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世の中はもうデジタルカメラ1色。重い腰を上げてデジタル一眼レフを買ったけど,昔の銀塩時代が懐かしい。そんな,カメラ好きの方はいませんか?
デジタルカメラと銀塩カメラのちがいは多々あります。内部構造がちがうのは当たり前。フィルムもないし,シャッター音が人工的だったり,細かい設定は画面を見て行う…。言い出せば切りがありません。そもそも,「静止画を記録する装置」という点で「カメラ」という名前が付いているものの,その「記録」の方式は,銀塩とデジタルでまったく異なるのです。ここらでちょっと,学習してみましょう。
銀塩カメラが静止画を記録する仕組みは,次のようなものです。レンズを通して光を受け止め,その光をフィルムに焼きつける。けれどもそのままでは,まだ「写真」ではありません。フィルムは「現像」されてはじめて「写真」になるのです。
それに対してデジタルカメラは,レンズを通して光を受け止め,その光を1と0のデジタルデータとして記録します。そして,やっぱりこのままではまだ「写真」ではないのです。デジタルデータはカメラ内で画像処理され,jpegという形式で保存されます。この段階ではじめて,「写真」となります。そしてこのカメラ内部での「画像処理」が,すなわち銀塩カメラでの「現像」に相当するわけです。
つまり,銀塩カメラでは,写真屋さんに持ち込んだり,暗室内で引き延ばし機などを使った現像作業が必要だったのに対し,デジタルカメラはこの作業をカメラ内部で行ってしまうというわけ。これはすごく便利ですよね。けれども,便利な反面,本当に写真が好きな人には,物足りなくもあるのではないでしょうか?つまり,「フィルム」という素材をもとに,自分の思い描いた「絵作り」を行う楽しみ。そう,「自分で現像を行う」楽しみが,すっぽり抜け落ちてしまうのです。
こんな「写真を撮ることの大事な楽しみ」をデジタルで実現するために,実は「RAWデータ」というものがあります。「RAW」という形式でデータを保存すると,jpeg形式で保存したときに行われていたような,カメラ内部での画像処理が行われません。つまり,銀塩におけるフィルムのような,素のままの情報が記録されるのです。それではどこで,デジタルデータの「現像」を行うのか?そこで登場するのが,パソコンと,RAW現像専用のソフトウェアです。
カメラに記録したRAWデータをパソコンに持っていき,RAW現像ソフトで読み込みます。すると,次のような画面で,撮影した数々のデータが表示されます。これは,ライトボックスにスライド入りポジを並べている状態に近いのではないでしょうか?(図1)
図1 Adobe Photoshop Lightroomで写真を閲覧
図2 Adobe Photoshop Lightroomで写真を現像
これら無数の写真の中から,これぞと決めた写真を選び,現像を行っていくのです。(図2)たとえばホワイトバランスの調整,色補正,彩度調整,シャープ化,グレースケール化などなど。その中には,これまでフィルムの現像で行ってきたこともあれば,フィルムでは決してできなかったことも含まれています。そしてなにより重要なことは,デジタルで欠けてしまいがちだった,「写真を撮ることの大事な楽しみ」がここで復活する,ということなのです。
RAW現像を行うためのソフトには,数多くのものがあります。カメラメーカーが販売しているものもあれば,デザイナーが使うような高級ソフトでも実現可能です。しかしここでお勧めするのは,「Adobe Photoshop Lightroom」というソフト。ここまでで説明してきたように,重要なのは,「銀塩カメラで実現していた現像という楽しみを,デジタルで再現する。そして,それ以上のことを行う」ということです。それには,銀塩で行ってきた現像という行為の操作感や理念を継承する,ということなのではないでしょうか。その意味で,Lightroomは銀塩時代の感覚でRAW現像を行うことの可能な,古くて新しいソフトウェアだといえるでしょう。もちろん,パソコンでの操作は暗室での作業と根本的に異なります。多少の慣れや学習も必要です。けれどもわれわれはLightroomを推奨します。いちはやくRAW現像にチャレンジし,「写真」の新の喜びを再発見してみませんか?