ネコも杓子もFX!?
FX(外国為替証拠金取引)が盛り上がっています。
書店では関連本が平台に並び,マネーとはあまり縁のない一般雑誌でも特集が組まれたりしています。新聞の社会面では,「主婦がFXで稼いだ数億円を脱税」などのニュースが紙面をにぎわし,「FXってそんなにいけてるの!?」と個人投資家の注目は高まるばかりです。
さて,盛り上がる一方のFXですが,ここでは,外国為替取引の入り口のところでよくある勘違いについてご紹介することにします。
社会の授業を思い出そう
みなさんは学校で習った「円高(米)ドル安」「円安(米)ドル高」の話を覚えていますか?
「公民」とかそんなような授業で,社会科の先生が黒板に書きます。
昨日は1ドル=120円50銭。
今日になると,1ドル=119円50銭になった。
これは「円高」それとも「円安」?
どうでしょうか?みなさんは「……えーっと……」と立ち止まらないで,すぐに答えることができるでしょうか?
1ドル=120円50銭が,1ドル=119円50銭になることは「円高」です。
でも,ちょっとわかりづらい感じがしませんか?
120円50銭が,119円50銭に1円値下がりしているのに,なんで円高なのでしょうか?
逆に,120円50銭が,121円50銭になることは「円安」です。
値上がりしているのに円安。わかりづらいですね。
値上がりしたから「ドル高」,値下がりしたから「ドル安」
このわかりづらさの原因は,「円高ドル安」「円安ドル高」と表現することにあります。
ここで,「円」と「ドル」の順番を入れ替えてみましょう。つまり,「ドル高円安」「ドル安円高」の順番で表記することにします。
1ドル=120円50銭が,121円50銭になることは,「ドル高円安」です。1ドル=120円50銭が,119円50銭になることは,「ドル安円高」です。
どうでしょうか? 値上がりしたら「ドル高円安」,値下がりしたら「ドル安円高」。しっくりこないでしょうか?
最初に円を持ってきて後ろにドルを置く表記法は,日本国内では一般的です。新聞もテレビもそう表現しています。でも,外国為替市場の慣習に照らせば,それは誤りです。
外国為替市場では,ドルと円の組み合わせを「ドル/円」「ドル円」と表記します。アルファベットなら,「USD/JPY」です。
1円=0.0083×××ドルとはいいません
ドルと円の為替レートは「1ドルが何円なのか」で表されます。「円/ドル」「円ドル」「JPY/USD」とするなら,本来は円に基準を置いて,「1円が何ドルなのか」で表さなくてはおかしいのです。
ただし,注意していただきたいのは,「こっちの通貨の方がすぐれているから前,あっちの通貨の方がダメだから後」ということではありません。順番を決めているのは,あくまでも外国為替市場の慣習です。
実際,ドルはいつも前にくるのかというと,そんなことはありません。代表的な通貨ペアの表記一覧をご紹介します。
米ドル/円 | USD/JPY |
ユーロ/円 | EUR/JPY |
英ポンド/円 | GBP/JPY |
豪ドル/円 | AUD/JPY |
ニュージーランドドル/円 | NZD/JPY |
スイスフラン/円 | CHF/JPY |
カナダドル/円 | CAD/JPY |
ユーロ/米ドル | EUR/USD |
英ポンド/米ドル | GBP/USD |
豪ドル/米ドル | AUD/USD |
ニュージーランドドル/米ドル | NZD/USD |
外国為替市場は世界に開かれたマーケットです。そのインターナショナルなマーケットで,「円/ドル」は明らかにマイノリティです。
早稲田と慶応の対抗戦のことは,ふつう「早慶戦」といいますね。もちろん「慶早戦」と呼ぶ人もいるのでしょうけれど,「……けーそー?なにそれ?……???」ということもないとはいえないでしょう。
外国為替取引は大切なお金を売買することです。ですから,無用な混乱はできるだけ避けるのに越したことはないのです。