著者の一言

この世界は「欺瞞」「理不尽」「不条理」「不公平」「不平等」に満ちている。

たとえば、近年、人の外見についての発言は叩かれる傾向にある。⁠美人だね」というのもアウトだし、⁠ミス〇〇コンテスト」というのも批判され休止に追い込まれる。その多くは、外見による差別を助長するからという理由だ。

でも、現実にはどうだろう。美人はチヤホヤされるし、営業に行っても門前払いにはなりにくい。同じ能力ならイケメンのほうがプレゼンなどでも有利だ。⁠容姿がいいほうが収入が多い」というデータもあるという。それに、婚活市場でも出会いのきっかけを作りやすいだろう。

自分の思いどおりにならないこと、自分にはどうしようもできないことは多い。そんな現実に立ち向かうにはどうすればいいか。

その答えの1つが、お金の知識を身につけることだ。お金がすべてではないにしろ、お金と上手に付き合うことができれば、人生が豊かで充実したものになる可能性が高い。必要なモノが必要な時に必要なだけ手に入るとか、必要なサービスが受けられる、楽しい経験ができれば幸福の一要素になるというのはわかりやすいと思う。

逆に、お金との付き合い方が下手であれば、不便でみじめな人生になることもある。お金を巡ってトラブルになったり、だまされたり人間関係が壊れたり、ときには殺人事件にまで発展することがある。お金に執着するあまり、誤って振り込まれた給付金を返還せず使い込んだり、詐欺に手を染めて逮捕されるというニュースもある。お金との付き合い方をまちがえると、人生を破滅させることもあるんだ。

成人になれば、自分でクレジットカードを作ったり、物件を借りることもできるようになる。でも、大人の中にはズルイ人がいるし、本当のことを言わないことも少なくない。君をうまく誘いこんでお金をまき上げようと考えている人もいるだろう。もちろん、多少の失敗は、経験値を高めるうえでも大事なことだ。けれども、お金のことを知らないまま丸腰で成人を迎えれば、思わぬ窮地に陥ってしまう可能性がある。

多くの親は、お金のことは教えてくれない。⁠いやらしいから」という理由でお金の話をしたがらない。親の年収や貯蓄額をたずねても「そんなことを知らなくてもいい」とはぐらかされるだろう(むろん、自分の親以外の大人にこんなことを聞くのはマナー違反だけれども⁠⁠。

2022年度から高校の家庭科で金融教育の授業が導入されたけれども、その時間は圧倒的に少ない。それに、教える先生自身が上手にお金を扱えるとは限らない。

これから、君にお金で不幸にならないために最低限必要だと思える知識と考え方を伝えたい。疑問に感じることもたくさんあると思う。人によって価値観は違うし、時代環境も変わるから、学校のテストのような正解は存在しない。だから、これからする話は、鵜呑みにするのではなく、ヒントか参考であると受け止め、自分なりに考え、君自身の価値判断基準を確立していってほしい。

価値判断基準とはどういうことかというと、⁠自分は何を大切にしたいか」という軸と、⁠自分はどういう人間を目指し、人生をどう展開させたいか」という展望だ。それが、自分はいま、何をしてお金を稼ぎ、何にお金を使い、何に使わないべきかという判断につながる。判断の基準はどんどん変わっていくとしても、都度振り返ってそれらを考えることで、より納得できるお金との付き合い方、そしてより納得できる人生につながると思っている。

冒頭で、この世界は「欺瞞」「理不尽」「不条理」「不公平」「不平等」に満ちていると伝えたけれども、じつはそう恐れることはない。なぜなら、それらは見抜くことも回避することができるし、乗り越えることも、打ち砕くこともできるからだ。私自身も私のまわりの富裕層や成功者と呼ばれる人たちも、そうやって人生を切り開いてきた。

「お金の知識とその使い方」は、人生を切り拓くための大きな武器になる。その武器をより強力なものにすれば、意外にこの世は楽勝だということがわかってくるはずだ。

ぜひ本書にてそれらを楽しんで学んでもらいたい。

Good Luck!

午堂登紀雄(ごどうときお)

1971年岡山県生まれ。米国公認会計士。

中央大学経済学部卒業後,会計事務所,コンビ二エンスストアチェーン本部を経て,戦略系経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして勤務。

現在は起業家兼個人投資家としての活動に加え,講演や執筆活動もおこなっている。

『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房),『いい人をやめれば人生はうまくいく」(日本実業出版社)など著書多数。

【ホームページ】http://www.drivin-yourlife.net/