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ブロックチェーンは,「ビットコイン」に代表される仮想通貨を支える基幹技術として知られています。しかし,最近では,仮想通貨よりも重要な「破壊的イノベーション」として,様々な業界から注目を集めています。ここでは,「ブロックチェーンの何がそんなにスゴイのか?」について説明したいと思います。
ブロックチェーンは「たった1つの巨大な台帳」!?
ここ数年でブロックチェーンを利用したサービスは急速に増えていますが,最も大規模なブロックチェーンは,元祖であるビットコインのブロックチェーンです。ブロックチェーンはその名の通り,取引記録をまとめた「ブロック」と呼ばれるデータが数珠つなぎになって構成されています。1ブロックあたりのデータ量は固定ではありませんが,最大で1MB程度。生成されたブロック数は「525,260」で,合計すると約170GBものブロックデータが生み出されたことになります。このデータが集まって「たった1つの取引台帳」を構成しているのです。驚くべきことに,この台帳にはビットコインが生まれてから行われてきた319,422,925(2018年5月時点)の取引がもれなく記録されています。しかもこれまで,たった一度の改ざんもシステムダウンも発生していないのです。
ブロックチェーンは「新技術」ではない!?
史上最も安全なシステムとも言えるビットコインのブロックチェーンですが,それを実現している技術は,実は「枯れた」ものばかりです。
ブロックチェーンの屋台骨は「P2Pネットワーク」と「分散ファイルシステム」と呼ばれるもので,2000年代に世を騒がせたファイル共有ソフト「Winny」や「Share」,「Perfect Dark」も同様の技術を活用していました。ブロックとブロックの結びつきを強固にする暗号技術は「ハッシュ関数」「公開鍵暗号」,通貨の取引に使われる認証技術は「電子署名」で,いずれもメールやネットサービスで当たり前に使われてます。
ビットコイン・ブロックチェーンのすごいところは,これらありふれた技術を組み合わせることで,匿名性が高く,すこぶる堅牢で,管理者なしでも自動的に動く,夢のようなシステムを実現しているところです。その複雑怪奇な仕組みは,まさに天才にしか成しえない技と言えるでしょう。
ブロックチェーンは「仮想通貨」以外にも役立つ!?
ただし,ビットコインのブロックチェーンにも欠点があります。最大の問題とされているのは,強固な堅牢性を維持するために膨大なコンピューターパワーを必要とする点で,そのことが取引コストの増大や処理の遅延を招いてしまっています。そのため,後発であるイーサリアムやリップルは異なる方式を導入して低コストなブロックチェーンを開発し,これにより,仮想通貨以外の用途でブロックチェーンを活用する道を開きました。すでに,銀行間国際送金システムや,難民向けの公証サービス,自動化された電力売買システムなどが,新しいブロックチェーンによって実用化されています。
ブロックチェーンは大国や巨大企業も凌駕する!?
世界中で富や権力の一極集中が進んでいる現在,一部の大国や巨大企業によって資源やインフラが支配される危険性が日に日に高まっています。そのような危機に対抗する方策としても,ブロックチェーンが注目されています。「匿名性」や「自律性」「管理人不要」というブロックチェーンの特徴を生かすことで,完全に平等で一切不正の起こらない理想の組織を生み出せるというのです。今はまだ「理想」でしかありませんが,今後ブロックチェーンの技術が進歩していけば,国家やイデオロギーの枠を超えた「完全自立分散型組織」の実現も,夢ではなくなるかもしれません。