ネットだから気をつけたい! 著作権の基礎知識

第2回 ありがちな「思い込み」~中途半端な"知識"はトラブルの元

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「著作物だとは思わなかった!」

(4)
「近所の工事現場で,仮囲いに『工事中!』表示が張り付けてあるのをたまたま見つけたので,少し改良して自分のホームページの工事中のページに使っています。一般的な案内サインだから著作権は問題にならないですよね?」

これはちょっと難しい問題です。

世の中に出回っている典型的な著作物(例えばアニメのキャラクターなど)には,"これでもか"と言って良いほど,©マークが付されていて,権利者が積極的に自己主張していますから,それが著作物であることはすぐにわかるのですが,そうでない「著作物」も街中にはたくさんあふれています。

人物や何気ない風景を撮影したスナップ写真が目の前にあったとして,普通はそれが「著作物」だなんてことは意識しないでしょうし,誰が撮影したかなんてことも気にしないはずです(仮にどこかに転載するとなれば,映っている人物には確認をとるでしょうが⁠⁠。

しかし,今はそんなスナップ写真を,映っている人物を紹介するために出版物に掲載した行為が(撮影者の)著作権侵害にあたる,という衝撃的な判決(東京アウトサイダーズ事件・知財高裁平成19年5月31日判決)すら出てしまう時代です。

取り上げた(4)のケースにしても,一般的なサインのように見えて,実はデザイナーが相当なこだわりを持っている,なんてこともあるかもしれません。

前回もご説明したように,著作権が発生する可能性のあるコンテンツの範囲は相当に広く,しかも,それらに実際に著作権が認められるかどうかを素人が判断するのは極めて難しい(裁判になるまで本当のところは分からない)というのが実情です。

したがって,著作権が発生する可能性のあるコンテンツについては,使用態様(私的複製など)からして明らかに著作権は気にしなくていい,という場合を除いて,"権利を持っていそうな人"の確認を取るのが無難だと言わざるを得ません。

「宣伝になるからいいんじゃない?」

(5)
「私が住んでいる地域を紹介するホームページを個人で開設しているのですが,最近できた飲食店のオーナーがアート好きで,自作の油絵を店内のあちこちに飾っています。この前お店に行った時にこっそり携帯カメラで撮影したので,ホームページに載せて紹介しようと思っているのですが問題ありませんよね? お店の宣伝にもなるし。」

「宣伝にもなるし」というのは,最近会社の中でも外でもよく聞くフレーズです。

"何となく著作権的にはマズいんじゃないかな…"と思いながらも,唱えるだけでやろうとしていることを正当化できてしまう便利なフレーズ,といったところでしょうか。

確かに,普通は,自分のところの商売や製品に関連するコンテンツをビジュアル付きで紹介してもらえば嬉しい,と思う人が多いと思います。いわゆる"アフィリエイト"関係のサービスなんかでも,商品を紹介する際には写真や関連画像がセットで掲載されるのが一般的です。

しかし,世の中にいろんな人がいますし,いろんな会社が存在します。

どういう形で自分の商売を宣伝するか,を決められるのは,商売をやっている当人だけ,というのは,あえて説明するまでもないでしょう。そして,良かれと思ってしたお店の紹介でも,それがオーナーの癪に障るような中身だった場合には,⁠無断で著作物を掲載した」という"違法行為"が最大の攻撃材料になってしまいます。

本当に好意を持って宣伝したいのであれば,宣伝される側にきちんと断りを入れるべきでしょうし,その際に,著作物の掲載(複製,公衆送信)の許諾も得ておけば済む話です。

その作業を割愛して,⁠宣伝にもなるし…」と言われてもなぁ,というのが,宣伝される側の率直な感想ではないでしょうか。

ついでに言えば,会社のキャラクターとか,商品のパッケージデザインといった類のもので,会社が著作権を管理しているものというのは,思いのほか少ないのが実情です(大抵のものは,契約上広告代理店や社外のデザイナーに権利が留保されているのが普通です⁠⁠。

取り上げた(5)のケースにしても,店内に飾っている絵は,実はオーナー自作のものではなく,知り合いの画家にお願いして描いてもらったものかもしれません。

そんな状況で,無断で著作物を使ってしまうと,宣伝してあげたつもりがかえって相手に迷惑をかけることにもなりかねないわけで,それゆえ,⁠宣伝になるから…」というエクスキューズもお勧めすることはできません。

まとめ

こうやって見てくると,

「なんだ,権利者の許諾をとらないと何もできないじゃないか。窮屈でしょうがない!」

と思わず声を上げたくなる方も出てくることでしょう。

でも,実際,⁠著作権」に関するルールを忠実に守ろうとすると,そういう側面がどうしても出てきてしまいます。

次回は,そんな窮屈な世界の中で,第三者の著作物を使った自由な表現がどこまで可能なのか,その限界を探っていきたいと思います。

著者プロフィール

企業法務戦士F-JEY(きぎょうほうむせんし・えふじぇい)

199×年,都内某企業入社。以来,法務部署で禄を食む日々を送る。ここ数年はもっぱら知的財産絡みの仕事に従事。最近,周りから「そろそろ飽きただろう」と言われることも多いが,技術もビジネススキームも日々進化するこの世界,当分お腹いっぱいにはなりそうもない。

2005年以降,ブログ「企業法務戦士の雑感」をささやかに更新中。