この記事を読むのに必要な時間:およそ 1 分
最近,自動運転やスマート検索などのAI(人工知能),各種スマートフォン,VR(仮想現実),最先端の迫力ある3Dグラフィックス... と幅広い文脈で,「GPU」というキーワードが登場しています。現在「GPU」と言うと,低電力のスマートフォン用や,ハイエンドグラフィックス向けをはじめとした消費電力の高いもの,計算精度があまり求められない用途,高い計算精度もエラー訂正も必要な用途等々,多岐にわたります。ここでは,GPUの基本事項と大注目を集めている現況などを概観してみましょう。
「Graphics Processing Unit」として登場
GPUはそれ単体で仕事をするのではなく,汎用プロセッサのCPUと協力して適材適所で仕事を分担して処理を行うのが基本です。
元々「Graphics Processing Unit」と呼ばれていたGPUのルーツは,3Dグラフィックスです。精彩な3Dモデルに必要な大量の座標変換や膨大なピクセルごとの処理など,画像表示処理に特化したプロセッサ(処理装置)として登場しました。これらの演算は並列処理ができるという特徴があります。
科学技術計算/スパコン,AI/ディープラーニングへ
GPUは,大量の計算を並列に実行することで高い性能を発揮するように作られています。これを物理現象のシミュレーションなどの科学技術計算に利用したいといった要望が出てきて,GPUメーカーは科学技術計算をターゲットにしたGPUを作りました(※)。
GPUはスーパーコンピュータ向けでも実績を上げています。トップレベルの1/3ほどがGPUをはじめとしたアクセラレータを数値演算に使用しています。
また,大いに盛り上がっているAIやディープラーニングにおけるニューラルネットなどの計算はGPUの得意とするところで,ここでもGPUの存在感は増す一方です。
グラフィックス分野でのいっそうの進化
大元のグラフィックス分野でも,3Dの迫力ある美しい画像生成,あるいはリアルタイム処理の3D画像はゲームだけではなく,工業製品の設計や身近なサービスにも続々と取り入れられています。さらに,VRなどの分野でもGPUは重要な位置を占めています。
また,スマートフォンなどの携帯機器でもカラフルなグラフィックスは欠かせません。これらの小さな端末のSoC(System on Chip)にも,CPUやその他各種機能のユニットと一緒にGPUが搭載されています。
AIやグラフィックスにおける並列計算でGPUが高い性能を発揮し,GPUの計算能力が各分野の進化を加速し,さらには利用分野が広がり,それらの分野がGPUに新たな改良を促すという,ポジティブな連鎖反応が爆発的な普及を巻き起こしています。今後の動向も注目したいところです。
※『GPUを支える技術──超並列ハードウェアの快進撃[技術基礎]』(技術評論社,2017),第1章より。