新春特別企画

2022年のWebアクセシビリティ

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2.5 分

WAI-ARIAについて

2021年12月にWAI-ARIA 1.2がCandidate Recommendation Draft(勧告候補草案)として更新されましたが,まだat risk(不安定)とされる機能が4つほど残っています。この4つが解決すれば勧告まで一気に進むことになりますが,これまでの速度からして2022年のうちに勧告まで進むのかは微妙なところでしょう。とはいえ,仕様としてはほぼ完成している状態ですから,ここから劇的に技術的内容が変化することはないと思われます。

その一方で,WAI-ARIA 1.2の後続となるWAI-ARIA 1.3のFirst Public Working Draft(初回公開作業草案)の発行も2022年に行われても不思議ではありません。いずれにせよ漸進的にロールとARIA属性の追加が行われていくことにはなります。

改正障害者差別解消法の施行にむけて

2021年6月に障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が改正され,遅くとも2024年6月に施行されることになりました内閣府ホームページ⁠。

この改正では合理的配慮が民間事業者にも義務化されるようになるのが大きなポイントとなってくるわけですが,ではWebサイトにおけるWebアクセシビリティは合理的配慮になってくるのでしょうか。

総務省が発行しているみんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)では,⁠ウェブアクセシビリティを含む情報アクセシビリティは,合理的配慮を的確に行うための環境の整備と位置づけ」とされていますが,これはあくまで公共サイトを対象としたガイドラインであることに留意が必要です。

一方,2021年に行われた『デジタル社会に必要な情報 アクセシビリティ』講演会において,内閣府の障害者政策委員会の委員長を務めている石川准先生による発表情報アクセシビリティに関わる法制度の現状と課題では,Webサイトやモバイルアプリがオンライン上の店舗と考えれば,障害者差別解消法の合理的配慮が求められてくるのではないか,というような解釈を示されています。

環境の整備は従前のとおり努力義務ですが,合理的配慮が義務化されることで,法律上の重みが変わってくることになります。何が義務となってくるのか判断に迷ってしまうことがないように,合理的配慮に関する一定の目安を行政にしっかりと示してもらう必要があると考えます。

2022年夏には政府が障害者差別解消法に関する施策を総合的かつ一体的に実施するための,基本方針の改定案が作成されるというスケジュール案が示されています。

この基本方針をもとに,事業者のための対応指針が定められるわけですから,基本方針の作成が1つの山場といえるでしょう。Webアクセシビリティに携わるものとしては,Webアクセシビリティの技術仕様であるWCAGを尊重するような基本方針や対応指針が作成されるよう期待したいところです。

合理的配慮の義務化にあたって,Webアクセシビリティについてどのように対応していけばよいのかのガイドラインの整備も必要とされるでしょう。前述のみんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)は,あくまで公的機関を主眼に置いたガイドラインであり,民間事業者を対象としていません。法律上の義務を果たしていく観点からも,民間事業者も対象とするガイドラインの整備について政府への働きかけが求められてくるのではないでしょうか。

第5次障害者基本計画にむけて

2022年(令和4年)度までが現行の第4次障害者基本計画の期間であり,2022年には第5次障害者基本計画の審議が本格化し,年内に計画案の取りまとめがされることになっています。第5次では2023年度から向こう5年間の政府施策の枠組みが決定されるわけですから,こちらも動向として見逃せないものになってくるでしょう。

国立国会図書館が発行するEUのアクセシビリティ指令によれば,EUではWCAGを念頭に置いた,包括的な製品やサービスに対するアクセシビリティの考え方が示されていると理解しています。

その一方で我が国の施策として,筆者の主観になりますが,情報のアクセシビリティについては,全体として一体感が欠けているように感じています。先に取り上げた情報アクセシビリティに関わる法制度の現状と課題でも述べられているような,分野を横断する一体的な「情報アクセシビリティ法」の整備が必要になってくると考えます。

著者プロフィール

中村直樹(なかむらなおき)

株式会社ミツエーリンクス 第六事業部アクセシビリティ部所属。ウェブアクセシビリティ基盤委員会 作業部会4(翻訳)の2016年立ち上げ当初より作業協力者として参加。現在は委員として活動。