提は大きく崩れつつあり、世界は深い混乱の只中にあります。いまや、国家安全保障や気候変動、デジタル取引の分野までもが「貿易」の問題に組み込まれつつあり、従来の枠組みでは捉えきれない局面を迎えています。こうした状況を理解するためには、自由貿易と保護貿易という基本軸を押さえることが不可欠です。この軸を持つことで、国際政治や経済の構造が立体的に捉えられるようになり、日本への影響や、読者自身が働く業界、日常生活に及ぶインパクトまで、よりわかりやすく理解できるようになります。

本書は、複雑化する貿易の現実を、「自由貿易 vs 保護主義」というシンプルな対立軸から再構成し経済ニュースや国際政治の“行間”を読み解くための、わかりやすいビジネス教養書をめざします。

こんな方にオススメ

  • 第二次トランプ政権の関税政策ニュースを耳にして、日本国内の景気動向や家計への影響について関心をもった人
  • 貿易交渉=経済戦争による世界秩序の崩壊を目の当たりにしているのではないかと考える人
  • 国際経済や国際政治に関心の高い、お金を増やしたい人、資産を守りたい人、リスクを管理したい人

目次

Part1 貿易赤字はアメリカ経済の弱点か? 強みか?
貿易大国アメリカの貿易赤字は本当に“悪”なのか?

  • 001 とにかく「赤字」が嫌いな実業家ドナルド・トランプ
  • 002 なぜアメリカは“貿易赤字”が増え続けているのだろうか
  • 003 アメリカの貿易赤字の現状と国別の内訳を見てみよう
  • 004 日本の対米輸出・輸入の内訳を見てみよう
  • 005 それでも企業への影響は不可避 トヨタが発表した関税の影響
  • 006 関税の影響を織り込んだ日本企業の業績見通し
  • Column 自由貿易の始祖「アダム・スミス」の経済観

Part2 アメリカの関税政策に世界は大混乱!?
世界経済を混乱に陥れた「トランプ関税」

  • 007 世界に衝撃を与えた「トランプ関税」とは?
  • 008 トランプ政権が世界各国に課した相互関税の税率を見てみよう
  • 009 狙い撃ちされた中国 報復関税の応酬の経緯
  • 010 トランプ関税は誰が得をして、誰が損するのか?
  • 011 アメリカがめざすのは自由貿易? それとも保護主義?
  • 012 「 国内政治」の道具になる貿易政策
  • 013 アメリカの世論と企業は「トランプ関税」にどう反応したか?
  • 014 トランプ関税でアメリカに“製造業”は戻るのだろうか?
  • 015 アメリカの関税措置に関する日米間の合意の内容は?
  • Column 保護貿易を主張した「フリードリヒ・リスト」

Part3 貿易政策は2つに大別される
よくわかる 自由貿易vs保護主義の基本

  • 016 自由貿易を支える論理「比較優位」とは何か?
  • 017 自由貿易のメリット・デメリット
  • 018 保護貿易のメリット・デメリット
  • 019 自由貿易? 保護貿易? 国によって“正解”は異なる
  • 020 同じ国の中でも立場で変わる貿易の“正しさ”
  • 021 短期の「保護」か? 長期の「自由」か? 時間軸で変わる貿易戦略
  • 022 自由貿易の恩恵の裏にある代償に目を向ける時代へ
  • 023 経済のグローバル化と「環境と経済のジレンマ」
  • Column 比較優位を唱えた「デヴィッド・リカード」

Part4 トランプ関税で大きな注目を集めた!
国と国の貿易に影響を与える「関税」とは?

  • 024 「関税」の基本を知っておこう
  • 025 従価税・従量税・混合税──関税の3つのタイプ
  • 026 関税が価格に与えるインパクトと「為替レート」
  • 027 関税が企業の行動をどう変えるのだろうか?
  • 028 日本がかけている関税、かけられている関税
  • 029 見えない“もうひとつの関税”「非関税障壁(NTBs)」とは?
  • Column GATTにつながる貿易秩序を構想した「ケインズ」

Part5 WTOを中心に貿易のルールは決まっている
国際貿易の基本ルールを知っておこう!

  • 030 「 自由」と「保護」でせめぎ合う貿易の歴史
  • 031 自由貿易の促進を目的とする国際機関WTO
  • 032 WTOが定める関税の4つの基本原則とは?
  • 033 WTOルールを“無視”する国もある
  • 034 大国によるルールメイキングは本当に公平?
  • 035 意義が問われているWTOの紛争解決手続き
  • 036 貿易をスムーズにする「自由貿易協定(FTA)」とは?
  • 037 「経済連携協定(EPA)」は世界的にはFTAと同じもの
  • 038 FTA/EPAは“ルール”を変えるツールという側面もある
  • 039 各国はなぜ多国間協定を結ぶのか?
  • 040 新時代の非関税ルール枠組み「IPEF」とは?
  • Column 新自由主義に異論を唱えた「スティグリッツ」

Part6 世界で広がる経済連携のネットワーク
日本と世界のFTA・EPAを見てみよう!

  • 041 日本がリーダーシップをとった「CPTPP」
  • 042 日本とEUによる巨大経済圏「日本・EU経済連携協定(EPA)」
  • 043 日中韓が参加する世界最大のFTA「RCEP」
  • 044 日本初のマルチFTA/EPA「AJCEP」
  • 045 欧州を単一市場にした「EU関税同盟(EUCU)
  • 046 NAFTAが進化した北米3カ国の「USMCA」
  • 047 複数のFTA/EPAはどのように運用されるのか?
  • 048 日本はFTA/EPAで何を得て、何を失っているか?
  • 049 農業団体と産業界で立場が異なる日本のFTA/EPA交渉の現実
  • Column トランプ関税を猛批判した「ポール・クルーグマン」

Part7 自由貿易? 保護主義? 各国のスタンスは?
各国の貿易政策を見てみよう!

  • 050 CPTPPで主導し、RCEPでつなぐ“橋渡し戦略”を進める「日本」
  • 051 関税を武器に内向きの戦略を志向する「アメリカ」
  • 052 ブロック化と技術独立を加速する「中国」
  • 053 自由貿易と保護主義を巧みに使い分ける「韓国」
  • 054 環境ルールで世界をリードする「EU」
  • 055 地域主導型のFTA戦略をとる巨大市場「ASEAN」
  • 056 貿易には慎重、産業保護には積極的な「インド」の“大国戦略”
  • 057 各国のそれぞれの事情に応じた“選択と戦略”
  • Column TPP交渉を主導した実務家「甘利明」

Part8 押さえておきたい貿易をめぐる新しい潮流
デジタル・環境・経済安保――現代の争点を知っておこう!

  • 058 半導体、レアメタルは“武器”!? 経済安保という戦い
  • 059 経済安全保障と日本企業が直面する調達リスク
  • 060 経済安全保障と自由貿易は両立できるのか?
  • 061 貿易の公平・不公平はどう測るのか?
  • 062 補助金は自由貿易の敵か? 公的支援と競争のゆがみ
  • 063 自由化が進んでいない「サービス貿易」の現状
  • 064 クラウド・知財・EC――デジタル貿易とは何か?
  • 065 新しい非関税障壁として注目される「データ」の越境ルール
  • 066 炭素国境調整措置(CBAM)がもたらす環境をめぐる貿易摩擦

付録 日本のFTA一覧

プロフィール

小田正規おだまさき

日本大学国際関係学部・准教授

東京外国語大学外国語学部英米語学科卒、慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科単位取得退学。1991年に株式会社三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)に入社し、貿易政策に関する各種調査研究に従事。2009年より内閣官房国家戦略室において、成長戦略、TPP交渉参加問題、東日本大震災後のエネルギー政策の立案に関わる。ニュージーランドの高等教育機関であるInstitute of Pacific United New Zealand(IPUNZ)、環太平洋大学経営学部を経て、2020年より現職。専門は国際経済学、国際貿易論。